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ミャーは寝てないにゃ……ぐうぐう

 一行がカールトンを旅立ってから二週間ほどが過ぎた。


 馬車は王都を越え、南方の街道を次の宿場町に向けてのんびりと進んでいる。

 辺境にもほど近いこの辺りともなると、街道であっても人通りはまばらである。


 今日もいい天気だ。南部ではすでに春真っ盛りで日の光がぽかぽかと暖かい。御者台のミャーリーでなくとも、船を漕いでしまいたくなる気持ちはわかるというものだ。


「ミャーリーさん、変わりますよ」

「んにゃ……。ミャーは寝てないにゃ……ぐうぐう」


 荷台のメリアが御者台に出て行った。さすがに御者が完全に寝ていて馬任せの道のりというわけにも行かない。

 とその時、おもむろに馬車が停止した。


「んあ? どうしたの……?」

 荷台で眠っていたデルフィニウムが起きだしたその声でイリスも目が覚めた。


「どうしたんだ?」

 イリスが御者台に顔を出すと、メリアが手綱を握っていた。馬車を止めたのはメリアらしい。


 馬車の前には別の馬車が止まっていた。

 この辺りの街道は手入れもそれほど頻繁にされているわけでもなく、かなり痛んでいる場所も多い。


 そういった場所に運悪く車輪が引っかかってしまい、スタックしてしまったようだった。

 すでに馬は馬車から外されて近くの木に結びつけられているところからすると、トラブルに遭ってからそれなりの時間が経過しているようだった。


「大丈夫か?」

 道の脇で車輪の様子を確かめているドワーフの商人らしき男に話しかけた。


「ダメだな。車軸が完全にイカれちまってる」

 イリスは傍らに立つメリアに聞いた。


「馬車の修理道具なんてあったっけか?」

「少しはありますけど、車軸の替えとなるとさすがに……」

「だよなー」


 ちょうどこのあたりは街と街の間の何もない野原の真ん中だった。職人を連れてくるにも替えのパーツを調達してくるにも往復で半日はかかってしまう。


 かといってこんな所で野宿をしたらいつ魔物に襲われてもおかしくはない。戦争は終わったとはいえ、まだまだ魔物の被害は後を絶たないのだ。


「だったら、一緒に次の街まで行けばいいにゃ」

「そうなの。街まで行けば職人さんを探すのも、パーツをみつけるのも、別の馬車を買うのもできるの」


 ミャーリーとデルフィニウムの提案にイリスは乗ることにした。

「それじゃ、オッサン。オレ達の馬車に乗っていけよ。次の街まで行ってからどうするか決めればいい」


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