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ヤオヨロズ──中道録  作者: 隼理史幸
八百万チュートリアル
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……って、ちょっと! 置いてくな二人とも~!

決闘(ライバルマッチ)〉戦闘終了後、三人が手にする携帯端末の画面には経験値の換算等を行うリザルト画面が現れる。


「あーあ、負けちゃったな。ハンディキャップ付きでも悔しいもんだね」


言葉ではそう言いつつも、あまり気にはしていない様子のミシェルへ琥珀は軽く一礼をする。


「ミシェル先輩。対戦ありがとうございました」

「いや、礼はいいよ。てか、本当に礼儀正しいよね琥珀ちゃん。ボクに礼を払う人なんてまずいないのに。ねぇ?」


と、彼女は嫌らしい視線とイントネーションによる語りかけをリザルト画面の確認中の九龍にぶつける。彼の方はそんな様子を目と耳にして溜め息を吐く。


「はぁ、悪かったな無礼者で。つーか、いつものことながらそのイヤミたっぷりの視線を送るな」

「はは、いいでしょ別に。いつものことなら。それよか、なんか良いものドロップしたかい?」


ミシェルがそう訊くと、九龍は自身の携帯端末に映るリザルト画面の再会し、拾得物の欄に目を通す。するとそのなかに残滓が二つ存在することを見つける。


「ん、ああ。何か残滓二つ拾った。確か正体を確かめるには〈精練所〉に持っていかなくてはいけないんだっけ?」

「そそ、精練するまではそれがなんなのかわからない。それをドキドキかめんどくさいと取るかはキミの自由だ。ああ、それより忘れてたんだけど…」

「そうか。じゃ帰るわ。琥珀さん、お疲れ様」


そう言って彼は携帯端末を制服のポケットにしまい、校舎へ向けて歩き出す。


「…ってだから待ってえぇえ!」


ごく自然に会話を切り上げ帰り支度に向かおうとした九龍の前方にまたしてもミシェルは滑り込み行く手を阻む。


「邪魔だミシェル。つい先程思い出したが今日はスーパーの特売日だ。リベンジマッチなら後日飽きるほど受けてやる。だから今はそこをどいてもらいたい」

「え? そこ? ああいや。そうじゃなくて。琥珀ちゃんの連絡先、交換しない? って話だよ」


唐突に話の中に自身の名前が上がったことで、少しばかりキョトンとした様子の琥珀。今し方帰宅に移ろうとしていた九龍も、先程しまいこんだ携帯端末を再び取りだし準備する。


「あれ? ゲーム内でフレンド登録したけど、それでも連絡取れないのか?」


ふとした疑問を呟く九龍に、ミシェルはやや丁寧気味にその概要を伝える。


「掻い摘んで話すとだ。フレンド登録でできることは戦闘のヘルプや知ってるID同志でチャットの部屋を作ったりもできるけど、やっぱゲーム内でなく現実の連絡先知ってるとなにかと便利でしょ? フレンド、なんだし」

「…んま、そういうことなら。よろしいか? 琥珀さん」

「え、はい。喜んで、先輩方」


合意が持たれたところで、三人は再び自分の持つ携帯から赤外線通信を行い自らの連絡先の交換を完了させる。


無事にこの連絡先の交換が終了したのを確認すると、九龍は軽い伸びをして身体を少々ほぐす。


「さてと、んじゃ帰ろうか。ああ、俺はスーパー寄っていくけどさ」

「あ、先輩。その、わたしも同行してよろしいでしょうか? 今日特売をしているスーパーって、矢木沼パートですよね?」

「ああ。もしかして琥珀さんも用が?」

「はい。昨日のチラシを見て。卵の特売は逃せません」


それを聞いた九龍は肩の間接を軽くならし、上履きの履き具合も軽く確かめ、そして左腕に巻かれた腕時計の時刻を確認してからあらためて琥珀に向けて言う。


「…特売の5時を廻るまであと五分か。メチャメチャ急がないと。一分で学校を跡にしたい。琥珀さん、よろしいか!」

「…っ! はい、先輩!」

「よし、GO!」


と、掛け声と共に九龍は陸上競技の如くすさまじいスタートダッシュをかけ中庭を走り去る。


それに若干の遅れを見せたものの、彼に劣らぬスピードで琥珀も駆けていき、結果ミシェルただ一人がその場にポツンと取り残された。


「……って、ちょっと! 置いてくな二人とも~!」


放置を食らったミシェルは思考が刹那の間停止し、そしてはっとするや否や慌てて二人の後を追うのだった。

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