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前回のあらすじ。
キースさんに「誰とでもいいから結婚してくれ」と土下座されました。
勘弁してください。
「…お断りします」
「…結婚したら凛としての国籍と自由を保証する」
「………………お断りします」
餌を蒔かれても食いつきませんよ
えぇ、別に揺らいでません
揺らがないと言ったら揺らがないのです。
それよりもなんですか、しつこいですよ
しかも土下座のまま動かないって…
まぁ、いいです。このまま始めましょうか
この人はこっちが頷くまで動かないでしょうし、今はそっちの方が有難い。
ゆっくりと手を開いて一本ずつ折っていく。
この時のコツはリズムよく刻むことです
5
特に意味も無いんですが、気分と雰囲気です
4
ロウディオにはいつでも念話で合図が出せますし、術式も用意はできてます。
3
それと同時にゆっくりと魔力を魔源から汲み出すようにして取り出し体内を循環させる
2
この作業は私は初めてする事ですが不思議と自然に行えます。
1
既に何度か魔法は使っていますがそれは零さんの意志が使っていた様なものなのでノーカンです。
0―
折る指がなくなりカウントダウンが終わった瞬間予め仕込んでおいた魔法陣を発動させましょうか。
扉に近く丁度中心で土下座しているキースさんは発動に気づいてもよけられないでしょう。
その魔法陣は零さんが愛用していた空間魔法です。そして、全ての始まりであり終わりでもあります。
【空間魔法】
アイテムボックスや移動、一部では金や宝石貴金属等の密輸での使い方ができ、冒険者になるには必ず使えなければならない程便利で簡単な魔法。
一般普及率
98%
それも私が空間魔法を選んだ理由でもあります。それにそのお手軽さから零さんが初めて使った魔法という事もあります。
キースさんはいきなり淡く光出した地面に驚いている様子ですが直ぐに空間魔法だと気づくでしょうね。
まぁ、しっかりと魔法陣は埋めていたので光が漏れるほどの強さになっていたらもう周りがどうやっても止まるわけがありません。
…術式を施した人が死なない限りは、ですが。
その証拠にもう魔法陣の解除に思考を向けているようですが余り進んでいませんよね?
「-なっ…!?こりゃぁ……」
まだまだ甘いですよ?
そう簡単に私が解除させるとでも思ったんですか?
というかこれくらいで終わると思っているんですか?
白く、強く輝く魔法陣。
そこにはもう土がどれだけ上で被さっていようが関係ない。
もう少しで完成し次に移ー【凛様ー!シュラ殿がそっちに向かったっすよ!それも予想以上の速さっす!】ーれるのに、邪魔が入るようですね
ーバァアアァァァンッッ!!!ー
一応、予想ができていたので耳を塞いでいましたがキースさんは突然の音で術式妨害の作業が止まってしまってます。
まぁ…失敗したらどうなるかわからない術式を妨害するのには尋常じゃない集中力を必要とします。そんな中で不意に起こった爆発音。それも無視できない程の大きな音でしたらその集中力が途切れるのも無理はないですね
…ですが、そんな余裕はないですよ?
「【ー我求む…永久なる眠りから覚めし願いと想いをー】」
ひっそりと、しっかりと詠唱を行う。
…正直、中二病じみていて恥ずかしんですけど……陣無しで魔法を使う場合は詠唱を行わないと魔力が外に漏れて陣自体が崩れてしまいます。
無詠唱が無いわけではありませんがそれはしっかりとしたイメージを持たないと使えませんし失敗した時が怖いので諦めます。
「ー、キース!ととっ…なんだ?これ…凛?」
「来るんじゃねーぞ!巻き込まれんぞ!」
爆発の砂埃から出てきたが魔法陣に気づきその場でたたらを踏む赤い髪の人。
どうやらシュラさんが扉を破壊してまで入ってきたようです。
おかしいですね…ロウディオに足止めを頼んでましたしさっき合図を出したばかりなんですが…余りにも速すぎません?
まぁ、来てしまったのならば仕方ありません
それに、地面から伸びる白い鎖がキースさんに絡みつき、地面に縫い付けられている姿を見てその場でたたらを踏んでいます。
ーが、片足が陣の線を踏んでいますし
そのままだと巻き込まれますよ?
