美しいものは美しい
髪飾りを着けてもらったあとも、シャンティの心はまだふわふわと浮いたままだった。
(初めて好きになった人から、もらった……)
その事実だけで、頭の中がいっぱいになってしまう。髪飾りをそっと触れてみては、微笑んで、を繰り返していた。
「せっかくだから…」
人混みを歩きながら、ナッシュがふと懐から小さな包みを取り出した。先ほど自分用にと買っていた、あのラベンダー色のピアスだ。
「ちょっと着けてみるか」
「え、今ですか?」
その場で軽く耳元に留めると、ナッシュは嬉しそうにシャンティの方を向いた。
「おかしいか?」
シャンティは思わず息を呑んだ。整った顔立ちに、小さな紫の石が涼やかに揺れている。それだけのことなのに、いつもとはまた違う雰囲気があって、目が離せなくなってしまう。
「……すごく、似合ってます」
「そうか。」
褒められた事に、はにかんだ笑顔をみせる。シャンティはその笑顔を見つめながら、また心の中がふわふわと浮つくのを感じていた。
(夢みたい……)
ふわふわと浮かれた気持ちのまま、周囲をよく見ずに歩いていたシャンティは、曲がり角で、どん、と誰かにぶつかってしまった。
「あ……すみません!」
慌てて頭を下げると、ぶつかった相手は、騎士の制服を着た若い女性だった。腰に剣を提げているところを見ると、祭りの警備に当たっている一人らしい。
「いえ、こちらこそ、前をよく見ておらず……」
丁寧に謝りながら、女性は何気なくナッシュの方に視線を向けた。その瞬間、彼女の表情がわずかに変わる。
「……あら?この香り…」
女性がふと顔をあげる
「もしかして、ナルニエル団長ですか?」
その一言に、ナッシュの表情が一瞬、固まった。




