零の過去
さらっと終わって次から本編いきます
「零様、準備ができたっすよ」
「ちょっと、ロウディオ!零様に向かってまたそんな口をきいて!あれほど改めなさいと-!」
「…アーフェル、程々にな」
「はい!零様!」
仲間と過ごす最後の時間。
この世界に来た時は人間の自分達とは違ういつ襲って来るか分からない、という勝手な都合によって魔族が滅ぼされそうになっていた。子供だった俺は何も分からず、大人に従っていればいいと思ってた。
だが、それは間違いだった。
騎士見習いとして魔物(魔力を溜め込み過ぎた動物が自我を失った状態の物)を騎士達の代理で討伐していた時、小さな女の子に会った。まだ10歳位の紫がかった綺麗な蒼い肩くらいの長さの髪の綺麗な紫色の目をした女の子だ。
その子は俺達を見たとき怯えながら「お願いです!なんでもするから殺さないで」と必死に…泣きながら懇願してきた。
その理由はすぐに分かった。
彼女の額には小さな角があったからだ。
額に角があり、人と似た姿をした者を総じて魔族と呼ばれているからだ。
そして、駆除対象に入っている。
可哀想、と、思わなくも無かった
服も髪もボロボロで腕や足からは血が流れていたからきっとこの子は最近見つかったという魔族の村から逃げて来たのだろう。
騎士見習い以外の8割の騎士は三日前からその村の魔族を殺すための遠征に出かけて行ったから。今日だってその代理。
「どうする?この子」
「殺すか?」
「いや、子供だし、奴隷にでもするか?」
「あー確かに魔族の子供は高く売れるよな」
「何も教えないで魔法が使えるんだもんな」
「…………」
一緒に来ていた騎士見習い達は思い思いにこの子をどうするか話し合ってはいるが奴隷に落とされるので纏まるだろう
他の奴が喋っている中、俺はずっと話さなかった。
少し前からこの国がおかしい事に気づいていたが目を逸らしていた。そうしないとこの国では生きていけないから。今回も。
そいつ等が話す度その子の目から光が消えて表情も固くなっていく。
この顔は知っている。
絶望 不安 怒り 悲しみ 言い表せないような感情を押し殺している顔。
今まで魔族の最期は皆、この顔だった
「……ぁん………の…ぃで……」
「ん?どーした?」
「魔族が何か言ってるぞ~」
「「あはははははは」」
「なんであんた達のせいで私達がこんな目に合わないといけないの!!!!」
「「「……」」」
一瞬の沈黙
「…お前、何か言えよ」
「やだよ、お前が何とか言えよ」
ポツリと誰かが呟けばざわざわと誰かに模範を言わせようとする。流石に子供でもその異様さに気づいたのだろう唖然としている。
王国では勅命により魔族は無条件に滅ぼすべき存在と教育するようなされていた
だから誰も答えられない。
可哀想だと思っても手を差し伸べられない
それは"いけない事だから"ただ、それだけ
「…え、まさか、何の理由も無しに?私達は貴方達に何もしてないのに?こんな事をするの?そんな勝手な事で私達は……返してよ、パパとママを返してよ!おじいちゃんも!おばあちゃんも返してよ!!ロギウスを返して!私の弟を返して!皆優しかったの!何度も攻めてくる人間の冒険者にも優しかった!なのに、なんで!?なんで殺されなくちゃいけないの!?角が生えてるだけでなんで仲間はずれにするの!!」
……目に光が戻ってる
…泣き叫んではいるが
これはとても珍しい事だった。
きっとこの子も諦める最後の理由が欲しくて質問と言う名の訴えをしたんだろう。だが、最後のひと押しどころか諦められない理由に変わってしまったから、抗うのか…
面白い。それに真っ直ぐだ。
この国とは全然違う
騎士見習いのフリをしてサボるのも飽きてきてたし、ちょっと魔王にでもなろうか
小さな勇気を出した少女とその少女を逃がすために奮闘した魔族の為に、ね?
その為にはまず、色々と制限を消さないといけないな。
俺が貰った特典はチートだけど副作用がある。だから制限をかけていた。
まぁ、何とかなるか。…いや、何とかするか
ゆっくりと解除しながら少女の前に進む。
スキルの威圧で怯えているが耐えて欲しい
ゆっくりと反対を向く。
そこには唖然とした顔の騎士見習い達。
それらに向けてゆっくりと、しっかりと話しかける
「…なぁ、1分以内に俺の前から消えてくれないか?そうすれば殺さないからさ」
普段なら絶対に出さない声音にビビっている様で何人かの足が見てわかるほどに震えていた。
「…な、なんの、つもりだ?」
この一言をも絞り出すのに10秒もかかっている。こいつらの中では戸惑い、そして見習いなら当てられたことの無い威圧に恐怖しているのだろう。
「ずっと人間と魔族、どっちが正しいか考えていたんだ。自分達とは違うから迫害する王国。その中にも魔族に対して理解ある人間もいる。魔族は魔族で怯えて逃げてるだけかと思えば情報を駆使して遠征に行った騎士達に罠を仕掛けたり。結局はどっちも違う気がする。でもこの子は真っ直ぐだ。だからそれに賭けようと思ってな」
さて、
「…所でもう1分たったけど、殺すよ?」
威圧から覇者の気迫に入れ替える。
覇者の気迫は敵と認識された人には殺気を飛ばし味方と認識された人には勇気を与える、そんなスキルだ。
これのせいか一瞬で見習い達は逃げて行った
「…大丈夫か?」
「ぇ、は、はぃ」
「俺はレイシェル・フロウズ。レイって呼んでくれ」
「わ、私はアーフェル。シマフネ村のアーフェル」
「そっか、よろしくな、アーフェル」
「…はい!レイ様!」
え…レイ様?