「【反転せよ虚無式魔法・奈落ーーー永久なる願いを胸に秘めし陣に落とされしものの自由と意識を狩り無に全てを預けよーーー】」
仕方が無いのでプランBに切り替えます。
これは術式反転といい。術式反転とは読んで字のごとく展開させている術式を対になっている属性に切り替えることを言います。
例えば火なら水、闇なら光、と言った具合ですね
この空間魔法の反転ですと虚無魔法。
「術式反転だと!?そー………………」
「キース!ぐっ…くそっ!」
【虚無魔法】
空間を否定しその場その者を崩壊させる魔法。ダンジョン等では隠し通路、部屋を見つけ出す事ができる。
普及率
18%
あ…しまった。
発動が速すぎました
やはりぶっつけ本番で魔力の無い人間が対価を払って魔法を使うのは難しいです
上手いことシュラさんを捕まえることができなかったようです…
…ですが片足を狩っただけまだよしとしましょうか
現状は陣の中心で虚空を虚ろな目で見て動かないキースさん。こちらは成功です。
片足を陣の中に踏み込んだが即座に防御結界を展開させて片足の自由と引き換えに身を守る事に成功したシュラさん。
そして陣の外でその様子を見ている私。
と、言った具合です。
「凛!お前どういうつもりだ!?」
「どういうつもりも何も…いきなり間違いで召喚された挙句帰れないと言われてひたすら死んだ人間と勘違いされ続けて国王の影武者になれと言われたあとに誰かと結婚しろとまで言われて怒らない人がいますか?」
「それは……すまない…」
「動機はそんなところです」
シュラさんは気づいてないのでしょうか
さり気なく死んだ人間と間違われた、と言ったんですが…
「それなら…その動機ならば俺だけでいいだろ?キースは離してくれ」
「本当に関係ないと思っているんですか?正直、召喚された事自体は別に何とも思ってません」
「…は?」
「実は私は昔、幼い頃に事故に合ったんです。交通事故…と言っても分かりませんか……そうですね…馬車と馬車が勢い良くぶつかるようなものです。その時に私は家族と記憶を無くしたんです」
「え…」
驚き、戸惑い、疑問、同情、そんなところでしょうか?物凄く顔に出てますよ、シュラさん。まぁ、面白そうなので黙ってますが。
「まだ全て思い出した訳でなありませんがこの世界に来てから思い出せたんです。事故に合ったこと。両親について。兄がいた事」
「なぁ、その兄って…」
「お察しの通り零さんの事です。恐らく間違いで呼ばれたのも血がつながっていて私が兄のフリをしていたからでしょうし」
「零のフリをしていたのか?お前は女だろ」
シュラさんはまるで呆れた、とでも言うようにため息を吐いた
「女でも出来ることはありますし私には記憶がなかったんですから……それに、真実を知りたいとは思いませんか?」
「記憶が無いって理由になってないだろ…」
「まぁ、いいじゃないですか。それで、知りたくないんですか?零さんの、兄の事を」
「零の事…?どういうことだ?」
やはり食いつきますか
ならば応えなければなりませんよね?
「シュラさん、知ってますか?この術式は鎖で束縛する以外にも使い道があるんですよ?」
「使い道?」
「はい。…キースさん、今から私の問いかけに嘘をつかないでくださいね?」
「あぁ」
「…キース?」
虚ろな目のままゆっくりと顔を上げるキースさん。その姿はまるでゾンビの様……
いえ、これ以上は失礼ですね
「その前に残りも呼んでしまいましょうか」
「残りだと?」
ーパチンッ…ー
中指と親指を使って音を鳴らし合図する。
するとどうでしょう。
何処からともなく現れた黒い魔法陣から一人と二体、二体?二人?二匹?ふむむ…悩みますね…もう纏めて三人がキースさんが嵌ってる術式をよけて落ちてきました。
「リザイア!?リズにロウまで?!」
「あれ?私…」
「え?あれー?零?」
「……シュラ?なぜ?」
「皆さんには真実を知っていて欲しいので」
いきなり現れたリザイアさん達にシュラさんは困惑しているようです。
そりゃそうなりますか。
目の前の人物は魔法を使っているのに全く別の魔法を使ってリザイアさん達を出したように見えたでしょうし。
原則、この世界では魔法を同時に行うことが出来る人は人握りしか居ないと言われています。シュラさんは出来るようですがそれはかなりの練習を行った成果ですから余計に驚いたのでしょうね。
…別に私一人しか居ないとは言っていないんですから別の人がやってる可能性を考えたらいいだけなんですが…
まぁそれはいいですが…始めましょうか。
キースさんが考えた作戦をしっかりと壊して私は私の自由な未来を掴みましょう
ありがとうございました(´∇`)




