6 二律背反
「どういうことなの、アナベル! あなたがここにやって来るなんて!」
「そうガミガミ言わないでよ、ユキ。
あたしなら女子高生になりすませる。
その方が、あの娘たちにも受け入れられ易いかなって思ってさ」
「何が目的なの?」
ユキの目つきがきつくなった。
「別に……あたしと同じ娘たちを、
この目で見てみたかっただけ」
部屋に飾ってあったピオニーの花の向きを変えながら、
アナベルは事前に考えてきた言い訳をした。
豪華なフリルドレスのような見た目に違わない、
至福の香りを吸い込む。
「財団は知っているの?」
財団とは、このイベリス学園の出資団体、キャンディタフト財団のこと。
教師である瑞花ユキは、財団から派遣されてここに来ている。
「一応は彼女たちを監視するためって名目で、派遣されてきたんだ。
ユキだって知っているでしょ?
彼らは常に全てを掌握しなければ気が済まない」
「私だけじゃ頼りないってこと……か。なんだかなぁ」
「そう落ち込まないでよ。
あの娘たちは今のところ何も悪いことはしていない、でしょ?
でも、少しでも財団に逆らうようなまねをしたら……わかるよね?
そうならないようにわたしも協力したい。
同じ能力のせいかな? 他人ごとじゃないんだよね。
だからここに置いてよ、『ユキ先生』」
ユキはしばらく迷ったあげく、アナベルをまっすぐ見据えた。
「いいわ……当然だけど、このまま学生の振りは続けてもらいます。
あなたが財団から来たことは、彼女たちにばれないようにしないと」
「オーケー、こっちもその方が都合いい」
ひとりになったユキは小さくため息をついた。
長官は事前に何も伝えてくれていなかった。
ユキの職務は、財団の職員として、少女達を管理すること。
それとは別に、教師である自分もいる。
戦うことを義務づけられた不憫な少女たち。
最善の道を選べるように、気をつけてあげてきた。
それが逆に財団の不興を買っていたのか。
ユキがここにいられなくなったら、
少女たちはどうなってしまうのだろう。
そんな未来は想像もしたくない。




