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すけみつ

沼田祐光。


津軽家家臣。

出自には諸説があるが、上野沼田氏の一族らしい。全国各地を流浪し、陸奥の津軽家へ。

不明な点が多いものの、津軽為信の軍師として活躍されたとされる。



◇          ◇



「おぉぉ、懐かしい。真田殿のご子息からか。沼田城の頃を思い出す」


津軽家。石川城にて(現在の青森県)。

古い知人からの書状を頂いたのは、沼田祐光。前回で言われた、沼田の人である。


「噂は聞いている。この津軽の地にも名前が…………?」


十何年ぶりのこと。懐かしさを感じさせる内容ではあったが、津軽家に要求していたモノはかなり壮大なものであった。


「と、殿~~~!!」

「なんだ、沼田」


津軽為信つがるためのぶ

南部家を裏切って独立を果たした戦国大名である。その狡猾さ、野心の高さには東北の地に轟いていた。独立後も南部家などと戦いながら津軽の地を護っていた。


「と、徳川家の武家、木曽家からの書状にこのようなことが……」

「むむ……」


最初はただの挨拶に過ぎなかったのだが、義昌の決心からの行動が……東北のさらに北の地の混沌を止めるのであった。


「これは同盟なのか?」


端的に言えば、津軽、檜山、三戸、蠣崎の土地を津軽家と木曽家で共有しようという持ちかけである。津軽為信にも木曽家の噂は耳に入っており、彼等が上杉領にいる事も知っていた。そして、木曽家1つとっても、この3国の争いを終わらせられるくらいの力がある事も


「………………」

「いかが致しましょう。わ、私からは、木曽殿も武田殿も、上杉殿との戦いは危険ですぞ」

「最上の鶴ケ岡城と酒井港を奪取した後、庄内を駆け上がる。そこを我々が南下し、安東を挟撃すること。そして、南部と蠣崎が石川城を攻める際に、防衛に協力するか……いや、不可能だろう」


為信もこれだけの場当たり的な予想では動けない。


「1万6000の兵力ならば、鶴ケ岡城と酒井港は抑え込めても、最上の主力を止めるにはその半分は少なくともいる。7000は切る兵力。そこに挟撃とはいえ、津軽の兵は2000ぽっち」


現在の情勢は、安東家がやや不利ではあるが、均衡に近い状態だ。各勢力の軍が動けば、勢力は変わる。


「いやしかし」


木曽家の武将と兵達の強さは、弱兵の安東達を一掃できるだろう。ここで協力しないという手に回れば、後々危険だろうか。沼田は武田家、上杉家の事を知っているからこそ、戦になれば被害は大きいのが分かっているはず。なにより、沼田を頼れば、木曽家の中でも大事にはならないか?

いっそ、安東家と手を組んで追い返す?そしたら、南部と蠣崎が手を組んで、石川城や浪岡御所に攻め込んでくる。安東の持つ檜山城は頼りになるが、奴等の兵は頼りない。それは津軽家が滅ぶ。

それに上手く行けば、津軽のみならず、安東、蠣崎、南部を私達の領土にできるという話は大きい。木曽家の軍事力を利用できる。……ただこれ、気がかりは……家康に話が通っているのか?徳川家の領土ってオカシイ感じになってない?


「同盟を結ぶぞ!すぐに木曽家に報告するのだ!!」

「ははっ!!」


どっちにしろ、木曽家の狙いはこの津軽の地。1万以上の軍が来るとなれば、土地が荒れるのは確か。


◇       ◇


1579年6月

徳川家(木曽家)と津軽家の同盟。

それが結ばれるよりも早く、侵攻を始める木曽家。その先鋒を任されたのは


「因縁ある最上の領地を攻めるぞ」

「は、景勝様。……家を代えても、また最上と戦う事になるとは。義光の首を獲りに行きましょう」


元上杉家家臣。

上杉景勝と直江兼続。

2つの軍を合わせて、5000人。

そのほとんどは上杉家の者達に委ねられた。最上家とは何度も戦ってきた者達であり、手の内も地の利も理解できている。


「今回の作戦は、鶴ケ岡城。そして、酒井港の占領です。本城である山形城ではないので、最上家の援軍は必至でしょうね」


堅城である山形城に挑むのは、弾かれるだけである。最上家の総兵数は約1万。しかし、各城には他の勢力とも隣接し、総動員はまずできないだろう。いきなり、1万6千の軍勢がやってきたとあっては、別だが……。鶴ケ岡城に必要な救援の兵数は絞られる。


