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大魔法使いは紫色の瞳に恋に堕ちる  作者: ゆうもみじ


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港町バリフ

道中の景色は、新しい薬草を楽しみにしていたシャンティにとってそこまで物珍しいものではなかったが、それでも、旅、という初めての空気は、いつもとは違う特別なものに感じられた。


「あの山、フェルン山脈の一角かな」


「よく知ってるね。その通りだ」


窓の外を眺めながらぽつりと呟くと、ゲンが感心したように答えた。旅の道中、目にする景色の一つひとつを、シャンティは頭の中で薬草の生息地や気候と結びつけながら見ていた。


のんびりと旅を満喫している様子のシャンティを見て、ゲンとアジェーナの表情も、出発した日の張り詰めた硬さから、少しずつ和らいでいくのが分かった。


港町バリフに到着すると、まず目に飛び込んできたのは、潮の香りと、朝日を浴びてキラキラと波打つ視界いっぱいに広がる海だった。


「これが海……」


シャンティは初めて見る海に、しばらくの間、瞬きすら忘れて見入ってしまった。本の挿絵で見たことがあるだけの、遠い存在だった海。それが今、目の前に本物として広がっている。故郷の景色とは違うその光景を荷馬車が止まるまでずっと眺めていたのだった。


宿へ荷物を下ろした後、ゲンはさりげなく街の様子を探りに出かけていった。しばらくして戻ってきたゲンの表情には、安堵の色が浮かんでいた。


「どうやら、この街にはまだ、あの噂は届いていないようだ」


「良かった……」


アジェーナが胸を撫で下ろす。


「明日の朝、船が出る。それまで少し、街を歩いてみるかい」


ゲンの提案に、シャンティは小さく頷いた。


「うん、行きたい」


こうして三人は、出航までの残された時間を使って、港町バリフの街を満喫することにした。

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