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ヤオヨロズ──中道録  作者: 隼理史幸
八百万チュートリアル
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ランクの違いが…なんだって?

1ターンがおわり、再びコマンド入力の画面に移るのを見計らい、九龍は戦闘のヘルプ画面を開く。


「えっと、なになに? 属性ごとの相関図は、赤→緑→水色→茶→黄→青→赤…っていうのと、黒→白→灰→紫→黒…という二つが存在するのか。有利な属性ならダメージ1.5倍。不利ならばダメージ0.75倍ってのはさっき聞いたな」


さて、と彼は言ってヘルプを閉じコマンド入力に戻る。そして残る〈カミサマ〉を自らの目へ映し、初心者なりに、と若干の自虐を含みつつ状況を鑑みる。


(さて、どうするかな? ミシェルの場の〈アラクネ〉はあと一発で沈むだろうけど、残ったアタッカーを野放しにはできないし…。かといって他の奴ら…〈巴御前〉と〈ヤクシャ〉は両方とも茶属性。赤属性の〈ケルベロス〉では弱点を突いて一撃で倒せそうでない。琥珀さんのチーム、コピーしてるのも込みで双方水色属性だけどサポーターらしいから力業は期待できないな)


う~ん、と唸りつつ〈ケルベロス〉のアクティブスキルの欄をスクロールさせる九龍。ふいに、そのスキル欄のなかのひとつに彼は目を止める。


(あ、使えそうだなこれ。上手く行けば…)


そう思い、彼は入力を完了する。他のふたりもそのすぐに入力を終え、画面のなかの〈カミサマ〉たちは行動を開始する。


2ターン目、最初に行動したのは〈ケルベロス〉だった。〈ケルベロス〉をは咆哮を上げるとともに赤いオーラを纏い、構えを取る。


「…うげっ。クロウめ、アイツの本来の用途に気がついたか」


構えを取る〈ケルベロス〉を見たミシェルは露骨に嫌そうな顔持ちになる。それに続くように琥珀の〈ヘルメス〉が沓の翼をはためかせ、敵陣へと切り込んでゆく。


『風切』というスキル名が表れるのと同時に、ミシェルのチーム全体へと風の刃が降り注ぎダメージを与える。


「む、琥珀ちゃん。『風切』のスキルレベル上げてるね?」

「ええ。『風切』に限らず、一部のスキルは成長させることで何かしらの追加効果が付加されます。これの場合は普通の単体攻撃とは別に威力をやや落として全体攻撃にできる…ですが〈ヘルメス〉のダメージを参照するパラメータが低いせいで属性一致でもあまり削れませんね…」


琥珀の言う通り、風の刃はミシェルのチーム全員にヒットはしたものの、弱点を突かれた〈巴御前〉と〈ヤクシャ〉の体力ゲージには三割弱程のダメージにとどまり、自身に有利な属性の攻撃を受けた〈アラクネ〉に至っては一割程の数値のみのダメージであった。


「仕留め損ねました、か。おまけに…」


少し困り顔を浮かべる琥珀。その理由は端末の画面に映る自身のチーム員である〈ヘルメス〉の姿を真似る〈ネコマタ〉が全身が痺れるエフェクトとともに行動がキャンセルされていたことに起因していた。


「〈ネコマタ〉さんは麻痺を引きずり行動不可…ですか」

「ま、そゆことでボクの〈アラクネ〉の番だ。さっきのでわかってると思うけど〈ヘルメス〉は水色属性。緑属性の攻撃を喰らえばなかなかのダメージが入るそこに属性一致で上乗せすれば…」


ミシェルのチームの〈アラクネ〉は既に行動を終えた〈ヘルメス〉に変化した〈ネコマタ〉へ向け攻撃を繰り出す。


名を『ハニークライ』と表示されたスキル攻撃により、無数の針が対象に襲いかかるエフェクトが発生する。しかし、その攻撃は〈ネコマタ〉へと届くことはなかった。なぜならば──


「──っ、やっぱ〈ケルベロス〉か…」


〈ネコマタ〉への攻撃を、〈ケルベロス〉がその身を盾にし防いでいたのだ。赤いオーラを纏う〈ケルベロス〉は攻撃を受けるも、その体力ゲージは一割程も減少してはいなかった。


「──緑属性の攻撃は赤属性の〈ケルベロス〉にはダメージ減少する…だったな。そして─」


その番犬は瞳を輝かせ、仲間へと矛を向けた敵方の〈カミサマ〉目掛け飛びかかり反撃を行う。すれ違いざまに自らの鋭い爪で一閃し、残り僅かな〈アラクネ〉の体力ゲージをすべて奪い去る。


「アクティブスキル『守護の構え』。敵の攻撃を三回まで引き受け、また攻撃を受けた時に反撃を行う。冥府の番犬っていう経歴らしいスキルだな…」


九龍は自らの使役する〈カミサマ〉の能力を目にし、関心を深める様子を見せる。そして、一体分の空白が生まれたミシェルのチームを画面越しに見ながら言う。


「えっと、ミシェルさん? ランクの違いが…なんだって?」

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