第4話 魔力鍛錬
第4話
三歳の僕は、保育園児となった。
ここで皆さんに朗報があります!
何と!この保育園には魔素があるのです!
保育園は近所のお寺さんが社会貢献(という名のもとの営利活動)の一環として運営している。
そして、このお寺さんはパワースポットとしてその世界では有名であるらしい。
そうか、パワースポットって魔素があるんだなあ。これは、ママンにお願いしてお伊勢参りに行かなければ。
魔素の濃度は、一転世界・二転世界の十分の一にも満たない、極めて薄いものではあるが無いよりはましだ。
よし、一転世界であみだした瞑想法で魔素を取り込み、魔力を身につけよう!
8:45 登園、先生(保育士さん)にご挨拶。
9:00 朝の会、みんなでお歌を歌いましょう。
9:30 主活動、散歩に行ったり、運動をしたり、お絵描きをしたり。
11:00 昼食準備のお手伝い。
11:30 昼食。
12:30 お昼寝。心は大人だが体は三歳児、ぐっすりと眠ってしまう。
15:00 起床・おやつ。糖分補給は脳の成長に欠かさないぜ。
おい、瞑想する時間がないじゃないか。
15:30 自由時間、よし、瞑想だ!座禅だ!!
16:30 ママンお迎え ママン、迎えに来るのが早いよ、もっとゆっくりでいいよ。
くそ、瞑想できる時間はわずか1時間か。
しかも、この時間、集中できないのだよ。
男の子が「トール、外で遊ぼうぜ」と言ってきたり、女の子が「トールちゃん、元気ないの?」と話しかけてきたり、先生が体温計を持ってきて熱を測りだしたり---
いや、わかるよ。皆さん善意でやっているってことは。
そりゃ、三歳児が自由時間に一人で座禅を組んでいたら、普通は心配になるよな。話しかけたくなるよな。熱を測りたくなるよな。
だけどさあ、こっちだってさあ、ちゃんと協力しているんだぜ。
歌いたくもない歌を歌ったり、描きたくもない絵を描いたり。
お遊戯だって、ちゃんとしているんだぜ。心は大人の俺、もとい僕が保育園児といっしょにお遊戯をしているんだぜ。そのあたり、評価してくれないかなあ。
評価して、そのご褒美に瞑想をさせてくれないかなあ。
救世主が現れました。理事長先生です。
園長先生から報告を受けたのか、理事長先生が僕の座禅を見に来たのです。
理事長先生は僕の座禅を見た瞬間に「う~む」と唸り、僕に話しかけてきたのです。
「トール君、君はこの座禅をどこで習ったのかね」
おっ、これは!このビックウエーブに乗るしかないぜ!
「誰かに習ったということはありません。ただ、僕が生まれるずっと前に、このようなことをした気がするのです」
「う~む、やはりか---そんなことがあるものだな」
おっ、かかったか?
「園長、この子の前世は僧侶、しかも相当な高僧であったに違いない」
いいえ、征夷大将軍でした。
「その高僧は、相当な徳を積んでいたのだろう。煩悩から逃れることができたごく僅かな者が、一部の記憶を持ったまま転生することがあるというからな」
すみません。煩悩だらけでした。三人の妻の他に七人の愛人がいました。臨終の際、ものすごく気まずかったです。
「そして、転生した今、さらなる徳を積もうと禅を行おうとしているに違いない」
いいえ、違います。魔術を使いたいから瞑想しているのです。徳を積もうとは全く考えておりません。なんなら、ダメスキルまで持っています。徳とは正反対の立ち位置にいます。
「ということで園長、この子の座禅を妨げてはいけない。職員にも徹底するように」
よっしゃ!瞑想時間ゲットだぜ!!いや、ここはさらに追撃すべきだ。よし、できるだけ渋めの声を出すぞ。
「和尚、頼みがある」
「は? 頼みとは何だい? いや、何でございますか?」
「時間があるときに、そなたの寺で禅を組ませてはもらえまいか。なに、指導はいらん。場のみをお借りできればそれでいい」
「もちろんでございます。貴僧にお坐りいただけますことは、拙寺にとりまして誉れにございます」
理事長先生、騙してごめんなさい。いや、待て。騙しているわけじゃないよな。勝手に思い込んでいるだけだよな。---誘導はしたけど。




