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ヤオヨロズ──中道録  作者: 隼理史幸
八百万チュートリアル
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ランクの違いが戦力の決定的差ではないということ、わかってもらえたかな?

(〈アラクネ〉の体力ゲージはMAXで191。今の攻撃で弱点を突かれ一気に153ダメージか。これはなかなかにきっついスタートだなぁ)


困り顔を浮かべつつも、ミシェルは手にした端末の画面を見つめながら戦況予測を頭の中でまとめていた。


「お次は、〈ネコマタ〉さんお願いします!」


その言葉に応えるかのように、琥珀のチーム員の一体、菜の花色の着物を纏い猫の耳と尾を持つ獣人─〈ネコマタ〉に行動順が回る。〈ネコマタ〉は自身のチームの〈ヘルメス〉へと向き直ると、印を組む動作を取る。


するとふいに〈ネコマタ〉の身体が煙に包まれる。次第にその煙が晴れ、現れたその姿は─


「な、〈ヘルメス〉と同じ姿になったぞ!?」

「そう、これが〈ネコマタ〉さんの保有するレアスキル『変化』です。3ターンの間対象の〈カミサマ〉のスキルと種族、属性をトレースします。もっともパラメータまではコピーできませんが、自身より格上の相手のスキルを行使できるだけでも十分です」

「あー、くっそ最悪。足早いサポーターふたりとか~。──次の順番はボクの〈アラクネ〉か」


手負いの状態の〈アラクネ〉はその瞳を妖しく輝かせ、ガラスを引っ掻いた時に出る音のような叫び声とともにスキルを発動させる。


スキル名『パラライズ』という表示が表れると、画面じゅうに黄色い煙幕のようなエフェクトの後、琥珀のチーム員の〈ネコマタ〉と〈イシュタム〉に電流が流れるエフェクトが発生する。


「うわっ、麻痺しちゃった!」

「麻痺? それはいわゆるバッドステータスってヤツだよな?」

「はい。これにかかると受ける攻撃が回避率0%になり、行動順が遅れて一定確率で行動出来ないことがあります」


初心者である九龍に説明をする琥珀をよそに、彼女のチームへ向け追撃が浴びせられようとする。


「いけ〈巴御前〉! まずはあの自殺好きの女神からやってしまえ!」


ミシェルが使役する和製の鎧兜を纏う女武者の姿をした〈カミサマ〉、英雄種〈巴御前〉は手にした薙刀で琥珀のチーム員である、首をロープで括り非常に長い前髪から腐った顔が見え隠れする姿の女神種〈イシュタム〉へスキル攻撃を打ち込む。


「必殺、『土隆撃』! 自身と同じ茶属性のスキル攻撃は与えるダメージは1.1倍にアップする! 行けぇ!」


余波で地面を焼き菓子のように叩き割るエフェクトを生み出す重い一撃が〈イシュタム〉へと襲いかかる。


ヒットと同時に、『critical』という表示が表れ、〈イシュタム〉の体力を6割程削り取るのを見た琥珀は思わず声を漏らす。


「しまっ、クリティカルヒット!?ということはダメージも1.5倍ですか…。これじゃ回復が追い付かない可能性が…」


攻撃の演出の後、〈イシュタム〉の体力がわずかに回復するのをプレイヤー3人確認する。琥珀はやや困り顔で状況の解説を行う。


「女神種のフォーススキルは、わたしのチームメンバー全員はターン開始時体力を一定値回復するのと、ランク3以上のモノにはそれに加えて相手の攻撃を受けるとそのダメージのいくらかを回復する能力を持つ…けど」

「そう、だから居座られるとチマチマと回復され厄介ってこと。けど少ない攻撃でまとまったダメージを取られると持たない。〈ヤクシャ〉、追撃だ!」


ミシェルの命に応じるように、鬼面を被る化け物の姿の闘鬼種〈ヤクシャ〉は二振りの白い刃の刀を目標に向け振りかざす。


「スキル『残影一閃』。黒属性の〈イシュタム〉には弱点となる紫属性のスキル攻撃ならどうなると思う? はいそこの初心者くん、答えをどうぞ」

「え、初心者って俺のこと? えっと、ダメージ1.5倍…だよな?」

「オッケイ。じゃクロウ、答え合わせだ」


スキル名が表示され、斬撃のエフェクトが発生し終えると画面には『critical』と『weak』の2つの表示が出現し、攻撃を受けた〈イシュタム〉の体力ゲージをすべて奪い去る。


体力が0になった〈イシュタム〉は光に包まれ、その場から消滅する。それを見た九龍は驚愕の表情を浮かべる。


「な、またクリティカルヒット!? しかも弱点ってことはさらにダメージが上乗せってことか!?」

「そういうことだクロウ。残念ながら不正解だったね」


驚く九龍をよそに、チームメンバーの一体を失った琥珀は現在の状態を冷静に分析をする。


「クリティカル二連続ですか…。体力が201ある上に自己回復もある女神種がワンターンキル…。もしかしてミシェルさん、そちらのチームのアタッカー二体ともクリティカル率アップの〈魔具〉着けてます?」

「その通り。まあ今回の面子、低ランク故のパラメータの微妙さはあるのだけど火力だけは負けてないからね」


経験者ふたりのトークに、またしても一名の初心者が置いてきぼりを食うのを感じ、説明を求めた。


「あの、御二方はいったい全体何を?」

「あ、すみません先輩。あの、〈魔具〉の説明はチュートリアルで聞きましたよね? チーム編成の画面で〈カミサマ〉に装備させる、いわゆる強化パーツのようなモノです。いろいろな効果を持つ〈魔具〉が存在しますが、それ自体にもコストがありますのでキャパシティが少ない内は着けにくいですね…」

「そっか…、やっぱ強いヤツほど初心者のうちには取り回しに欠けるのか…」


少しばかり項垂れる九龍に、やや自慢気な顔持ちでミシェルは彼らに向け言う。


「ま、バランスと頭の使い方さ何事も。多少ランクが低い連中でも、琥珀ちゃんのチームの〈ネコマタ〉みたくスキルが優秀なヤツもいるし、さっきのように〈魔具〉で低スペックをカバーしたりもできる。ランクの違いが戦力の決定的差ではないということ、わかってもらえたかな?」


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