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すていし

「「「木曽家を独立させる!!?」」」


勝頼と馬場には事前に言っていたが……。

主要の家臣達にその事を伝えた時には驚ろかされたものだ。

その驚きの中で


「私もみんなも、家を滅ぼされてから、徳川へとくだった。このままでいる不安はあるはずだ。織田家の下につくなど、できぬ者達もいるはず」


その言葉に勝頼、馬場、景勝、兼続の4名は……心の中で頷いた。

義昌の下につくのに


「私達は、私達だ。自由過ぎるくらい、風の通しが良い」


境遇がお互い似通っており、どこかで自分を高く売るには丁度いい男に他ならない。木曽家が独立するということは


「武田家を作ることも良し。上杉家、直江家などなど……立ち上げるといい。合議制の元、運営される。その主犯は私がやろう」

「………………」

「織田家の下である、徳川家のさらに下、この木曽家だ。黙っていてはいずれ処分もある。戦国乱世に下剋上はつきものだ」


ここで家康に裏切りの報告をすれば、大きな恩賞をもらえる……。


「これを報告するというのかね?」

「津軽殿が言いますか……」

「東北の猛者達にとっては、家康にも、信長にも縁などない」


津軽為信、安東愛季、最上義光。


「皮肉かもしれんが、乱世というのは金になる。人は欲望に忠実になる。その加減は必要で、我々の地を脅かす恐れもある」


東北の地を豊かなものにするためにも、金と人材、資源の流通が大事であり、そこに戦争が利用されるのは止む無し。しかし、待っているだけでは進まないのも分かっている。東北の地は混迷としていた事を知る3名だ。


「この津軽為信は義昌殿の独立を支援するぞ」

「……安東家も同じくです」


独立しても協力してくれる安東家、津軽家。……それに続く形で蠣崎家、南部家も従ったわけだが。


「争いは避けられんぞ」


最上義光だけはそう簡単に頷かなかった。話は聞くだけ聞いて、どうこうするが


「甥の政宗がいる俺が、普通、こっち側に付くか?上杉とも因縁がある」


義昌が名目上、東北の大名達を纏めるわけだが。その中に伊達の名がない以上は、彼等との衝突は避けられない……


「伊達のことを気にするなら中立など持っての他だ」


そこに勝頼が義光に意見をした。武田家として、戦って来たから分かる。


「織田家とぶつかった以上は、その強さには伊達政宗も理解しただろう。停戦に持ち込んだだけ、政宗が喰らいついたのは事実。最上殿がこれを呑まずとも、伊達からのお声はかかるだろうし。同じことを返すのか?」

「……政宗も同じことを条件に出すか」

「これを合議制と義昌殿は仰るが、”連合”をより強固にした関係でなら、最上家をそのままにできる。私共も伊達家との強い関係性を持つには、最上殿がこちらについていただけると、非常に助かる。政宗殿も同じではないかな?いがみ合うのは避けたいはず。最上殿が橋渡しの役目を担ってくれたらと」


勝頼が織田家の脅威に、兼続の伊達家の考え方を汲み取った意見。これに義光も……まぁ、納得した。甥の政宗がこれから織田家に対抗するため、織田家以外の領土を奪ったり、協力を求めるのなら。木曽家の独立は渡りに船。北からの脅威が大きく削がれる。

伊達家の動向、木曽家の動向を探る上で、最上義光が木曽家側に残ってくれるのは……遺恨はあれど、嬉しい話だ。



「上杉は春日山に戻る。織田・徳川との大きな戦いは避けられない」

「こちらも同じだ。躑躅ヶ崎館を取り戻す。信玄様に顔向けできん」


上杉景勝、直江兼続、千坂景親の3名は織田家に奪われた春日山城を取り戻すため。武田勝頼、真田信伊、馬場信春の3名は躑躅ヶ崎館を取り戻すため。


「俺はみんなの領地を守り、木曽家を護るためだ」


木曽義昌もその戦いに臨む。東北地方の大名達の力を借りて、木曽家はここで独立を宣言する!


