かねつぐ
直江兼続。
上杉家家臣。
上杉謙信、上杉景勝に仕えた武将である。
”直江状”という書状を徳川家に送った人物であり、関ヶ原の戦いのきっかけを作った人物の一人。内政・外交面で活躍しつつ、生涯を上杉家に仕えた。
◇ ◇
「上杉家はこれで終わりだ」
史実において、転封などをされても上杉家は生き残る。しかし、この世界ではそうならず。上杉謙信という名将がまだご存命だったにも関わらず、滅びるのであった。
大軍の織田家。その子飼いである徳川家。……さらには最上、伊達からの総攻撃だった。
春日山城には織田家が
飯山城には徳川家が
新発田城には最上家が
安田城には伊達家が。
全軍が1万以上の兵数を出陣させており、上杉家中の統率はままならない。つまるところ、どうやって生き延びるかが大事になってくる。
上杉家の多くは、織田家が攻める春日山城に向かった。なんとしても、春日山城は守らなければならないという判断。この城が無事ならば、他の城をとられようとも奪い返せる。が……その先が分からないわけもない。
「景勝様。最後まで上杉家である事は忘れずに、……どの家に降るか、民の事を考えてください」
「…………分かっている。兼続」
◇ ◇
伊達家・最上家の呼応はある程度、寛容であった。
「なぜ、徳川家が動く?」
「以前、奴等は春日山城の防衛に協力できなかっただろう」
信忠、勝家、一益の3名は、ご立腹。徳川家が上杉家に侵攻をしたのだ。春日山城を一度、上杉家に奪われたのは、徳川家が戦いで疲弊しているせいで援軍に向かえなかったこと。
今回、徳川家は中立にしていれば良いと思っていた。とはいえ
「空いた城を掠めとる気か、クソ狸達め」
「……確か、真田家の正幸という男が相当な曲者と聞く」
「家康は上杉の抑えを奴等に任せただけ。信長様も小城のいくつかなら買い叩けもするし、滅ぼすもできると言っていた。こちらの被害を抑えるのであれば良い。真田家と、もう1つは木曽家だったか?徳川家と連動して動けるものか」
織田家は、魚津城から春日山城への侵攻。この春日山城を落とさなければ、越後の小城には攻め込めない状況だった。
木曽家、真田家、徳川家の与力。これらの侵攻は飯山城が限界だと踏んでいた。確かに連携なんてものはなく、各々がほとんど自由に動いていた。後に家康も言うのだが、
「なんで勝手に、織田家の侵攻を邪魔する城を落としてるの!?」
この戦いにおいて、徳川家が躍進するのである。
「木曽家!飯山城を制圧!!」
城攻めが得意ではなかった、義昌であるが。
城兵が春日山城に向けて出陣していること、その補佐に勝頼と信春がついてくれたおかげで、難なく飯山城を落としたわけだが
「止まってはならんぞ」
すぐに、坂戸城と柏崎城、松代城に向けて軍を走らせる。
勝頼をして
「この戦いはいくつ、木曽家が城を奪い取れるかに掛かっている!!上杉家を滅ぼすのは、織田家ではなく、我々だ!侵略すること火の如く!」
纏まって城を攻めたのは、飯山城のみ。それも
「制圧した飯山城を通るのは楽だな」
「父上。我々は松代城でいいんですか?」
真田家を除いた軍は連戦を強いられる。
「信春。今回、徳川の兵を率いての協力。感謝する」
「……義昌は好かんが。勝頼様と共に戦えるのなら、喜んで引き受けたまでです」
坂戸城には、義昌と勝頼が。
柏崎城には、義康と信春が。
松代城には、真田正幸、信之が。
分散しての侵攻。
何よりも徳川家が、春日山城を除いた全ての城を占領するための動きだった。
「勝頼が献策してくれた策だ!!必ず、成せる!!」
この3つの城が最低条件と思われたが、……違う。
「全部だ!!」
坂戸城、柏崎城の制圧が完了した後。そこからさらに最上と伊達が攻めている、上杉家の新発田城と安田城までも徳川家が手に入れようと狙うのだ。
その事を知るのは、木曽家の者達と真田家、協力してくれた馬場信春だけ。
「さすがは勝頼様だ」
松代城の前まできて、正幸も勝頼を褒め讃える。しかし、嫡男である信幸も父上を褒める。
「父上こそ、素晴らしいですよ。すでに調略済みでしたか」
「兵を失わずにして、城をとるのが最善よ」
「真にその通りでございます」
出陣前に、松代城の城主に調略を仕掛けていた正幸。松代城を包囲した後、すぐに降伏させ、ほぼ無傷で制圧。とんでもない速度であった。
「じゃあ、信幸。私はこのまま安田城へ行く。お前はここで万が一、春日山城から”来た軍”がいたら足止めせい」
「承知!!」
この作戦の成功率が分かるわけもないが、面白いのは確かだ。
言えなかったが、信幸とて不安が残る。父の正幸が気付かないわけもない。
万が一。上杉家が春日山城を死守した場合。この奪い取った小城を守り切る援軍はいない。織田家が確実に春日山城をとる前提で、この侵略はやっている。そして、もう1つ。
「織田家が手を切るかもしれない。そーいう挑発的で無謀な侵攻です」
なにも”上杉軍”だけじゃない。足を止めるべきは、”織田軍”でもある。織田軍に越後の多くを抑えられては、木曽家が将来的に潰えるのだから
◇ ◇
坂戸城。
義昌と勝頼。そして、周辺の国衆の者達が坂戸城を包囲していた。
兵の数はこちらが圧倒的に上回っているが、連戦を想定している義昌達はなるべく消耗したくはない。
「国衆には大きく騒いでもらいたい」
こっちの事情は語らず、まずは国衆達を使って城を攻撃し、揺さぶる。
兵を全滅させて奪うのではなく、城を明け渡すように奪うのが良い。此度の戦いで、織田家の軍容を”忍”を使って知り、春日山城が確実に落ち、そこに掛かる日数の計算……。
持って、2か月。良くて、70日。
あまりに短く。こちらの兵数が足りていない状況だ。
「……と言ったが、城を国衆で落とすのは無理じゃない?」
「だからこそ、正幸にも協力してもらったんだ。こーやるんだ」
義昌の不安を勝頼はすぐに払拭させる報を、敵に伝える。
「春日山城からの救援はない!!飯山城も落ち、松代城までも我々に降伏した!!徳川に殺されるか、織田に殺されるか!戦いはお前達が死ぬだけだぞ!!」
周辺の城がすでに落ちたことや救援が来ないこと。兵や領民の死を伝えつつ、国衆が攻め立てることで城兵達の士気は駄々下がり。元々、成す術がないことは上杉家の兵達には分かっていた。
「あの謙信がいなければ、兵の士気は下がりやすい」
義昌・勝頼。坂戸城を制圧。
そして、すぐに安田城へと兵を走らせるのであった。
しかし、その最中で良くない情報が入ってくる。
「きゅ、急報!!義康様、信春様の、柏崎城の攻略!!失敗!!」
「!!!」
別動隊として動いて、木曽義康と馬場信春の軍が、柏崎城の攻略に失敗したのだ。
その城を守っていたのは
「むっ…………撤退したか」
上杉景勝、直江兼続が率いる軍であった。




