定住先
気づいたら俺は、木を切っていた。
「ほら! もっと腰を落として力を入れろ!」
飛んでくる怒号がうるさい。
いかにも職人気質の男はやはり、その通りだった。
「俺のやり方でも出来てるからいいんじゃないんですか?」
嫌味ったらしく言ってやった。
「馬鹿! それだと体を壊すから言ってんだ!」
ギャーギャーワーワーと言い合いをする。どこか心地いい、ずっと昔からこんな言い合いをしていたかのようだ。どうしてこんなことになったのか、振り返ってみることにしよう。
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がんばってこの世界で生きて行こうと歩き出した。しかし、現実はそううまくはいかない。
一晩この森の中で明かし、歩いたら見覚えのある建造物が見えた。そう、第一異世界人と会ったところだ。なんかの間違いだと思い、扉をノックしてみる。
さっきと違う点があった。
扉は内側から開かれる。
中から出てきたのは。
あの男だった。
「あ? なんで帰ってきた?」
男の視線が痛い。あれだけ豊富な資源を持たせてくれて、どんな顔をして会えばいいのかわからない。
「いや、なんか気づいたらここに居ました」
「そうか……」
それ以上は追求されなかった。その代わりに、小包を回収された。何かと思ったら、家に入ってしばらくすると返された。
「ま、もう一回行ってみろ」
「行ってきます」
小包の中を見ると減った食料が追加されてた。恩を返す意味もかねて絶対に町を行こうと決意をした。
……決意はしたんだ、決意は……したそのはず。
今度は3日ほど森をさまよい、気づいたら同じ家の前に立っていた。
「いや! どういうこと! どうして同じところに着いてしまうんだ!?」
俺の嘆きの声が大きすぎたのもあってか。外で作業していた男がこちらにやってきた。
「やっぱ、戻ってきたか」
困ったように頭を掻いた男は続けてこう言った。
「ここに住むか?」
「はい、お願いします」
正直この森から出られる気がしなかった俺は二つ返事で答えた。こうして、男2人の何の面白みのない異世界ライフが始まることになった。
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場面は今に戻る。
呼び方はなんでもいいといわれたから俺はこう呼ぶことにした。
「じいさん。こっちは終わった」
木の束を一か所にまとめそう言った。隣でじいさんが俺の倍ぐらいの量を運んでるのを見て、静かに引いた。
「おう。じゃあ、昼にするか」
サンドイッチをほおばりながら俺は尋ねる。
「なあ。なんでじいさんはこんなところに住んでいるんだ?」
「この森から出られないからだ」
「俺も出られなかったし、そもそもこの森に入ると出られないってことか?」
「いや、そんな訳はないんだが」
じいさんにもよくわからないようだった。俺にしてはそんなことはどうでもいい。ここでの生活は意外に快適だし、そもそも俺にはやりたいことがある。
「もしかして、この森に魔法がかかっているのか?」
「魔法?」
初めて聞いた言葉のようにじいさんを首を傾げた。
「あの、貰った小包みたいに不思議な現象だよ」
「何が不思議なのかよくわからないが、あれは物にしか適用しない。人を一定の場所から出ないようする効果はない」
「物……」
なんか、俺の魔法の夢が徐々になくなりかけている気がする。しかし、まだあきらめない。物なら箒にまたがって空を飛べるかも知れない。
「そっか……あっ!」
「どうした?」
俺の閃いた声で驚かせてしまったことを謝罪しつつ天才的なアイデアを発表する。
「物ってことはこの家に帰ってこれるようにしてるとか?」
俺は少なくともじいさんが驚いた顔をすると思った。しかし、結果は険しい表情をした。
「そうなると、家に招いた俺の責任だな。すまなかった」
そう言ってじいさんはまっすぐ頭を下げた。
「いやいや、俺だって勝手に入ろうとしましたし、なんもじいさんの責任なんてないですよ!」
俺の言葉で顔をあげたが、その顔は晴れやかとは程遠いものだった。
ようやく近づいた距離が遠くなってしまったような気がした。




