重なったもの
店を訪れたのは、それから十日後のことだった。
「注文の品の受け取りに…」
「お待ちしてました!」
カウンターに並べられた品々を一つひとつ確認しながら、自然と頬が緩むのを感じていた。たった数回の立ち寄りだったが、顔を合わせるたびに、二人の間の空気は、少しずつ和らいでいっている気がした。
「本当に、いつも助かってる」
「いえ、こちらこそ、お仕事を任せていただけて」
品物を受け取り終えたところで、ナッシュは少し言いよどんでから、続けた。
「それから…」
「はい?」
「実は、聞きたいことがあって来た」
「聞きたいこと、ですか?」
「今度の週末、街でラベンダー祭りがあるだろう。もし予定が空いていたら…」
「――一緒に、行かないか」
その一言に、シャンティは息を呑んだ。何度かのの立ち寄りとはいえ、どれも短いやり取りに過ぎなかった。それでも、顔を合わせるたびに少しづつ積み重なっていったもの、少しづつ近づいていたものが、今この瞬間に実感できた。
「いいん…ですか…?」
「もちろん、迷惑でなければ」
「迷惑だなんて……!」
思わず強く否定してしまってから、シャンティは少し恥ずかしくなって俯いてしまった。それでも、心臓は信じられないくらいの嬉しさで早鐘を打っていた。
「はい、ぜひ!」
その返事に、ナッシュの表情がぱっと明るくなる。
「良かった。じゃあ、この前のベンチで、昼の十二時でどうだ」
「はい、大丈夫です」
ふと見上げると、これまで見せたことがないような、素敵な笑顔を浮かべていた。
「楽しみにしてる」
「私も、楽しみにしてます」
「それじゃあ、また週末に」
「はい。また週末に…」
店を出ていく背中を見送りながら、シャンティは扉に手をかけたまま、しばらくの間、信じられない気持ちを抑えきれず、その場に立ち尽くしていた。
週末までの数日間が、これほど待ち遠しく感じられるとは、思ってもみなかった。




