22 最後の仕上げ
「大変です先生! また、患者が暴れています。
今度は203号室の患者です!」
ここはとある病院。
203号室から聞こえるのはこの世のものとは思えないうめき声。
ガラスが割れる音も聞こえた。
「拘束しろ! ……まったく何が起きている? これで3人目だ。
この患者の荷物は……これだな?」
「先生、勝手に調べるわけには……」
「いい、私が責任をとる……これは?」
患者のカバンには注射薬が入っていた。
「『レーズンブロリック』? こんな薬、聞いたことがないぞ」
「どこで手に入れたんでしょうね?」
「それを聞きたくても、これでは」
ベッドに拘束された患者は、まだ暴れようとしていた。
と、いうよりも自身の意志がまるで働いていないように見受けられた。
手足が勝手に動いてしまう。
口からは言葉にならない声がもれ、
目はカッと見開かれていたものの、
焦点は合っていないようだった。
キャンディタフト財団のビルの一室。
桜子は、隣の部屋でつけっぱなしのテレビの音声をキャッチした。
遠くのわずかな物音も聞き逃さない、そんな性質だ。
『昨日、メグモプライムショッピングモールで発生したバーリック。
偶然居合わせたイベリス学園の生徒たちによって退治されました。
しかしながら、見物していた子供が2階から落下して死亡するという
痛ましい事故が起きてしまいました。
イベリス学園の生徒たちの行動に問題はなかったか、
管理体制を問う声が高まっています』
椅子の背もたれに深く沈み込んだ。
「人間とは、かくも身勝手なもの。いいかげんお前たちも理解しただろう?
さぁ、仕上げといこうじゃないか」
ずり落ちてきたヘッドドレスをむしり取る。
このほうが、断然いい。
「より苛烈に修羅の如く、暴虐でこの世を満たすのだ。
そしてわれわれを利用し裏切った人間たちに、思い知らせてやろう。
われわれこそが強者だと」
この先のことを考えると、笑いがこみあげてくる。
桜子は、天井を仰ぐ。
ヴェールで隠れていた頭部は今や、むきだしになっていた。
顔があるはずの部分にあるのは、暗い空洞のみ。
顔面のない人型の機械が、そこにいた。




