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ヤオヨロズ──中道録  作者: 隼理史幸
八百万チュートリアル
20/93

ミシェルちゃん大勝利…とでも思ったんだけどな…

〈ヤクシャ〉は痺れて動きが鈍い〈ヘルメス〉の姿に変化する〈ネコマタ〉へスキル『土隆撃』を放つ。


そこへ、前のターンと同じようにその間に割って入り〈ケルベロス〉が盾となりダメージを引き受ける。


スキル攻撃をその身に受けた〈ケルベロス〉の体力ゲージは『critical』の表示とともに通常より大きな減少を強いられる。


「うぐっ、このタイミングでクリティカルヒットかよ。ダメージは-58ってところか。そして反撃を強制的にするから…」


これから先起きるであろう展開をほぼ予測できてしまっている九龍と琥珀は項垂れる。攻撃を受け、即座に反撃に移る〈ケルベロス〉。


番犬は自陣に矛を向けた者─ミシェルの使役する瀕死の〈ヤクシャ〉へ止めを刺さんと鋭き爪で切り裂く。


残り僅かの体力ゲージを削り取られた〈ヤクシャ〉は消滅し、ミシェルのチームは一体のみとなった。


しかし戦力を減らされたミシェルの顔に焦りは無く、むしろそれと相対している二人のほうが焦りがにじみ出ていた。


「──捨て駒ご苦労様。さて、おまちかねの番狂わせのお時間だ。覚悟しろクロウ! あとついでに琥珀ちゃん!」

「わたしはオマケのオモチャみたいな扱いですか…」


ミシェルの場にただ一体のみ残された〈巴御前〉は、仲間が屠られたことにより二度目の行動を開始する。


直前に収束させた力を手にした薙刀に込め、それを一気に地面へと打ち込み強大な衝撃の瀑布を自らの主に仇なす者に解き放つ。


「スキル『大烈波』。水色属性の全体攻撃だ! これで大勝利ってやつだ!」


荒波のような攻撃が収まると、これまで体力ゲージがまったく減らされていなかった贋作の〈ヘルメス〉がその一撃で『critical』という表示とともに撃墜されていた。


「──あの子が受けたダメージは204。体力ゲージが188しかない〈ネコマタ〉が〈ヘルメス〉と同じ属性に変化してしまえば耐えられませんね…」

「弱点に加えてクリティカルでオマケにスキルで倍化。まさに一撃必殺ってところかな。さて他の連中は…」


ミシェルは勝利を前にし半ば得意顔になりつつも画面の中の状況確認を行う。


「〈ヘルメス〉は辛うじて生きているか。いわゆる虫の息。ゲージがドットだから一桁程しかないでしょ。で、盾役の犬ッコロは…」


そこで、彼女の表情をは得意顔から驚愕のものに変貌する。


「って、え!? ダメージ受けていない!? どうな…って、ああそうか! フォーススキルか!」

「失念していたな。こいつのフォーススキルは一定確率で完全回避を行う。確実に発動できない以上全部これをアテにしてはいなかったがな、どうやら運が味方をしてくれたみたいだ」


相手の必殺の一撃を攻撃をスキルで回避した〈ケルベロス〉は、高らかに咆哮を上げるとともに更なる力を発揮する。


「! 魔獣種のフォーススキル、回避に成功したことでEXターン獲得か。こいつはいい!」


それと同時に、琥珀のチームにただ一体残された〈ヘルメス〉もまた自身のフォーススキルを発動させていた。


「──幻魔種のフォーススキル。他の同種族以外のEXターンに伴い自身もEXターンを取ります」

「お、琥珀さんもか。ってことは…」


九龍は琥珀と目を合わせたあと、同じタイミングで相手方を向く。見られている当の本人は先程までとは一転して諦観した顔持に変わりゆく。


彼女はこの先のゲーム展開と結末を瞬時に予測し、それは決して覆ることの無い、という結論に至った。


「…あー、マズイわ。どう足掻いても、将棋でいえば王手の状況だわ」


がっくし、と肩を落とすミシェルに止めを刺さんとするが如く、画面の中では彼女の場に唯一残された〈巴御前〉へEXターンの行動を入力し終えた二体が攻撃を仕掛ける。


率先して行動開始した〈ヘルメス〉は攻撃を反射する緋色の壁に沓から生えた翼を翻し通常攻撃を放つ。


無論その攻撃は前のターン〈ケルベロス〉が反撃を掛けた際と同じく、壁が砕け散るのと同時に攻撃を弾き返し相手にダメージを与える。


反射したダメージを受けきる程の体力は今の〈ヘルメス〉には無かったが、自らの攻撃で身を滅ぼす筈がその身まだその場に留まっていた。


「…ふう、魔具『ライフセーバーの見習い紋章』。体力ゲージが50%以下の時に致死量のダメージを受けた際に一度だけ体力ゲージを1だけ残す。そして壁が崩れ去った今、攻撃は通ります」

「ありがとう琥珀さん。それじゃ追撃の一撃だ!」


がら空きになった〈巴御前〉の懐に、九龍の使役する〈ケルベロス〉はスキル『ファイアダイブ』を直撃させその体力ゲージを大幅に減少させる。


「う…ダメージは79。体力のMAXが231だから、さっきのダメージ込みで防御力は上がっていても素早さで劣っていては持たないか」


そして互いのEXターンが終了し、次のターンへの移行とともに三人はコマンド入力を行う。


「これで終了です。行きましょう、〈ヘルメス〉」


主の意を汲み取った〈ヘルメス〉は折れかけた翼を力の限り羽ばたかせ敵対する者へとスキル『風切』を放つ。


弱点である水色属性の一撃をその身に受けた〈巴御前〉はその体力をじりじりと削り取られてゆき、残り二割強程しか残されていなかった。


そして、四度目の攻撃の順番となった〈ケルベロス〉は前のターンと同じく火炎を我が身に包み、主の敵へとその必殺の一撃を見舞わんと襲いかかる。


「──いっけえええぇぇぇぇえ!」


スキル『ファイアダイブ』の直撃を受けた〈巴御前〉の体力ゲージは完全に消失し、結果ミシェルのチームは全滅となった。


その瞬間、携帯端末のスピーカーから和調の音楽とともに戦闘に勝利した宗の表示が出現する。


「…ふう、戦闘終了。わたしたちの勝利です、先輩」

「…勝った、のか?」


きょとんとした様子の九龍を見て、その相手をしていたミシェルは深い溜め息を漏らし、自らの心中が至極残念な気持ちであることを誇張気味に伝える。


「はぁ~、あと少しだったのにな~。ミシェルちゃん大勝利…と思ったんだけどな…。獲物を前にして舌なめずりは三流のすること、とはよく言ったものだね…」

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