ナルニエル様の家族
「そういえば、ナルニエル様のご家族は、どんな方たちなんですか」
涙の余韻が落ち着いた頃、シャンティがふと尋ねた。ナッシュは少し肩をすくめたあと、空をあおぐ。
「うちか。父は宰相をしてる。真面目一辺倒で、家でもきっちりしている人で、そう、家の中での攻撃魔法禁止なんて決まりを作ってるくらいだ」
「宰相様……」
「母は…そうだな3人の息子たちが誰一人縁談に興味がないことにやきもきしている、のんびりした人かな」
「ふふ、やきもき。」
言葉のチョイスに思わずシャンティは笑ってしまう。
「それに兄が二人いる。長兄は次期宰相候補で、頭の回転が異常に速い。次兄は騎士団の副団長で、剣も魔法も両方できる」
淡々と語りながらも、ナッシュの口調にはどこか諦めにも似た軽さがあった。
「二人とも、俺よりずっと優秀でな。昔から敵わないと思って生きてきた」
「そんな……ナルニエル様だって、魔術師団の団長なんですよね?すごいことだと思います」
「まあ、団長といっても、たかが魔法が扱えて、魔力が人より多いってだけの話だ。兄たちみたいに、頭を使う仕事で結果を出してるわけじゃない」
自嘲するように言うナッシュに、シャンティはしばらく黙って耳を傾けていたが、静かに首を振る。
「そんなことないと思います」
きっぱりとした口調に、ナッシュは思わず視線を向けた。
「私、こんなに素敵な魔法、見たことがありません。さっきの氷も、光の花も……こんな魔法が使えるなんて、本当に素敵だと思います」
まっすぐな瞳で見つめられ、ナッシュは一瞬言葉に詰まった。
「たかが魔法、なんて言わないでください。少なくとも私にとっては、忘れられない景色になりました」
その言葉に、ナッシュは思わず口元を緩めた。これまで、自分の魔法をこんなふうに真正面から褒められたことは、あまりなかった気がする。仕事の道具として、使ってきたものが、誰かにとってはこれほど特別なものになる。そのことが、なんだか不思議と嬉しかった。
「……それは…光栄だな」
「本当にそう思ってます」
シャンティは静かに、けれどしっかりとした調子でそう繰り返した。ナッシュはその真剣な眼差しを見つめながら、自分の中で何かがまた少し温かくなるのを感じていた。




