待ちきれない
祭り当日の朝、シャンティは日の出前から目を覚ましていた。
(今日だ……)
数日前、アジェーナが「初めてのお出かけなんだから、ちゃんとした服を用意しなくちゃね」と言い出し、二人で街の仕立て屋を巡っていた。綺麗なブルーの生地に、控えめな刺繍があしらわれたワンピース。シャンティは気づいていないが、アジェーナはワンピースをそっとナルニエル様の瞳の色と合わせていた。
当日の朝、アジェーナが慣れた手つきで髪を結い上げ、ふんわりと化粧を施していく。
「昔取った杵柄ってやつだね。伯爵家の腕は、なまっちゃいないよ。」
「……できた」
アジェーナがまじまじとシャンティの姿を見つめ、眉根を寄せる。
「……こりゃあ、ちょっとやりすぎたかもしれないねえ」
「え?」
「あんまり可愛く仕上がりすぎて、途中で誰かにかどわかされやしないか、今から心配になってきたよ」
「ふふ、おばあちゃんったら、大げさなんだから」
支度を終えたシャンティが玄関へ向かうと、ちょうどゲンが工房にいくところだった。
「まだ待ち合わせにはずいぶん早いんじゃないのか」
「うん。そうなの…でも、なんだか落ち着かなくて、」
「気をつけて行っておいで」
「うん、行ってきます!」
朝の澄んだ空気の中、シャンティは待ちきれない気持ちのまま、家を後にした。今から向かえば、だいぶ早く着いてしまう。それでもじっとしていられなかったのだ。




