第12話 ユメとの再会
2017年4月12日 日本武道館。
東京大学文科二類に合格した僕は、晴れて東京大学学部入学式に出席しようとしていた。
今日から僕は東大生だぜ。どうだ、すごかろう。
---まあ、小学生の時から東大一直線だったからね。未来予知さんのサポートもあったし。おまけにぽっちで遊び相手がいなかったし。
これで不合格だったら、そっちのほうが驚きだよ。
ママンは、入学式に同席したいと駄々をこねていたが、パパンが大学生にもなって親が入学式に行くべきではないと説得。
僕は一人で入学式に行くこととなった。
地下鉄九段下駅を降り、武道館に向かうと、ちらほらと同年代の男女を見かけるようになった。
うん、東大の新入生であろう。これから彼らは切磋琢磨し、日本の将来の礎になるのであろう。
頑張ってくれたまえ。ちなみに僕は切磋琢磨しない。無職ひきこもりになる予定なので。
武道館の敷地に入ったその時、一人の少女が僕に駆け寄ってきた。
「おにいちゃん!」
「え? ユメ? ユメ!!」
ユメは僕に抱きつく。それを受け止める僕。
「おにいちゃん、あのね、あのね、ユメ、がんばったの」
涙を流しながら僕に訴えるユメ。
「ヒック---お、おにいちゃんに、絶対に会えるって、し、信じてたから」
「うん、また会えたね」
「おにいちゃんもがんばっているって---少しはがんばっているって、思ったから」
「うん、僕も少しはがんばったよ」
「だから、だから、ユメも、がんばったの!」
ユメの顔は、泣き顔でくしゃくしゃになっている。
「そうか、ユメ、がんばったんだね。えらいな、ユメは」
「ワア~ん!!」
ユメは号泣し、僕の胸に顔を埋める。僕はユメを強く抱きしめた。
「貴様、何者だ」
怒りを抑えた低い声、いや、怒りを抑え切れていない。ものすごい殺気が僕に向けられている。
50歳くらいの男性、傍らには同じような年の女性が戸惑った表情をしている。これは---
「初めまして、伯爵ならびに伯爵夫人」
「は、はくしゃく?はくしゃくふじん??貴様、何を言っているんだ!」
いかん、動揺しすぎて、前世のユメの両親の爵位を言ってしまった。会ったことはないけど。あと、僕が殺したようなもんだけど。
「え~と、ですねえ」
僕とユメは前世で夫婦だったのです。ちなみに、ユメは三番目の奥さんです。あと、九人の愛人がいました。って、言えるわけないだろうが!
「愛人さんは十一人、ミリアムさんとスザンナさんは先に亡くなった。だからおにいちゃんの臨終のときにいた愛人さんが九人」
ユメが僕にだけ聞こえる小声でつぶやく。
本当にユメは、僕の考えていることがすぐにわかるんだよなあ。
「わたしはおにいちゃんのことだけを考えて生きている。だから、おにいちゃんの考えていることがわかるのは当たり前」って、ユメは前世で言ってたよな。その能力は、この世界でも有効なようだ。
いやいや、感心している場合ではない。何とかこの場を乗り切らねば!あと、しれっとミリアムさんとスザンナさんを愛人にしていたことを暴露しないでほしい!
「僕も、自分で驚いているんですが---」
うそをつく時には、真実を少しちりばめる。
「ユメ---娘さんを見た瞬間に気づいたのです。ああ、娘さんとは前世で夫婦だったんだなって」
「そんなことあるわけがないだろうが!」
「本当の話。私たちは夫婦だった」ユメの短いが有効なフォロー。
黙りこくるユメパパ。黙ったまま僕に殺気を飛ばしている。
「義父上、義母上」
「おまえに父上と呼ばれる筋合いはない!」はい、お約束ですね。
「僕も正直、気が動転しています。冷静になるために少し時間を空けましょう。もうすぐ入学式が始まりますし」
「おにいちゃん、連絡先」
僕はユメに携帯電話の番号を教えた。ユメは自分の携帯を操作、僕の携帯電話が鳴る。よし、ユメの携帯番号ゲット。
「貴様!ユメの携帯番号を消去しろ!今すぐだ!!」
「あなた、少し落ち着いて下さい」と伯爵夫人、もとい、ユメママだ。
「あなたも東大の入学生なの?」
「大変失礼しました。僕はトールと言います。文科二類に合格しました」
「そう、ユメは文科一類だけど同級生になるのね。これから、よろしくお願いしますね」とユメママ。
そうだ!ダメスキルが発動してたんだ!ユメママは僕の味方だ!
「おにいちゃん、私から連絡する」
「わかった。待っている」
ユメ一家は、式場へと去って行った。
---いかんいかん、僕も入学式に行かなければ。
その日の夕方、ユメから携帯に連絡があった。
次回投稿は、月曜日を予定しています。




