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第三幕 第二場

「す、すごい」あまりのすごさに俺は口を大きく開ける。

 描写されたホログラムの映像。それは地球らしき青い星だったが、衛星と思われる月が二つ存在している。明らかに地球ではない別の星だ。


「これはベファルト星」

 委員長が映像を手で指し示す。

「私達のふるさとよ」


「……ベファルト星」

 子供のように目を輝かせた俺は、ベファルト星のホログラムに釘付けとなっている。


「この地球から一六一八光年ほど離れた銀河にある星よ。私達ベファルト星人は高い科学技術をもって宇宙へと進出し、星々の隅々まで支配下においたわ。無論この地球も例外じゃない」


「なんだって!」

 俺は驚きの声をあげた。

「この地球がベファルト星人によって支配されているとでも言うのか」


「支配、と言うには少し語弊があるかしら。この星の言葉、特に日本語は難しくて大変なのよね。そうね……正確に言い表すとすれば監視にあたるかしら」


「監視?」


「ええ、そうよ」

 委員長はうなずいた。

「私達の目的は宇宙に存在する知的生命体の保護と監視。あなたがた地球人が知的生命体としてこの宇宙生命体連合の一員にふさわしいかどうか、それを見極めるためこの星に派遣されたのが、私と彼なのよ」

 そう言うとユウスケを手で指し示した。


 ユウスケが親指を立てて得意げな表情を見せた。おどけるこいつがこんなにもすごいヤツだったなんて信じられん。


「宇宙なんたら連合の一員にふさわしいかどうか、見極めると言ったな。それはどういうことなんだ?」


「あなたがた地球人は私達ベファルト星人と同じように、いずれ科学の力をもって宇宙へと進出する。その際、地球人が他の宇宙生命体を迫害し、この宇宙に混乱をもたらすような危険因子となるか、それとも私達と手を取り合い、宇宙の平和に協力しうる存在なのか判断するのよ」


「ええっと……つまり敵か味方か区別するってこと?」


「簡単に言えばそうなるわね」


「でもどうしてわざわざそんなことをするんだ? 俺を透明人間にするほどの高い科学力をもっているなら、見極めるなんて面倒な事をせずに普通は地球を支配するだろ。お前達から見たら人類なんて家畜も同然なんだから」


「シンゴなんだよそれは」

 ユウスケが苦笑している。

「くだらないハリウッド映画の見過ぎじゃないか。僕たちがそんな野蛮な生き物に見えるのかい?」


「違うのか?」


「あたりまえだろ。僕たちはそんなことするつもりはないよ」


「そうよシンゴ君。今のところ私達に地球人をどうこうしようなんて意思はないわ」


「ちょっと待ってくれ委員長。今のところ、と言ったな」


「ええ、言ったわ」


「それって後々どうにかするつもりなのか?」


 委員長はうなずいた。

「この宇宙にあまた存在する知的生命体の中で、私達は地球人を特別視している」


「どうして?」


 委員長は握った拳を目線の高さまで掲げると人差し指を立てた。

「まず第一に、地球が私達のベファルト星に酷似している事」

 そこで中指を立てる。

「第二に、地球人と私達の姿がこれまた酷似している事」


 たしかにこの二人はどっからどう見ても地球人にしか見えない。そして目の前に描写されているホログラムに写る青い星。月が二つなければ地球だと勘違いしてもおかしくはない。


「そして第三に」

 委員長は薬指を立てた。

「私達と同じような環境、同じような姿をしているにもかかわらず、地球人の科学進歩は恐ろしいほど早い。早すぎるといっても過言ではないわ。私達が数億年以上かけていまの高い科学力を身につけたにもかかわらず、地球人はたかだか数千年の歴史でここまでの科学力を身につけてしまった。特にこの百年間の科学進歩はめまぐるしく、あと数百年あれば私達の科学力を追い越しかねない」


「そうなのか。そんなに人類はすごかったのか」


「ええ、そう。だからこそ地球人は私達にとって特別なの。この宇宙の真理を知るために必要な存在」


「宇宙の真理?」


「なぜこの宇宙が存在し、知的生命体が生まれたのか。私達はその謎を必死になって探っているけれど、その答えはまだわからずじまい。だからその答えにたどり着くために、将来的に人類が得るであろう高い科学力と知識に期待しているの」


「それでお前達は、俺達地球人を見守っているっていうのか?」


「……ええ、そう」

 委員長はそこで一呼吸間を置いた。

「それと同時に人類がその力を持って宇宙を侵略しないかどうか見張っているの」


「俺達地球人が侵略?」


「人類の歴史を見ればその危険性は一目瞭然でしょ」


「……たしかに」

 人類の歴史は闘争の歴史と言っても過言ではない。常に戦争があって、いまなお世界のどこかで戦争が起こっている。


「これでわかったでしょう。私達にとって地球人は天使であると同時に悪魔なの。善意を持って福音をもたらすか、悪意ですべてを蹂躙するか、それを見極めなければならない。もし、いまここで人類に手を出せば悪意は食い止められる。けれどそれど同時に善意がもたらすであろう宇宙の真理にはたどりつけない」


「……なるほど。なんとなく言いたい事はわかったよ。つまりは俺達は未来ある子供ってことなんだろ」


「子供?」


「将来優秀な大人になるか、残忍な大人になるかわからない子供だって事さ。大人になるまでその答えはわからない。だから大きくなるまで大切に保護しているんだろお前達は」


 委員長はくすっと笑った。

「おもしろい例えねシンゴ君。宇宙人による地球人の子育て。あながち間違ってはいないわ。私達は大人が子供を守るように、地球人を守っているもの」

 そこで委員長は表情を険しくさせる。

「ヤツらから」


「ヤツら?」


「地球人が手厚く保護されているのを面白くないと思っているヤツらがいる。もともとそいつはら私達、宇宙生命体連合との協調を拒否し、自分勝手に宇宙を荒し回っている悪い宇宙人。宇宙海賊のことよ」


 俺の頭の中でパズルのピースが次々とあてはまっていく。

「まさかそいつらが彼女を!」


「察しが良くて助かるわ」

 委員長は床に落ちている写真を拾い上げて俺に見せる。

「ケイちゃんをさらったのはヤツらなの。いえケイちゃんだけじゃない。たくさんの学校の生徒が捕まって監禁されているわ」


「なんだって!」

 衝撃の事実に俺は驚愕する。

「他のみんなも捕まっているだと!」


「ええ。ヤツらは放課後、この学校にやってきた。そして校内に残っていた先生や生徒達を拉致監禁し、この学校の体育館に立てこもった」

 委員長はそう言うと、ユウスケに顔を向ける。

「ユウスケ君お願い」


「まかせてミヨ」

 ユウスケは返事をすると、ホログラムを描写しているノートパソコン型の機械をいじりだす。するとホログラムはベファルト星の映像から、ニュース番組らしき映像に切り替わった。聞こえてくる言葉は日本語。おそらく地球での日本のニュース番組だ。


 緊急速報のテロップとともにニュースキャスターが緊迫した面持ちでしゃべっている。ワイプ画面には自分が通っている見慣れた学校が小さく映っていた。あなりは真っ暗で回転灯らしき赤い光が学校の周囲を包囲している。


「……俺達の学校だ」

 俺はホログラムの映像にぞっとする。

「いったい状況はどうなっているんだ?」


「手短に説明するわねシンゴ君」


「頼む委員長!」


「私達の学校が謎の武装集団に占拠されてしまった。この状況を打破出来るのはあなたしかいない。以上」


「……え。説明はそれだけ?」

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