13 カレイドスコープ
目まぐるしく表情を変える半透明のパズル。
光の輪舞曲はエンドレス。
軽やかな音楽が流れている。
藍は大きな鏡の前にいた。ここはダンススタジオ。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
倒れ込むようにして床に座る。
何度練習しても上手くいかないステップがある。
来月のオーディションに向けて
もっとブラッシュアップしておかなきゃ。
膝の上で組んだ腕に突っ伏した。
アイドルオーディションに応募するようになってもう2年。
別の道を探した方がいいと言われたこともある。
でも……まだ諦めるのなんて早い。
キッと顔を上げた。
周囲の光景が、さっきまでとは様変わりしていた。
鏡に囲まれているのは同じ。
でも、ここは……
イベリス学園のトレーニングルームだった。
警報が鳴り響く。
『バーリック襲来! バーリック襲来! 各員配置につけ!』
気付けば、トレーニングルームの入り口にまで
大量のバーリックがやって来ていた。
小さな入り口に我先にと群がり、無理矢理中へ入ろうとしている。
「そんな……こんなところにまで」
無我夢中で螺旋通路をかけ上がる。
上の階にある部屋のドアを開けた。
ドアの向こうは、また鏡。
カレイドスコープを回した時のように、
現実と幻想の狭間に落ちた。
年配の男性が、かたわらに立っていた。
なんとなく見たことのある人物。
「君は……私の子供たちのひとりだね」
この人はなんで、こんな言い方をするのだろう。
「こうして会うのは久しぶりだからね。
私の名は憶えているかい?高嶺 草介だ」
初めて会ったのになんで?
「この学園の創設者……ですよね?」
「ん? そういうことになっているのだね」
「こんなことしてる場合じゃないんです、
バーリックがそこまで迫ってきています。
早くなんとかしないと!」
「やつらのことなら放っておいて大丈夫だ。
それよりも、君に大事な事を伝えるため私はここに来たんだ」
「大事な……事?」
「あぁ、財団を信用するな」
「なんで……」
高嶺の瞳には、陰りが宿っていた。
悲嘆……憤懣……そして焦燥。
「最後まで聞いてくれないか。もう時間がない。
君たちは自分が何者であるのか、
なぜ、ここに存在するのかを考えたことがあるかい?
これから君達は本当の『それ』を知ることになる。
たとえば『それ』がどんなにつらい事実でも、
君たちは向き合わねばならないよ。
私のせいだ。あの時、私がもっと気をつけていれば……
自分の不甲斐なさに、いらだちを覚える。
だが……今となってはもうどうにもならない。
ひとつだけ、とっておきの呪文を教えてあげよう。
『爛漫少女の花道は……』
これは君たちのお守りだ。君にも教えたはずだよね。
最後の一字まで思い出したら、
心の奥底にしまって、とっておくんだ。
必ず必要になる時がくるからね」
そこまで言うと、高嶺の姿は消えていた。
そしてまた、場面は変わる。
自分が立っているのが、
ホテルの入り口であることに藍は気付いた。




