19 戦士の覚悟
ニコニコ広場は、破壊の轟音と、逃げ回る人々の悲鳴で騒然としていた。
バーリックが出現したのだ。
「出る!」
真っ先に飛び出したのは、アナベルだった。
二丁の銃を操り、広場の端を円形に移動する。
広場の外にいた他の買い物客を近づかせないためと、
バーリックたちをある場所に誘導するためだった。
丸い花の塊の銃弾は、命中すればバーリックの身体を消滅させる。
撃ちもらしたバーリックが、うめきながらアナベルの後を追ってきた。
さっき買い物をしていたときに目をつけたあの場所。
アナベルは、狭い通路に飛び込み、
引き金をひきながら、ジリジリと後退していった。
その先に仲間が待ち構えている。
バーリックがついてきたのを見届けてから、
アナベルはさっと横道に退避した。
「お願い!」
次にバーリックが目にしたのは、
剣の柄に手をかけた騎士と、
その後方で藍が構えた鏃。
「やぁ、君たち。次は俺とお手合わせ願うよ。
我が名はイベリス学園所属 観菊 騎士。
自堕落なる夢をむさぼる貴殿たちを、
わが相棒ダークナイトのサビにしてくれよう!」
騎士は口上を述べると、
愛剣『ダークナイト』を鞘から引き抜いた。
1番手前にいるバーリックに狙いを定める。
「最初はきみだね? いいよ、選ばせてあげる。
刺創と裂傷、どちらがお好みかい?」
バーリックは無言で突進してくる。
パリーイングダガーがバーリックの右手をなぎはらい、
よろけたところをブラックナイトが襲いかかる。
「つっ……今日のは、しぶといな」
騎士はレイピアの切っ先を次の敵に向けたまま、愚痴る。
それでもしなやかに軽やかに、刻む切っ先は次々と敵を仕留めていった。
切り捨てた後には、菊の花びらが舞う。
「ねえ騎士、前からずっと聞きたいと思っていたことがあるんだけど……」
藍が、矢をつがえながら尋ねる。
「今……かい?」
「うん、いい機会だからさ。
どうして、ジャケットに袖を通さないの?」
騎士は、いつでも学園の制服のジャケットを肩から羽織っていた。
彼女が飛び回る度に、風をはらんではためく。
「おや? 気になるかい?
何故かといえば、このほうが……かっこいいからに決まっているだろ?
それに……この姿は俺自身の覚悟を表わすものだよ。
最前衛に立つ戦士としての。
いいかい? こと、戦場において背中を見せてもいいのは、
味方と既に屈服させた敵だけだ。
風をも従える俺の勇ましい後ろ姿を見て、
騎士がいるから大丈夫、騎士が味方でよかったと思って欲しいんだ」
先頭に立って敵陣へ切り込む。
騎士の後ろ姿は味方への鼓舞、旗印だった。
「次!」
左側にいた2体目をブラックナイトの柄で殴りつけると、
そのまま右前に腕を伸ばし、3体目の胴体を刺し貫く。
その間に他のバーリックが、脇をすり抜けていく。
「藍くん!」
「任せて!」
放たれた矢は最高点に到達すると、複数に分裂する。
そして紫色の星となる。
きらめく星を見上げるバーリック。
つぎの瞬間……星が放出するガスで消滅した。




