5 螺旋の楼閣
巻き貝のような建物。
それがイベリス学園の校舎兼学生寮だった。
学園の内部は、螺旋状の通路が最上階まで続いている。
天窓から差し込む太陽光が、瞳を射る。
学校らしく、陽光あふれる明るい環境。
アナベルはめまいがした。
決して抜け出せない螺旋の楼閣。
そんな気がしたから。
藍が、学園内を案内してくれた。
1階玄関ロビーの正面は大食堂。
他は、教室として使用している大小の部屋が並んでいる。
「2階はわたしたちの個室になってるの。
ベルちゃんも空いてる部屋、使わせてもらえばいいからね」
「……個室、もらえるんだ」
アナベルは安堵した。
「わたしたちはみんな仲いいけどさ、
やっぱ一人になりたい時ってあるでしょ?」
「うん、わかる。プライベート空間ね」
藍の瞳は、輝いていた。
同志を見つけた喜びからか。
「だけど、意外だな。わたしたちみたいな子が他にもいたなんて」
「……うん、あたしもここのウワサ聞いてからさ、
ここの娘たちに、絶対会いたいって思ってたんだ」
螺旋通路の壁には、この学園の創設者の
高嶺草介氏の写真や、
学園の出資団体キャンディタフト財団の、
設立メンバーの写真などが飾られていた。
アナベルは、そういったモノのひとつひとつを
たいそう念入りに眺めていった。
3階は、トレーニングルーム。
そこには、他の少女たちが集まっている。
「あら、藍、アナベルさん……」
椿は、金属のハンドルを開いたり閉じたりしている。
「ベルって呼んで。……すごい設備だね」
「ああ、おふたかた、やっとお出ましかい。
壮観だろ? 最新鋭のトレーニングマシンが、一通り揃っている。
ベルくんもちょっと使ってみるといい」
騎士は、剣の稽古をしていた。
「うん、後でね」
「アナベルさんってさ、外国出身なんでしょ?
テキサスっていうところ? どんなところ?
ボクたちさ、海外旅行したことなんてないし、
いろいろ聞きたいな……写真とかあったら見たい……」
純が、帽子のつばの下から言う。
アナベルは少女たちから質問攻めにあった。
外国に興味があるのもさることながら、
外部から誰かがやってくること自体が、この学園では珍しいことに違いない。
ただひとり、蘭子だけはマシンに夢中になっているようで、
話の輪に入ってこない。
ノリのいい蘭子にしては珍しい現象だった。
そこにユキがやってきた。
「あなたたち、もうじき昼食の時間だから、下へ行きなさい。
アナベルさん、あなたは食事の後に私の部屋まで来て下さい。
さっきも言ったけど、ちょっと聞きたいことがあるの」




