28 衝突
アナベルがエレベーターを降りると、
ちょうど隣のエレベーターも開いたところだった。
降りてきたのはユキ。
心ここにあらずの様子でフラフラと歩き、
アナベルの声でビクッと立ち止まった。
「ユキ先生、どうかした?」
問いに答える代わりに、持っていた銃をアナベルに向ける。
「ちょっ、ちょっと、どうしたの?」
「何が目的なの?」
「あたし? 前にも言ったでしょ? 財団から派遣されて……」
「違う! ……マリヤ機関から来た……エージェント。
毬屋・サンライト・アナベル。名前で気付くべきだった」
降参と言わんばかりに両手を挙げるアナベル。
「ばれちゃったか……そう、養父が設立した機関だからね。
ユキ、それを下ろして。あなた、銃なんて撃ったことないでしょ?」
ガタガタふるえて、照準が定まらない。
「こ、こっちこないで! ほんとうに撃ちますよ!」
だが、アナベルはゆっくりと近づくと、がっしりと銃身をつかんだ
「撃つときはここにこう……狙いを定めて」
銃口を自身の胸に押し当てるアナベル。
「それに、目を閉じていたら当たらない、でしょ?」
「うっ……」
ユキはヨロヨロとその場に座り込んだ。
アナベルは学校の門をくぐる。
自分でも驚いたことに、いったん振り返った。
未練? そんなものが自身の内側に湧き上がるとは、想像もしなかった。
あの娘たちと過ごす時間が想像以上に楽しくて、
手放したくなかったのだろうか。
競い合うように咲く、花たち。
一緒に笑い励まし合い、時にはケンカもした。
でも、もう潮時だ。
あの娘たちからそんな未来を奪うものと、対決しなければ。
とうの昔にやらなければならなかったことを、やりに行こう。
通りの向こうに止まった車の中から、女性が手招きしているのが見えた。
次回は、10月14日水曜日23:00に更新予定です。




