11 クラッシュ
「ちょっ、アナベル! 何をするんすか。
おかげで閉じ込められちゃったじゃないっすか」
「わたしのせい?
あんたがボヤッとしていたから、
しかたなくわたしが撃ったんでしょ」
「へへんだ。余計なお世話っすよ!
アナベルが手を出さなければ、あぁしひとりでも倒せました」
「なんだって? 本気で言ってんの?」
「何度だって言うっす。あぁし一人でもやれました。
余計なお世話!」
「ああ、あんたってほんとムカつく!
いつまでもキャンキャンキャンキャンわたしに喧嘩売ってさ。
わたし何か悪いことしたっけ?」
「あぁしも、あんたさんにムカついているっす。
いつの間にか仲間の一員みたいな顔してね。
ここを直せ、あれをやめたほうがいい、って口うるさく言ってきて。
あぁしら5人でうまくバランスとってやっていたんすよ。
それを後からやって来て……
上手く耕し終わった畑を、
土足で踏み荒らされている気分っす。
アナベル、あんたさん、どこの組織の者です?
この蘭子さんの目は節穴じゃあないっすよ」
アナベルは一瞬たじろいだ。
「なっ、急に、何言い出してんのよ。
よくわかった。あんたがその気なら……」
「その気なら? やる気っすか? いいでしょう、おもてに出ろっす!」
「お、お姉ちゃんたち……僕たち、ここに閉じ込められてるんだよ。
先に脱出する方法考えなきゃ。ほら、見てよ」
少年が指さした地面には、じわじわと水が溜まってきていた。
やがて海水は少女たちの膝の高さにまで及んだ。
「ちょっとあぁし、思いついたことがあります。
またユキ先生にドヤされるかもしれないけど……
坊や、耳をふさいで!」
「ちょっと蘭子! 無茶はやめて!」
アナベルの悲鳴もむなしく、蘭子は鈴を振った。
洞窟内部に響き渡る鈴の音。
地面がボロボロと崩れ落ち、
洞窟内の海水は、その穴に向かって流れ落ちていった。
海水ばかりではなく、3人も吸い込まれるように落ちていく。
「わぁっ、うわあああ……」
「坊や! あぁしにしっかりとつかまるっすよ!」
海水に押し流されて、3人とも穴の中に。
地下には空洞があり、下には水流が見えている。
落ちていきながら、ベルは水流に向けて何発か発砲した。
発射された花の塊を寄せ集めて、筏がわりにしようというのだ。
「ふたりとも、これに乗って!」
3人は筏に飛び乗った。
「すっげえ、すっげえ」
少年は大喜びだ。
安堵したのもつかの間、今度は目前に滝壺が迫りつつある。
「姿勢を低くして!」
筏はスピードを上げて、水しぶきのけぶる先をめざす。
蘭子は思わず目を閉じた。
「もう……おしまいだ……」
ついに静寂が訪れた。
さっきまでの激流からは解放され、静かに揺らいでいる筏。
蘭子は思い切って目を開いた。
空はオレンジ色に染まり、太陽は隠れようとしている。
3人が乗った花の筏は、静かな海の上にいた。
「ね、お姉ちゃんたち、すっごくおもしろかったよね。ね?」
「なんとかなったみたいだね」
「ふひぃ、助かった。アナベルにしてはうまいことやりましたね」
「あたしにしてはって……あたしがいてよかったでしょ?」
「んんん、まあ……それで、脱出できたのはいいっすけどね。
ここはいったい……どこなんだぁ!!」
蘭子の叫びは空に消え、
返ってくるのは、波の音だけだった。