「徳川家の家臣のままでは終われない!!これより木曽家の旗揚げだ!!」



◇        ◇


【義昌。独立がどーいうことか、分かっているのか?】


木曽家を護るため。武田、北条、上杉、徳川……と、散々に飛び回っていた。

その度に戦は起きていた。そして、今回のは明らかに、とても大きな戦いになる。その過程で木曽義昌が何を失うのか、分かってないわけがない。


【勝頼様。もしもの事があれば、あなたがこの方々達を纏めるに相応しい】


武田家から賜り、北条、上杉、徳川の力を使って領地経営をしていた


【織田家の隣に面する、小諸城はまず失うぞ……その他の小城も失う】


木曽義昌が大事に領地を運営していた、小諸城を失う可能性が高い。これは木曽家を支えた財政面で大きな-になる。


【独立前には可能な限り、領民達を東北の地に移住させる。檜山の地は小諸と良く似ていたし、開発の期待もある】

【…………】

【でも、まぁ。……小諸に残る人達もいる。俺もできる限り、織田家の戦力を削る必要はある。新発田城、安田城、平林城の開発もすぐには終わらない。時間稼ぎはいるし……実績のある城なのは、勝頼様も知ってるだろう?俺が守るんだ】


独立宣言もしっかりとした前準備をしていた。伊達・北条が織田・徳川とやり合っている中で……。

東北地方へ侵攻したのは、織田家の脅威のない場所が欲しかったからだ。

そして、そこには有力な家臣達を送り込み。義昌自身は小諸城へと戻っていった。


【俺も小諸も諦めるつもりはないです】

【………ふぅ~……。義昌。武田勝頼として命令するが。無事に戻って来い。完全な死地だからな】


な~に。

どうしても、小諸城を守りたいこともあるし。

あと一人。この戦いに必要な男がいるから、自分が小諸城に戻ったのだ。

俺はやってみるぞ。

お前はどうする?真田家だってここで終われないだろう?


真田正幸。一緒に織田家・徳川家と戦おうぞ!



ザッザッザッ



「…………おー……」


小諸城に戻って来れたのは久しぶりであり、東北の堅城をいくつも見てきたが……この小諸城が一番。自分が考え抜いた、この山城を落とせるわけもない。


「こんなにも残ってくれたのか。皆の者」

「「お待ちしておりました、木曽家当主、木曽義昌様」」


領民達の多くは移住をしているが、ここに残って戦う者達だっている。

そして、木曽家が徳川家からの独立をするんじゃないかと、噂は立っていた。そうなれば、この小諸城がとんでもない被害を出すという中で


「当主自ら、この最前線に立つというのなら」

「我々、武士たる者。命を懸けるに値する」


小諸城の兵。5千人が、木曽義昌と共に戦うことを決意した。

この5千人という規模で……。織田・徳川の20万という大軍を相手にするなど、無謀も無謀。自ら考えた小諸城を持ってしてもだ。義昌にだって、それは分かっている


「長い戦いになる」

「…………………」


どーいう戦いであり、どーいう目的か、どーいう勝利か


「俺はギリギリまで戦う。そして、勝ちになるのは……東北の地で戦闘準備が整った時だ。小諸城が堕ちることでもないし、ここにいる俺達が全滅をする事ではない!だからといって!!自分の命を軽く扱うな!!1人の命が、この城を長く持たせることになる!!」


1582年。

木曽家・独立をここにて完全宣言する!

織田・徳川への宣戦布告であった!!



