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ヤオヨロズ──中道録  作者: 隼理史幸
八百万チュートリアル
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ところがどっこい。まだターンは終わっていない!

「おんのれド素人の分際で調子に乗ってぇ…」


憤慨するミシェルの意志に応えるがごとく、彼女のチームの〈カミサマ〉は行動を開始する。


「へ。とりあえずこのターンは〈ケルベロス〉が攻撃を一手に引き受けてくれるから琥珀さんのチームがやられる心配は無いな」

「──そうだね。『この』ターンは大丈夫だ」


含みのあるミシェルの言い方に九龍頭の上に疑問符を浮かべるなか、画面のなかでは〈カミサマ〉たちは動き出していた。


ミシェルのチーム員〈巴御前〉は構えを取り、スキルを発動させる。『武の鏡』と名付けられたスキルは自軍の〈カミサマ〉全員の前に緋色の壁が出現する。


「…っ。先輩。どうやら反撃戦法、読まれていたようです」

「? 琥珀さん、それはどういう…」


九龍が疑問を口にする間もなく、画面のなかは動きだす。ミシェルの〈ヤクシャ〉が前のターン〈巴御前〉が使用したのと同じスキル『土隆撃』を〈ネコマタ〉目掛け放つ。そしてまた〈ケルベロス〉はその攻撃に割って入りその身を盾として仲間を守る。


〈ケルベロス〉の体力ゲージは属性一致の攻撃を受け二割弱ほど減らされるものの、致命傷とは言い難く使役している九龍も充分に余裕を保っていた。


「まだまだ行けるな。よし、そいつも返り討ちに…」


先ほど〈アラクネ〉の攻撃を受けた時と同じように、〈ケルベロス〉は襲いかかった〈ヤクシャ〉に反撃のため飛びかかり、その鋭い爪で切り裂こうとする。


しかし、爪が〈ヤクシャ〉に届かんとすると、つい先ほど〈巴御前〉が展開した緋色の壁─『武の鏡』がそれを阻む。


緋色の壁は砕け散ると同時に攻撃を仕掛けていた〈ケルベロス〉を吹き飛ばし、さらにその体力ゲージを一割ほど削る。


「スキル『武の鏡』。味方全員に敵のパラメータ『力』を参照する攻撃を一度だけ反射する。〈ケルベロス〉の反撃スキルは強制発動する点を突かれましたね…」

「読んでいた、というのはこういうことだったか…。琥珀さんのチームに結構な損害が出たのなら必ずこれを使ってくると括ってたのか」

「ま、ボクも全部はお見通しじゃなかったよ?『武の鏡』のスキルのレベルを上げれば『速』パラメータ関係なく最速で発動できて、反射時のダメージも増えるんだけど、流石にそこまではいってないからね。おかげで〈アラクネ〉を失う羽目になった」


肩をすくめているようで、全く残念がる様子がないミシェルを見て、九龍は小さく溜め息を吐きながらも端末の画面に視線を戻す。


「はぁ、一枚上手だったってのは悔しいな。仕方ない。気を取り直して次のターンで巻き返すか」


そう口にした九龍に対し、やたらと嫌らしいイントネーションでミシェルは叫ぶ。


「ところがどっこい。まだターンは終わっていない!」


その言葉に応えるかのように、ミシェルの使役する〈カミサマ〉の一体〈巴御前〉がふたたび行動を開始しようとしていた。


その状況に、理解しかねていた九龍はたまらず訊く。


「!? どういうことだ。何でミシェルの側がまた行動を選んでる?」

「ああ、クロウは知らなかったね。種族ごとにあるフォーススキルにはEXターン─つまり一回ぶん追加で行動を行えるタイプがあるのさ。そのぶん条件がしんどいのも多いけど。で、英雄種〈巴御前〉のEXターン獲得の条件は、味方がやられること…さ」

「…げっ、つまり反撃でお前のチームの一体を倒したから──」


画面の中の状況を作り出した一端が自身にあることを察した九龍は、がっくりと肩を落とす。


「何が全部お見通しじゃないだ。全然やられること折り込み済みじゃないか…」

「いやいや、そんなことはないよ。ボクだって『速』のパラメータが大体同じの〈アラクネ〉と〈巴御前〉どっちが先に行動するかわかんなかったし。ホントだったらもう一ターン生き残らせたかったよ?」

「…イヤミかよ」


落ち込む九龍をよそに、端末の画面の中では既に〈巴御前〉が行動を行っていた。構えを取り、スキル名『女神の加護』を発動させると、今度は自身のチーム全体に黄緑色のオーラがうっすらと現れる。琥珀はそれを見て隣の九龍に聞こえるよう説明する。


「このスキルはチーム全体にターン終了時体力を回復させる効果を3ターンの間与えるモノですね。まあ、状況的にはベストな判断ですね」

「? さっきの攻撃反射スキル─『武の鏡』をまた張ったりしないのか?」


その九龍の問いに、琥珀は手にしている端末の画面の方を指さしながら答える。


「先輩、自分のチームの〈カミサマ〉の体力ゲージの下にある魔力ゲージの方をみてください。スキル攻撃にはこちらを消費する…のはまあこの手のゲームにはありがちですよね」

「ま、そうだよな。ああ、もしかして『武の鏡』は強力なぶん消費魔力がバカにならないからか?」

「その通りです。強力だからこそあまり考えなしには使えません。それに、攻撃を仕掛けなかったのも理由があります」

「? そういえば何でだ?〈ケルベロス〉に更なるダメージを与えられるチャンスではあったが…」

「実は、さっきの『武の鏡』や〈ケルベロス〉の『守護の構え』みたいな回数制限付きのスキル、ターンを跨いでもそれは発動条件が満たされるまではキープされますけど、代わりに重ね掛けしても回数は増えないのです」

「つまり、今度のコマンド選択の際に『守護の構え』を使ってもムダ、ってことか。確かに次のターンまた三回ぶん反撃回数補充されちゃたまらないからな」

「そういうことです。ミシェルさんがEXターンに同じスキルを使わなかったのも〈巴御前〉に掛かるぶんは無駄になるから消費に合わないと判断したのでしょう」


むむむ…、と唸り声をあげる九龍を見て、ミシェルは少しだけしたり顔を浮かべていた。

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