あぁ辞めてくれそんなキラキラした目をするのは………ぅー…はぁ
「…………おう」
「………………ま…………ぃさま?」
あれからかなりたったものだな
と、これ言うとおじいちゃんみたいだ
「零様!!!」
「ぅわあ!?アーフェル?どーした?」
「どうした?じゃありません!何回も呼んだんですよ?」
初めの部分だけ似せているのか少し声を低くしていた。その後は小首を傾げながら上目遣いをしてくる。いえ、あの?アーフェルさん?貴女そんなことするキャラでしたっけ?
「零様~?準備終わってるっすよ~?」
「ぁ、あぁ!直ぐにいく」
「では、失礼します。零様」
「あぁ、頼むよ」
ゆっくりと持ち上げられる。
もう、身体強化を掛けているとはいえ、女の子、しかも、非戦闘員にも軽々と持たれるくらい軽くなったようだ。
制限解除のデメリットは老衰。
だからといって老けるわけではない。
純粋な筋力が落ちていくんだ。
魔力や魔法の威力が変わらないのが救いだな
このデメリットを無くす方法をずっと探していた。そのうちの一つはかなり前から知っていたが実行する勇気が無かった。
だってそれは別の体を用意してその中に俺の記憶と魂を入れ込むことだから。
人形ではダメなのかとアンデットやホムンクルスで試してみたがダメだった。
人や魔族の様に生きていないといけないらしい。全く、あの神もやってくれる。
目的もなにも聞かされず好きに動けば良いんだよ、と言い、笑いながら全能力を授けた馬鹿は初めからこの革命を狙っていたんだろうな…
シュラ殿下は真面目でしっかりとしていたが王がダメだった。国王の任期は死ぬまでだからそれまでにただの革命が起こったら優秀な王候補が殺されてしまう。だからといって待っていたら魔族が滅ぼされ食物連鎖や世界のパワーバランスが崩れてしまう。
なら、関係ない所からお人好しを連れてきてそいつに色々と見て回らせたら良いんじゃね?
と、いうことなんだろうなぁ…
恐らくその術中にハマった俺は見事に王を殺し革命を成功させ、全ては愚王の起こしたこととし殿下その他無関係だった貴族は無実の罪とし新たに国を作る事を宣言していた。
が、
力の使いすぎで死が迫っていた。
嫌だ。死にたくない。もっと生きたい。
やっと分かり合える仲間が出来たのに
親友と呼べる奴が出来たのに
一途に思ってくれる婚約者だって居るのに
嫌だ、
嫌だよ
死にたくない
どうすればいい?どうすれば生きられる?
探していた方法は既に分かっていたそれ以外無かった。
だから、俺は託そうと思う。
記憶と魂ではなく、一部の記憶を、思いを
そして、今まで俺が使ってきた全ての能力を
次に来るお人好しに託そう
副作用は全て俺が持って逝こうじゃないか
部屋の扉が開かれてそっと陣の中に降ろされる。
今から零は死ぬ。
だけど記憶は受け継がれる。
意志は消えない
なら、それでいいじゃないか。
さぁ、俺の最期の魔法を始めようか
「…ロウディオ、次に来るやつのこと、頼むぞ。アーフェル、色々とお前のお陰で踏ん切れた。……シュラ達にも何時か伝えてくれ」
「-----------」
「零様っ!」
「零様!やっぱりこんなの嫌っすよ!」
あぁ、もう、泣くなよ
最期くらい笑って別れようぜ?
二人が陣に入らないように結界を張っておいて正解だった。陣には少量の魔力を垂らすだけでいいから、それ以外の魔力を全てそこに注ぎ込んだ。
二人は泣きながら結界を殴っている。
ロウディオに至っては武器まで使ってる
…シュラやリザイヤは、来ないのか
キースは伝えなかったのか?
あぁ、
視界が白くなっていく
そうか、
これが死ぬって事か
こ わ い な
最期は仲間に見送られ光と共に消えた
零
享年19の若さでこの世を去った
最期の言葉はおいおい出てきます。
何げにこの話の鍵です(^^;
次回は主人公頑張ります。