「……鶴ケ岡城の兵数は、2000で間違いないんだな?」

「はい。山形城とは行かぬまでも、固い作りのある城です。その城を落としつつ、それを維持するとなれば、単純にはいきません」

「内応は?」

「仕掛けはしました。あとは結果を待つのみです」

「それは兼続の役目で有ろう?」

「ええ」


鶴ケ岡城の攻略には、力攻めは得策ではない。城を守る兵士達が降伏し、明け渡してくれるのが最善で最重要。最上家を知るからこそ、上杉家中心。そして、この城を奪うには城攻めよりも有効なのが


救援を潰すことである。


先鋒は上杉家中心であり、その後ろには木曽家、武田家と続いていく。つまり、鶴ケ岡城を強引に落とされる事は、城内も分かっているはず。そこを早く理解させるには合戦をするしかない。


「こ、こ、来いやーーーーーー!!最上家ーーー!!最上義光来ーーーーい!!」


戦略は大いに練った。一戦一戦が大事なモノであり、鶴ケ岡城の包囲は上杉景勝の軍が担う。そして、最上家の救援部隊とぶつかるのは、


「この千坂景親が相手をしてやる!!(兼続殿、早く来てくれ!!)」


兵1500で清川の地にて、最上家の救援、兵4000とぶつかる。倍以上の兵数の野戦であり、その兵を任されたのは、最上家の部将、鮭延秀綱と志村光安。

千坂の部隊を蹴散らさなければ、鶴ヶ岡城には辿りつけない最上家としては即刻、追い返す必要がある。


「ふん!相手は千坂か!しかもその兵数。明らかな足止め目的!」

「こっちは必至よ。猛進あるのみ!」


数で優位をとり、この地を知っている最上家にとっては、時間的な事も含めて、そのまま来るのが正しい。練度の高い兵士達が襲えば、千坂の部隊は吹き飛んでしまうだろう。それは兵を纏める千坂自身も分かっている。


「良いか!!皆の者!!決して一撃では、この部隊をトバされやしない!!受け止めて!跳ね返す事だけを考えよ!!さすれば、必ず!最上家は怯む!!」


じ、事前の打ち合わせでは……。兼続殿の部隊が側面から鮭延・志村を襲撃する。だからこそ、私の部隊は素通りさせず、受け止める必要がある。だが、不安な事がある。

兼続殿は、この作戦は相手方にまず、”見切られる”……とのことだ。最上義光が率いていたら、たぶん、通じないとのこと。その時は、千坂が突撃して、義光の首を獲るしかない……無茶言うな!

そうならない事を願うしかない。



「行くぞ!!弓隊・鉄砲隊構え!!」

「きたぁ!!」


弓と鉄砲の乱射からの足軽、騎馬の突撃。先制は最上家であった。兵士達が互いに消耗していくが、どちらの数も同じぐらいだ。

互いに因縁を持ち、精神的にも負けられないという兵士達の気持ちがあった。それは武将として指揮をする、千坂も同じ。

弓・鉄砲の雨が止んだ瞬間には、兵士達共々、互角にぶつかり、最上家の勢いを止めた。その時間は10分ほどではあるが、


「そ、側面より奇襲!!」

「!!やはり、来たか!兼続だろうな!」


兼続の部隊が最上家の側面より現れ、これに対して、志村が兵1000を率いて、対応に当たる。奇襲とは、対応できなかった時には非常に大きいが、対応された時もまた影響が大きい。最上家に動揺は少ない。


