『煙』17.決意
17.決意
最後に社長のアドラーも始末し、爆薬を仕掛けてその場を後にした。
警察には付近ビルの電話番号から、匿名で連絡を入れさせた。
既に警察車両と救急車が到着している。ヘリも上空から来ている。
このビルにいた女は十人。警察が彼女達を発見した時点で付近の電力が回復させる。
そしてそれと同時に爆発するように仕掛けた。電気系統の故障による漏電による爆発に見えるように、だ。地下のある非常電源用の重油に引火させることでビルも火災し、証拠は隠滅、という算段だ。
「脱出完了。これより本社に帰還する。」
「あー久々にやったから結構疲れたな。」
「あとは自動的に消えるから、今夜はゆっくり休もうぜ。」
車を本社に走らせた。遠くからサイレンの音が多数聞こえてくる。停電地帯を抜けると、そこは何時もの街だった。
ネオンが輝き、人々がごった返す華やかで艶やかな街だ。
歓楽街を通り抜け、ノウエンタワーに戻ってきた。
「ショウエン。歩けるか?」
「はい、大丈夫です…。」
地下の秘密倉庫に車を入れて降車する。
使った武器と血で汚れたプロテクターを車の中に置いてエレベーターに乗った。
「ザクト様、ではお休みなさいませ。」
A、B、C、Eは彼らの部屋がある中間階でエレベーターを降りた。
ショウエンは…無表情のまま俺に着いてきている。隣にはDが彼女を支えるように立っている。
部屋まで送るつもりなのだろう。
「ショウエン。明日はゆっくり休め。学校もなしだ。」
「…ザクト様がそう仰るなら。」
抑揚のない声で返事をした。俺の部屋より手前にショウエンの部屋はある。
「ではお休みなさいませ、ザクト様。」
「お休みなさいませ。」
「ああ、おやすみ。」
俺が返すと二人は最後に礼をしてショウエンの部屋に入っていった。
ショウエンにとって、初めての戦闘。知っている顔を殺した初めての日。
それでいてあの冷静そのものの表情。
思っていたよりも彼女はこちら側の人間なのだろうか。
命を奪うという行為に眉一つ動かさず、かといって快楽殺人者というわけでもない。
友人もいる。好きな者に対する愛情もある。普通の生活を営むために必要なささやかな幸せを思う心もある。
極めて普通の人間だ。
しかし、命を奪う。感情を動かさずに。
「……結論を出すか。」
俺は覚悟を決めることにした。




