29 モニタージャック
「あんたか。今度は何?」
アナベルは焦れた。
月来 香。
ふたたび謎めかして登場したが、
前回の登場時から、たいして事態は好転していなかった。
「何処へ行くの?」
「あいつらにガツンと言ってやらなきゃ。必要とあらば、実力行使も」
「待って、待って。今ひとりで行っても、財団の入り口で捕まるでしょうよ?」
「あぁ、なんかユキが言ってた。マリヤ機関のこと、バレちゃったみたい」
「でしょ? あの娘たちを救いたいなら、自由の身でいなければ。
ねぇ、私に考えがある。財団は違法な事をやっている。
あなたは今までに得た情報を持って、マリヤ機関の職員として動きなさい。
外側から圧力をかけるの」
「あんたはどうする?」
「私は会わなければならないヒトがいるの」
アナベルはひとたび考慮したのち、ふっと微笑んだ。
「今度会ったら、あんたのこともっと聞かせて。養父のことも」
「そうね、今度会ったら……」
香の顔に寂しげな影が落ちたことに、アナベルは気付かなかった。
藍がトレーニングルームに戻ってくるのとほぼ同時に、
そこにある全てのモニターが一斉に点灯した。
画面に映ったのは、一人の女性。
黒い瞳に、深い緑色の髪。
「こんばんは、みなさん」
「どなた?」
「なんでうちの学園に……ハッキング?」
「椿さんと純さんの疑問も当然ね。
怪しい者ではないわ。と、言っても信じがたいかしら。
私は月来 香。
あなたたちの……先輩みたいなものかしら。
みなさん、そろっているみたいね」
「ひとりいないっすよ。あいつ、どこ行った?」
「大丈夫よ、蘭子さん。アナベルさんなら、先ほどお会いしました。
私がお遣いを頼んだの」
「俺たちの先輩……ということは、この学園のOGですかな?」
香はクスッと笑った。
生徒たちの矢継ぎ早の質問に、圧倒されたから。
そして、自分がこの娘たちを教え導く立場になれていたら、
どんな未来が訪れていたのだろう。
この局面でそんな想像をした、自分自身を諫めるための苦笑いでもあった。
「質問が多いわね。でも騎士さんの質問にも答えるわ。
学園の先輩というよりは、あなたたちと同じ使命の元に
この世に生み出された存在といったところね。
あなたたちのことは、高嶺さんから頼まれていたの。
いつかこんな日が来ると、彼には解っていたのね。
今から大事なことをお話します。
あなたたちが知っておかなければならないこと。
キャンディタフト財団と提携しているナイタブエース社は、
あなたたちを軍事利用しようとしている」
次回は、10月16日金曜日23:00更新を予定しております。




