組織の日常 『桜舞う』
桜舞う
桜が咲く。
この学校に来てから、もう三年。
最後の学年もアデーレと一緒に過ごすことができた。
他の子達が受験勉強をする中、私は、通信教育でハイスクール卒業資格を取ることを決めた。
高等教育は既に自習で終わりつつあって、そして、もうこれ以上表の世界で普通の女の子として生きることが、難しく感じていた。
私がいる場所は、アデーレ達がいきている場所ではない。
クライシスのことだけではない。
幼い頃に『神』を宿してしまった私の感性は、人間のそれとは少し離れてしまっている。
それを抱えて、隠したまま生きるのは…正直、辛い。
今の、温かい闇の中で、私は、時を待つことにした。
「卒業おめでとう、アデーレ。そして、合格おめでとう。この学校から『アカデミー』進学者がでるのは、初めてって聞いた。」
「ありがとうショウエン。今でも、合格できたのは夢みたい。」
彼女はこの国最難関の教育期間、アカデミーに合格した。
知力、そしてなにかしらの特化能力をもつ子どもたちが集められるという。
彼女の場合は、学力は上々。
そして、植物に関する興味関心が高い、ということ。
私の手ほどきで、ほんのわずかだが、植物を使った魔術もできる。
私の影響か、それが一般的なものよりも効能が高かったことが、アカデミーの目に止まったらしい。
私がディル様の加護を受けるように、アデーレも私の加護を多少なりとも受けている、とディル様はおしゃっていた。
それは私が彼女を嫌わない限り、永続的に続くらしい。
「ショウエンが教えてくれた魔法のおかげよ。きっと。」
「いいえ、貴方の努力と、植物に対する愛情のおかげよ。自信、持ってね。」
それは事実。
私が加護を与えても、植物たちから好かれなければその効果は毛が生えたくらい。
彼女の愛情に、植物が応えているのだ。
「ショウエンは、本当のご家族のところに戻るのね。」
「うん。やっと、向こうが落ち着いたみたいなの…もしかしたら、もう会えないかもしれない。」
それは希望でもあった。
私に近づけば近付くほど、私達の正体に気付く可能性が出てくる。
そうなれば、アデーレや、その家族を消さなくてはいけない。
私は…嫌だ。
「寂しいわ…でも、ショウエン。私達は友達よ。ずっと。そしていつか、何年後でも、何十年後でも…私とショウエンが、もしかしたらお母さんやお婆ちゃんになったころにもし会えたら…今みたいに笑ってお話、できたらそれでいいわ。あなたには、あなたの人生があるもの。」
アデーレは私を抱きしめる。
その腕は、震えている。
「……あなたが、たとえどんな人でも、どんなことをしていたとしても、あの時私を助けてくれたこと、友達になってくれたこと、本当に感謝しているの。」
アデーレは、本当は私達の正体に気づいているのかもしれない。
ノウエンコーポの裏の、いえ本当の姿。
機械都市ギガの支配者、クライシス。
この都市で、彼女だけが私達を知っている。
「大げさよ。私はただの、少しお金持ちの家のちょっと複雑な生まれの女の子よ。…そうね、すぐには会えないかもしれないでも、遠い未来で会えたら私も嬉しい。」
ふわりと風が吹いた。
まだ少し、寒い風。
だけど空には綺麗に桜が舞っていた。
END
『煙』シリーズはこれにて終了です。
アデーレはアカデミーに入学するので、フェグや龍華達と出会うかもしれませんね。
次は機械の王でショウエンの師匠こと、ディルが中心のお話になります。




