18 落ち込んだ時は甘い物
少女たちは、一通り買い物を終え、ゲームセンターで遊び、
ジェットコースターにも乗った。
はしゃぎすぎで声は嗄れ、
お腹をすかせて、ニコニコ広場へと戻ってきた。
フードコートで食事を楽しんでいると、藍が急に立ち上がった。
「あれ? ケンちゃん? ケンちゃん!」
広場の向こう側に突っ立っている男子学生に向かって、
駆け寄っていく藍。
「ケンちゃん?」
「ん? 誰?」
男子学生は、藍に声をかけられて驚いた様子だが、
話し相手になることを決意したようだった。
「わたしだよぉ、藍……会うの、久しぶりだもんね。
フフ、わたしそんなに変わったかな?」
「はぁ? もしかしてナンパぁ? 困るな、俺。今……」
男子高生が言い終わらないうちに、一人の女子高生が
背後からやってきた。
「ちょっと! あんた誰?」
藍に食らいつきそうな勢いだ。
男子高生と同じ学校の制服を着ている。
女子高生は、珍しい生き物を見るような目で、
藍を頭のてっぺんからつま先まで観察した。
「この子、知ってる子?」
「いいや……なんか知らんけど俺に話しかけてきてさ。
……俺に一目惚れしたとか?」
「馬鹿な!」
「ちょっとぉ、『馬鹿な』ってことはないじゃん。
ユカちゃんだって俺に一目惚れだったでしょ?」
「ウフッ、そんなこと言ったっけ?」
ふたりはじゃれつきながらどこかへ行ってしまった。
呆然と立ちすくむ藍をひとりその場に残して。
「ありゃりゃあ、こいつぁ大変だ」
遠くからこのやりとりの行方を見ていた蘭子が小声でつぶやく。
「蘭子、写真見たんでしょ? あれが藍の?」
アナベルの組んだ足のつま先が、イライラと揺れた。
藍のことは心配だが、
任務以外のことで、少女たちを動揺させるのはやめてほしい。
「うん、藍の彼氏のケンちゃんさん」
「これはこれは、嵐がやってきそうだね」
騎士は、心配そうに眉をひそめる。
やがて藍が、とぼとぼと席に戻ってきた。
気の毒そうな顔をしている友人たちの顔をまともに見てしまうと、
涙があふれそうで、ワザと遠くを見つめながら。
「ハ、ハハッ……みんな見たでしょ。
あたし、ふられちゃったみたい」
「藍、その……わたくしたちも残念ですわ。気を落とさないで」
「うん、なんとなくね……わかっていたんだ。
もう、ずっと会えてなかったから……向こうからは連絡もなかったし」
アナベルは、組んでいた足を下ろすと、ガタッと立ち上がった。
心の中で渦巻いている、ある思いを振り払うため。
「ねぇ、みんな、あっちにあった店見た?
クリームパン専門店『あ、らっ? クリーム!』だってさ。
覚えやすいネーミングじゃん? アッハハハ」
落ち込んだ気分に、甘い食べ物は最良の薬だ。
それは他の少女たちも、知っている。
少女たちが『あ、らっ? クリーム!』で商品を選んでいると、
広場の方から悲鳴が聞こえた。




