最終話.煙
最終話.煙
時刻は午後十時、彼女は俺の横で寝息を立てている。
渡した鎮痛剤の副作用でよく眠っている。漆黒の髪の毛をなぜながら電話の向こうのDにこれからの事を話す。
「ああそうだ。彼女は俺の直属部隊に組み込むから、改めて宜しくしてやってくれ。…学校に関しては、彼女の意見を尊重するよ。」
内線の向こうのDは言葉少なに頷く。
D、ショウエンの養父。
彼が七年近くにかけて育てた娘の純潔を奪ったと知ったら、彼はどう思うだろうか。
……おそらく、彼は何も思わない、か。
あくまで命令として彼女の父親役を演じさせたんだ。任務という以外の感情を多少沸きはしただろうが、彼女の扱いについて、彼が俺に対して何かを思うこともないだろう。
『ショウエンは、どうしていますか。今日出かけられたと仰っていましたが。』
「そうだな、今は俺の横で寝ているよ」
『えっ』
「お?」
予想外の反応。
冷静で感情を表に出さないDの、驚きの声を久々に聞いた気がする。
『……そう、ですか。ええ、分かりました。』
焦ったような声に、俺はむくむくと加虐心が起き上がる。
「君が大事に育ててきた娘だ。こっちもできる限り尽くしてから、美味しく頂いたよ。」
『こちらを煽るのなら無駄ですよ。ショウエン様は、最初からあなたの物なんですから。私がどうこう言うのもおかしな話しですよ。』
言葉は冷静だが、何時もよりも言葉が早い。
動揺か。人間らしい感情も、まだDにはあったようだ。
だが長年仕えてきた部下は俺の目論みを全て見抜いている。あまりいじめるのも、ま、悪いか。
「明日はショウエンとゆっくり過ごす。お前やA達も好きにしていろ。」
『分かりました。ではお休みなさいませ。』
「ああ、お休み。」
内線を切る。
部屋には再び静寂が訪れる。
ショウエンを抱いたのはつい四時間前。
予想通りの純潔の処女。時間を掛けて愛撫をしたつもりだったが、やはり初めては痛みを伴ってしまったようだ。
しかも、スキンの存在を頭から完全に消去していた。
迂闊だった、だけど後悔はしていない。
隔てもなく、彼女自身を感じることが出来たのだから。
欲望をはき出すだけはき出した後、また二人でシャワーを浴びて、交換した新しいシーツの上で甘い言葉を交わしている内にショウエンは夢の中に旅立った。
俺も行為の気怠さに徐々に支配されていくが、今日最後の仕事とばかりにDに内線を掛けた。眠気覚ましに、煙草に火を付けて。
そして明日以降のショウエンの扱いを手短に伝えて、今に至る。
もう一度ショウエンを見る。
完全に弛緩しきった身体。
白く透き通る若くて柔らかい肌。
ショウエンが寝付くまで彼女の髪の毛を撫でていたが、眠った顔を見て、ああやはり可愛いなと思った。
誰にも渡したくない。ずっと、腕の中に閉じ込めて俺だけを見つめさせたいという独占欲が次々にわき上がる。
愛情だ、これが。誰がなんと言おうと、俺は俺なりにショウエンを愛しているんだ
煙草を灰皿に押しつけてシーツに身を沈め彼女を腕の中に納める。
少しだけたじろぐような動作をみせるが、眠ったままだ。
彼女の薫りと漂う煙の薫りに包まれて、俺はやがて眠りの淵に落ちた。
『煙』End
お読み下さりありがとうございました。
いつもどおり勢いで書き始めました、が、楽しかったです。
彼らが本編Sword Worldに出てくるのはもう少し先ですが、それまで幾つかお話を紡いでいこうと思います。
次話からは、『煙』の後日談になります。