兵士達がぶつかる中で、兼続と志村の距離も近く、志村は叫んでいた。


「やはり兼続か!狡い奴め!!だが、お前達の兵数の方が少ない!!」

「………………」

「鮭延殿が千坂の部隊を葬れば、次はお前をひっ捕らえ、処刑してくれよう!」


志村の言う事はもっともであるが、


「勝ち誇った時ほど、醜い者はないですね」

「!!?」



ここで千坂、兼続とは別方向からの軍勢が……800ほどやってきた。数の差はほぼ互角になるが、3つの軍勢で彼等最上家を囲ったと言える。もちろん、景勝や他の武将達ではない。


「「は、は、羽黒国人衆~~~!!?」」

「金で雇いました。木曽家の財力はかなりあったのですよ」


この地の国人衆を買い叩いて、参戦させる。

千坂、兼続、羽黒国人衆の包囲攻撃によって、鮭延、志村の兵4000の軍勢を追い返すことに成功。そして、援軍の到着が無くなった事を知り、城内に流布を広め、……包囲から7日後には、鶴ヶ岡城の陥落。


「「「えい、えい、おおおーーーーーー!!」」」


東北を侵攻するための橋頭保となる拠点・港を得た、木曽家。そして、木曽義昌や武田勝頼などの軍勢がこの城を通る。それだけで最上家は鶴ヶ岡城の奪還を諦める他なかった。

しかし、痛手もある。


「さ、さすが最上家。俺達は戻って、兵士を休ませないと無理だ」

「景勝様。申し訳ございません。奇襲のため、国人衆の援軍もそこまで用意させなかったため」


千坂、兼続は兵士達を連れて、一旦、それぞれの居城へ戻る必要になった。

1万6000の兵数から、1万2800の兵数へ!


◇        ◇


「城はほぼ無傷で奪取した。そこだけでも価値はある」


鶴ヶ岡城ですぐに軍議を開く木曽家。

戦果は十分だ。景勝をして


「ここは俺に任せろ」


力強い言葉だった。だが、


「兵1万を切る。これで東北の地を制圧できると思うか?」

「難しいな」


鶴ヶ岡城を維持するには誰かが残る必要がある。その役目も景勝で異論はないし、仮に失敗したとして


「失敗は考えない」

「そうだな。良くはないが……」

「義昌も良いことを言う」


手を緩めない侵攻は、思考を鈍らせ、判断を迷わせる。東北を侵攻する事を知っているのは、同盟した津軽家のみ。というか、そもそも。ここから東北の地を知る者が少ない。兵の質では優っていても、地の利は不利とも言える。


「角館城と、湊城、そして、檜山城……独鈷城もか……。ここは津軽が攻めると思うけど」


安東家の居城は4つ。しかし、どれもかなりの道のりであり、山を越えることになる。大名だけでなく、国人衆も纏まってはいないため。相手にしていくのは面倒である。

角館城は獲れるという気持ちはあるが、湊城から先まで攻略できるか?安東達が手を討たないでいるか。


「まず、力あるのみ!!角館城ならば、最上からの脅威はない!そこでどれだけの被害かで判断するべきです!!」

「……信春殿の言う通りですね」

「それもそうだな」


北上する者達も獲れるところをとってからの判断。地の利も悪く、人脈にも乏しい。手堅く行くのも難しい事態だ。

義昌達は、少なくとも、まだ作戦を継続するで判断した。安東家がどーいった状態なのかも知るため、角館城を攻め込む。この動きに最上家も牽制こそするも、鶴ヶ岡城と景勝の軍勢が残っていることで大きくは動けない。



しかし、ここで……予想にはあった動きとそうでない動きが同時に発生する。

木曽家にとってはラッキーか、それとも……、


「と、殿ーーー!」


動きを見せたのは、安東家と津軽家から見て東部。三戸城、南部家。


「安東家より角館城、湊城への援軍要請がありました!」

「うむ。高水寺城より九戸等を出動させたぞ!」


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