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あんた、もしかして

「それじゃ、オッサン。オレ達の馬車に乗っていけよ。次の街まで行ってからどうするか決めればいい」

「本当か? いやぁ、ありがてぇ」


 ドワーフは髭だらけの顔をくしゃくしゃにして笑った。そして、

「ついでで悪ぃんだが、積荷も運んじゃもらえねえか? さすがにここに一晩置きっぱなしってわけにもいかねえ」


「ん? ああ。構わないよ」

「助かる」

 ドワーフの男は馬車に戻って荷台の幌の中に入っていった。


「わるいな、荷物まで持ってもらっちゃって」

「困ったときはお互い様、ですよ」


 ドワーフは商品を王都まで運ぶ途中だったようで、大小様々な木箱や壺などが馬車の荷台には入っていた。その中にはかなり重いものもあったようで、それらを大変そうに運ぶドワーフを見かねてメリアが荷物運びの手伝いを買って出た。


 デルフィニウムは道の脇にくくりつけられていたドワーフの馬をイリスの馬車に繋げて二頭立てに仕立てている。馬同士の相性は悪くないようで、ケンカするようなこともなく仲良くしている。


 ミャーリーは……まあ、いつものように木の上で昼寝を始めた。ミャーリーにこういった場所での活躍に期待していない。


「さて、オレはどうするかな……」

 手持ち無沙汰になったイリスはドワーフの荷台の中をなんとなく覗いていた。

 荷台の中にはまだまだ荷物が入っており、これをイリスの馬車に入れるとイリスたちのスペースがずいぶん減るなと思った。


「ちょっとごめんよ、クソガ……お嬢ちゃん」

 ドワーフが次の荷物を取りに来たので場所を譲った。


 イリスと変わらないか、それより少し大きいくらいなのに腕は何倍も太く、無造作に伸ばした顎髭と相まってやたら無骨な印象を受ける。


「そういや、あいつらオレの壺奪おうとしてメリアにやられたんだったな」

 イリスは不意にこの世界に来た最初の日、王城から仲間としてあてがわれた三人組を思い出していた。あのリーダー格も確かドワーフだった。


「まあ、ドワーフなんてみんなそんな感じか」

 もう長い付き合いになる女騎士との出会いを思い出した。


 ……ところで、ひとつの事実と、ひとつの可能性に思い至った。


 すなわち、あのドワーフはイリスのかつての仲間、ジャンその人であるという事実と、メリアに懲らしめられたことによってイリスに対して逆恨みの感情を持っているのではないかという可能性だ。


 まさかとは思いつつ、荷物を持ってイリスの馬車へ向かおうとしているドワーフに向かって声を掛けた。

 それはほんのちょっとした茶目っ気だった……はずだった。


「あんた、もしかしてジャンか?」

 その瞬間、男は持っていた箱を放り出して脱兎のごとく逃げ出した。

 まさかが現実であったことに驚きつつも、冷静さを失っていないイリスはすぐさま取るべき手を打った。


「メリア、そいつを捕まえろ! 前お前が懲らしめた盗賊の男だ!」

 メリアの動きは素早かった。風のような速さで逃げていくジャンよりもさらに速く走っていき、あっという間にドワーフに追いついて組み伏せた。


 しかし、それは単なる陽動でしかなかった。


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