何がなんだか
通りを見渡しながら早足で進んでいたシャンティは、市場の外れで見覚えのある後ろ姿を見つけて、思わず足を速めた。
「――あの」
真後ろまで近づいて思い切って声をかける。
「君は……」
振り向いた顔がとても驚いていたので、声が大きすぎたのかも、と少し小声になる。
「ちょ、ちょうど、配達から戻ったところで……おじいちゃんから、来てくれたって聞いて」
「わざわざ追いかけてきてくれたのか」
「あ、あの、はい。」
「悪い、すれ違いになったみたいだな。母への贈り物を、というだけの用事だったんだが」
とても申し訳なさそうにされていて、思わず視線をそらしてしまう。
「あの、ハンドクリーム、追加が欲しかったって聞きました」
「ああ。思っていた以上に良かったから、母にも渡そうと思ってな」
「良かった…!です。お役に立てたなら」
褒められたことも重なってなのか、心臓がこれ以上ないくらい騒がしい。
「そんなに急いで来てくれたんだ、申し訳なかった。」
「いえ、その、ぜんぜん…」
もう頭の中は何がなんだかわからない。
「少し休んだ方がいい。良かったら、何か飲み物を買ってくる」
「え、そんな、悪いです」
「いいから。そこで座って待っていてくれ」
信じられない気持ちのまま、指をさされた斜め横にあるベンチに腰を掛ける。あまりにも嬉しすぎて信じられないのでシャンティはそっと頬をつねってみる。
(…ちゃんと痛い。)
緊張しすぎていたのか、思わず思いっきりつねってしまい、後悔しながら頬をさする。
「悪い、待たせたかな。この辺り、夕方は混んでるんだな。」
二つのカップを手に回りを見渡している。
「ありがとうございます」
そう言いながら、シャンティは差し出されたカップを受け取る。
ナッシュは一口果実水を飲み、隣へと腰をかけた。
「よく、この辺りには来るのか?」
「はい。配達と、あとは薬草の仕入れで、たまに」
「本当に薬草に詳しいんだな。ハンドクリームも……自分のために、わざわざ作ってくれたんだろう。ありがとう」
まっすぐ向けられた視線がまぶしすぎて、いえ…、の一言を絞り出すのがやっとだった。
通りの喧騒から少し離れたベンチの上で、二人だけの穏やかな時間が流れていた。




