第3話 保育園に通うまで
こうして俺は、未来予知ともう一つの特殊スキルをもってオリジナル世界に転生することとなった。
え?なんで「●体征服」って言わないのかだって?
決まっているだろう!恥ずかしいからだよ!あのダ女神のせいで、あわててスキルを選ばなきゃいけなくなったんだが、とっさに取得したスキルが「女●征服」だなんて恥ずかしいったらありゃしない。
何だって?フロイト的に言えば、深層心理で「●体征服」を求めていたため、とっさに「女●征服」を取得したんじゃないかって?
そんなこと!あるわけが!!ないだろうが!!!---と完全に否定することができない自分が恨めしい。
だって、男の子だもん。
そう、俺は今回も男性に転生したんだ。ちなみに名前も「トール」のままだ。正確には「とおる」だけどね。細かいことはいいんだよ。
いずれにしろだ、もう一つの特殊スキルは封印しよう。前回のように、臨終の際に三人の妻と二十一人の子と七人の愛人が枕元に大集合する未来は回避しよう。
さて、こうして俺は、未来予知ともう一つの特殊スキル(長いな、これからは「ダメスキル」と言おう)をもってオリジナル世界に転生したのだが---
あのダ女神、またやらかしやがった。
生まれた病院は、神奈川県川崎市宮前区。住んでいるのは、神奈川県川崎市高津区。
東京じゃないじゃん!多摩川越えてるじゃん!!
何?そんな細かいことはどうでもいいだろうだって?
いやいやいや、ここはこだわろうよ。
だいたいだなあ、神奈川県民の諸君。君たち、海外旅行に行ったとするじゃん。それで、外人から「Where are you from?」って聞かれたとするじゃん。そしたら、諸君は何と答えている?
「I am from Tokyo」って答えているだろう(ただし、一部の横浜市民を除く)。
だめだなあ、そんなことじゃ。ちゃんと「Kanagawa prefecture」と答えないと。そんなことだから、ダ女神が俺のことを神奈川県に転生させちゃったんだぜ。
あと千葉県民の諸君は、可及的速やかに千葉県内にある「東京●●」という名称を「千葉●●」に変更するべく、条例の改定を行うように。ネズミとかドイツとか飛行場のことだよ。
さてさて、こうして俺は、未来予知とダメスキルをもって神奈川県川崎市に転生したのだが---
二歳のときに、お引っ越しをすることとなった。
なんでも住んでいたのは、パパンが勤めている会社の社宅で、社宅の奥様どうしのあれやこれやがあって、ママンがパパンに「おうちをちょうだい」とおねだりをしたそうだ。
そしたらば、パパンは「うん、いいよ」と言って、ママンにおうちをプレゼントしたんだって。
なんと、東京の一戸建てだぜ!すごいぞ、パパン!!
---町田市だけどね。多摩川越えているけどね!なんなら都心に出るときに神奈川県を通らないといけないけどね!!
いかん、少し落ち着こう。
さて、多摩川を越えているとはいえ、東京都の一戸建てだ。それなりの値段がしたのだろう。
ママンはパートに出ることになった。ママン、がんばってね。
そして、必然的に、俺は保育園に預けられることになったのだ。
三歳から俺は保育園児になるのだ。
ちょっと待て、東京都の保育園児として、一人称単数が「俺」というのは問題があるな。いくら多摩川を越えているとはいえ(ちょっとしつこい)。
これからは一人称単数を「僕」としよう。
だいたいさあ、何で日本語には一人称単数が複数あるの?
わたし、わたくし、あたし、うち、僕、俺、自分---まだまだあるぞ。
我、吾、予、朕、某、妾、麻呂、麿、拙者、小生、小職、当方、我が輩---(以下略)。
英語、フランス語、ドイツ語、オランダ語、スペイン語は、一人称単数はひとつだけだよな!
なんなら中国語も一人称単数は一つだけだよな!
おい!明治維新政府!おまえら、日本語の標準化政策に取り組んでいたよな!
なぜ、その時に一人称単数を一つにとりまとめなかったんだよ!
おい、長州閥!おまえら、「僕」がメジャーになったからって、そこで安心するなよな!
「僕」以外の一人称単数を抹殺しておけよな!!
おい、薩摩閥!おまえらは偉い!「おいどん」をごり押ししなかった、おまえらは偉い!
さらにだ、何と!日本語は主語を省略することが出来るんだぜ!
せっかく覚えた、無数にある一人称(単数ならびに複数)が、省略されてしまうんだぜ!!
なんなんだよ、この言語は!!!
とにかくだ、俺は---いや、僕は2002年4月から保育園に通うこととなったのだ。




