32 花、舞う
ついにドアが破られ、大量のバーリックがなだれ込んできた。
静まりかえったトレーニングルーム。
暗闇の中、鈴の音が転がる。
次に聞こえたのは、風切り音。
頭上から降り注ぐ刃。
静寂を切り裂く藍の矢と椿のカード。
蘭子の鈴の音に乗って、スピードが増す。
壁沿いの螺旋通路から頭上を埋め尽くすように飛び交う刃。
やつらに逃げ場などない。
空中で弧を描くように展開された椿のカードは、
椿の花に変化する。
渦を巻いて飛んでいく赤と黒の椿の花。
花の渦は次第に勢いを増し、バーリックたちを包み込んだ。
コトが済んだ後、点々と地面に落ちる椿の花。
藍が放った矢は、星型の花に変化する。
紫の花のシューティングスター。
動きを止めたバーリックたちは夢心地のままで……爆ぜ散った。
室内は再び静まり返る。
一瞬の後、床に散らばった花びらを踏みしだき、やって来た第二陣。
螺旋通路の下に隠れていた騎士と純が飛び出す。
つま先立ちスピンする純。
鞭の軌跡は白い小花と一緒に円の軌道を描く。
可憐な姿とは裏腹に、強力な毒とともに周囲の敵は倒された。
舞い散る野バラの花びらの中、冴え光り現れる銀色の剣。
今度は騎士の番だ。
「ひとつ、ふたつ!」
騎士が次々に切り伏せる。
次の相手がやって来た。
騎士の目前で突如、
干からびたバーリックの右手が青白い光を帯びる。
それはみるみる変形していき、剣の形になった。
「おや? その手は、俺に合わせてくれたのかな? いいねぇ」
騎士は、しばらく変形手のバーリックの相手をする。
組み合う剣と剣。
だが優勢なのは騎士。
組み合ったまま一気に壁際に追い詰めると、さっと間合いを取る。
その後は、一瞬のできごとだった。
騎士が左手のダガーでバーリックの剣を押さえ込み、
その隙に右手の愛剣ブラックナイトが、バーリックの胴体を貫いた。
剣先のような菊の花弁だけが後に散る。
次回更新予定は、10月23日金曜日23:00です。




