7 花園に投げ込まれた布石
その頃、トレーニングルームでは、
藍が他の4人に向かって、ある提案をしていた。
「ねぇ、みんな。今日の夕食の時、
ベルちゃんの歓迎会をやるのはどう?」
「いい考えだよ、藍くん。俺にも準備を手伝わせてくれ」
騎士は即座に同意した。
「パーティーやるのは結構ですけどね、姐さんたち。
おふたりはアナベル歓迎ムードなんすか?」
「そうだよ、蘭子くん。何故拒絶する必要が。
我らの美しい花園に、新たな蝶が迷い込んできた。
なんたる僥倖。ただ行く末を見守るだけでいい。
その蝶の行き着く先が、かぐわしい花であるか、
はたまた猛毒植物であるか。
エキサイティングな賭けであろう?
どちらであっても、あるがままに受け入れるのが俺たちの役割さ。
仮に彼女自身が悪の華だったとしても、それはそれ。
楽しませてもらおうではないか」
「蘭子は違うの?」
「あぁしたちと同じ能力を持った子が、たまたまジャジャーンと現れた。
はい、仲間になりますなんて、都合がよすぎると思わないっすか?」
「わたくしも今回ばかりは、蘭子に同感ですわ。
あんな場所にタイミング良く現れたんです。
計算しつくされた偶然に思えます」
椿は蘭子と同意見のようだった。
「ボ、ボクはまだどちらとも言えないな。
確かに怪しく見えるところもあるけど、
でも何か悪さをしたわけではないんだ。
まだ判断するのは早過ぎると思う」
純は結論を保留した。
自分に割り当てられた部屋で一人きりになったアナベルは、
情報端末を前にしていた。
画面には、銀色の髪の中年男性の姿が写っている。
「長官、しばらくここに滞在できることになりました」
「ご苦労。以後、君には少女たちの監視を行ってもらう」
「彼女たちはとても従順に任務をこなしています。不安になるくらいに。
今のところトラブルの気配もありません。何かに気付いている様子も」
「そうか、無理もないことだが。今はただ彼女たちの行動を見守るだけでいい。
しかるべき時が来るまでは」
「……了解」
通信を終了させると、アナベルはイヤホンをかなぐり捨てた。
本部のやり方は生ぬるい。
できることなら、今すぐにでも……。
アナベルは首を横に振った。
『余計なことは考えるな、相棒。今なすべきことに集中するんだ』
養父の口癖だった。
今やらねばならないこと。
それは彼女たちの信頼を勝ち取ること。
少女たちはまだ本当のことを知らない。
誰かにとっての不都合な真実であったとしても、
少女たちには知る権利がある。
さもなければ、彼女たちはただの『道具』になってしまう。
財団のやり方は気にくわない。
だが当面は、おとなしくいい子ちゃんを演じてやろうじゃないの。




