王都へ
小部屋での日々は、静かに、けれど落ち着かないまま過ぎていった。
窓の外の景色を眺めながら、シャンティはこれからどうなるのか見当もつかないまま、ただ時間をやり過ごしていた。差し入れられる食事は変わらず、あの憲兵長も時折様子を見に来てくれたが、詳しい話はいつも「まだ分からない」で終わってしまう。
そんな日々に区切りがついたのは、2日後の朝のことだった。
「王都から、正式な指示が届いた」
部屋に入ってきた憲兵長が、いつになく緊張した面持ちでそう告げた。
「王都、から……」
「詳細は伝えられていないが、君を王都まで護送するようにとのことだ。パヴィア王からの直接の命令だ」
その言葉に、シャンティの胸がざわめいた。国王からの直接の命令ということは、この一件が、思っていた以上に大きな意味を持つものだったということなのだろうか。
「私、どうなるんでしょうか」
思わずこぼれた問いに、憲兵長は困ったように首を振った。
「申し訳ないがそれは俺にも分からん。だが、君を乱暴に扱うなという指示も、同時に添えられていた。」
その一言に、シャンティは少しだけ息をつく余裕を取り戻した。少なくとも、無下に扱われるわけではないらしい。
「話は以上だ。支度をしてくれ、半刻後には出発する」
憲兵長の言葉に、シャンティは静かに頷いた。
「ありがとうございました……。」
詰所を離れる前、不安の中、常に真摯に接してくれた憲兵長にお礼を伝える。
「……君の眼は綺麗だよ。何かの間違いであるといいな。」
憲兵長は近づきそっとシャンティに伝えた。
魔女だと恐れられ、傷ついていた心が少しだけ癒されていくのを感じた。
シャンティは少し微笑んだままお辞儀をした。
用意された護送用の馬車は、これまでの粗末な扱いとは違い、思いのほか丁寧なものだった。窓には格子がはめられているものの、座席は清潔で、水と軽食まで用意されている。
馬車が動き出すと、シャンティは窓の外を静かに見つめた。港町の景色が、少しずつ遠ざかっていく。
(おじいちゃん、おばあちゃんは、無事でいるかな)
(ナッシュさんは……もう、討伐から戻ってきているだろうか……ケガしてないといいな)
魔女と恐れられてからまだ数日、だがシャンティにとってはとてつもなく長く感じていた。
王都までの道のりは長く、シャンティはただ揺れる馬車の中で、これから起こることへの不安と、ほんの小さな期待を抱えながら、静かに時が過ぎるのを待ち続けていた。
自分の身に何が起きているのか、まだ何も分からない。それでも、王都という響きの中に、この状況を変える何かが待っている予感だけは感じずにはいられないのだった。




