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大魔法使いは紫色の瞳に恋に堕ちる  作者: ゆうもみじ


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朝食をいつも通りのようにのんびり食べてはいけない気がしてスープを流し込むようにして食べながら、シャンティはちらちらと二人の様子を窺っていた。


二人のいつもとは違うどこか落ち着かない様子で、何かあったのだろうかと思いはしたものの、悲しい知らせを受けたショックからだろうと、シャンティなりに気を配り、そっと食器を片付けた。


食事を終えると、シャンティは部屋に戻り、てきぱきと旅支度をはじめる。着替えをいくつか鞄に詰めながら、ふと宝箱に目をやった。


(あ…)


大切に大切にしまっておいた片方だけのピアス。なくしたら大変だと言うことは頭ではわかっていたが、でもせめてピアスとだけでも一緒にいたい、そんな気持ちが止められない。


ただ、あの箱ではさすがに荷物として少しかさばる。何かに下げて持ち歩けないだろうかと考えたシャンティは、部屋を出て工房の方へと向かった。


「おじいちゃん、革紐ってある?」


「革紐? あるにはあるが、何に使うんだ」


作業の手を止めたゲンに、シャンティは手にしていた小さな匂い袋を見せた。


「これに紐を通して、首から下げられるようにしたくて。お金とか入れるのにちょうどいいかなと思って」


なんとなくピアスのことは二人の秘密にしておきたいので、つい口から違う言葉が出てしまう。


「小銭か。それなら、ちょうどいいのがあるぞ」


ゲンはそう言うと、棚の奥から小さな入れ物のついたネックレスを取り出した。


「これを使いな」


「これ……何?すごい軽いんだけど??」


「さあな。昔、知り合いの商人から譲り受けたものだ。メタルのように頑丈で、着け心地もいいはずだ。俺が作ったんだ、滅多な事じゃ盗まれることもないだろうよ」


差し出されたネックレスを着けてもらったシャンティは、ねじったり、引っ張ってみたりしてみた。


「うん、これなら安心だね」


「ちょうどいいのがあって良かった」


ゲンは少し目を細めて笑うと、すぐに背を向けて工房へと戻っていった。


部屋に戻るとすぐにピアスを手に取ってそっとネックレスにしまった。おじいちゃんが作ったものだ、これほど安心なものはない。


気づけばまた髪飾りを触っている。あの日以来ずっと毎日身につけているせいか、ふと髪飾りにふれることが癖になっている。


荷物を持って下に降りると、すでにゲンとアジェーナは荷馬車を借りに行っていたらしく、窓の外を見ると、家の前に見慣れない荷馬車が停まっている。積み込みもあらかた終わっているようだった。


「シャンティ、準備はどうだい。」


扉から入ってきたゲンがシャンティに声を掛ける。シャンティは急いで自分の鞄を抱えて扉に向かった。荷馬車に鞄を積み込んでいると、ちょうど店先に出てきたビノが、こちらに気づいて声をかけてきた。


「おや、お出かけかい?」


「いやー、身内に不幸があってね。これからちょっと行ってくるよ」


ゲンが努めて普段通りの調子で答える。ビノは腰をさすりながら申し訳なさそうな顔をする。


「あやー、そりゃ大変だね。気をつけて行っておいで」


「悪いが、留守の間よろしく頼むよ」


荷馬車がゆっくりと動き出す。シャンティは後ろを振り返り、見送ってくれるビノに向かって、小さく手を振った。


見慣れた我が家と、隣のパン屋の店先が、少しずつ遠ざかっていくのを見ながら、少しの寂しさと、これから出会えるであろう薬草たちに心踊らせるのであった。



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