◇        ◇


「き、木曽義昌が独立~~~!!?誰に唆されたんだーーー!!」


東北での活躍は耳に入っていたが、北条との激戦とその後の舌戦でそれどころではなかった徳川家。徳川家康は、この動きには当然焦った。

木曽家が北から、自分達は南から伊達家を挟み来んでやろうと思ったのに。あろうことか伊達の味方になるような立ち回りをしてきたからだ。


「あの野郎!!殺す!!この裏切り者がーーーー!!幾度も裏切る不忠者が!!」


そんな奴を軍団長にしたのがマズイだろうって思うが……。

独立を考えるような男ではないのは、面会時でも感じ取っていた。家康の言葉通り、誰かに唆されたモンだと思っていた。

実際のところは本当に、義昌の本心からの独立に違いはない。


「東北の領地は全て木曽家が持つことになるのか……」

「それどころではない!勝頼、景勝、兼続といった、武田・上杉の家臣達も我々の敵になるのだぞ!!」

「だぶん、3人の内の誰かに唆されたはずだ!!」


荒れる徳川家。今現在、北条家との領土問題で争っている最中。そこで木曽家と戦うとか……


「織田家の動きが気になる。これに織田家がどう動くか、伺うべきだ」


怒り来る徳川家臣達の中で、比較的、木曽家と交流が多かった榊原は落ち着いていた。


「徳川家と織田家には強固な同盟ができている。木曽家に対して、神速な対応で攻め込むのか。否か」

「信長様は今、京に戻られたはず。すぐにご本人が駆け付けるとは思えない。西日本の勢力の準備だったとも言っていた」

「勝家や信忠が動くだろう。木曽家が攻められ、そこが織田の領地となれば徳川との関係はこの先危うくなるぞ」


やるべきことは1つ。

徳川家としてはここにすぐに攻め込み。領内を確保することである。

木曽家が独立し、急に最前線となってしまった城。

小諸城と飯山城、坂戸城。この3つの城が今、木曽家にとっては丸裸もいいくらい、織田と徳川の城に隣接している。


「遠いが、吉田城と浜松城から兵を出しましょう!!」

「北条がこちらに動いても対処ができるように!」

「待て!小諸城も飯山城も、坂戸城もかなりの堅城!!急な出陣で落とせるもんじゃない!」

「独立をした相手にそんな悠長な時間を与えては、徳川の威厳が堕ちるぞ!!」


事は急げと。

酒井忠次・本多忠勝の軍、合わせて、2万が小諸城、坂戸城に向けて出陣。徳川の領地から向かうには少しばかり遠く。それよりも春日山城を持つ織田家からすれば、坂戸城と飯山城は近い。


「木曽家と徳川家はもう別々だ!!今の内に木曽家の城を奪い取るぞ!!」

「者共続けーーー!!」


春日山城を中心に、北陸の兵達を動員しての侵攻を始める、織田信忠と柴田勝家。徳川の2万を軽く超える、6万3000の軍勢が二手に別れ、坂戸城と飯山城に向かうのであった。


小諸城には木曽義昌が。

飯山城には


「老兵には相応しい」


馬場信春が守備を務めていた。この独立の死地に立った理由は、老兵であり。


「義康殿が逝った地を織田には渡せん」


自分の同世代が亡くなった地でもあるからか。ここでの織田家の足止めは確実に、後々の為になる。義昌が守るように、信春もこの飯山城の守備にて、織田家に一矢報いようとしていた。

一方で


「…………俺かぁ~、やっぱり……」


坂戸城を守ることになったのは、真田信伊。飯山城の次に危険な城を任される。

ここが一番、北東側であり、


「安田城までそう遠くないからまだマシか(援軍は期待0だが)」


逃亡できる確率が一番高い。

え~っ、マジで?って顔にもなるけれど。逃げていいのなら、逃げられる範囲内で健闘はしてやりたい。織田家も徳川家も、……飯山城と小諸城をどうにかしてから坂戸城に来るんじゃねぇかと、予想はしている。ただ兵数が多いだけでは、坂戸城は落ちないと思う。

真田信伊もただ城にいただけの男ではない。


「いやぁ~、でも、これ。キツイっすよ~」



坂戸城の防衛戦


真田信伊、兵3400 VS 前田利家 + 滝川一益、兵1万7000


飯山城の防衛戦


馬場信春、兵5800 VS 織田信忠 + 柴田勝家、兵4万6000


小諸城の防衛戦


木曽義昌、兵5000 VS 酒井忠次 + 本多忠勝、兵2万


「深志城などから織田家が小諸城に向けて出陣!!その数、7万!!……名のある武将は特別いません!!」


徳川家だけなら2万だが、深志城や松倉城、上原城、高遠城などから織田家が軍勢を派遣。信忠の号令により、すぐに出陣したのであった。

急な出陣でもあり、有力な武将はどうやらついて来てない模様。とはいえ、


兵5000 VS 兵9万


小諸城がいかに堅城という作りにできたとはいえ、こんなにも人数差があれば、陥落するのは当然だろう。勝ち目のない相手だ。分かっている、木曽家自身も。

だが、やりようというものがある。


「初日が大事!!」


木曽家が時間稼ぎを勝ちと定めている以上。

織田家・徳川家。共にこーは勝ちたくはないというものがある。


「兵を多く出してきたが、物資も兵数も削りたくはない!!兵数で脅しに来るだけだ!!」


急ぎたいあまりに出陣が雑という印象がぬぐえない。特に深志城などの西側から来る部隊は、正直、戦上手な武将はいなかった。主に支援が役割の者達。そして、物資を届ける兵達の構成。あれでは


「小諸城は落とせない。確実に相手方の兵糧が尽きるのが早い!!」


気を付けるのは、酒井と本多の軍。たぶん、こいつ等が先陣を切るだろうし、織田との連携は期待できないはずだ。


「やばい」


この状況下で。この木曽義昌。

恐怖ではなく、興奮しているというのは……勝てるという気持ちを持っているからか。独立という言葉には多くの責任があるというのに、私は今、滾っている。

これが大大名達が持つ、天下へのこころざしというモノだろうか。

私には熱すぎるぞ。


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