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03:シャーマンになったいきさつとデバフ

 家のものらは田畑へと出掛けていった。叔父のカラは少し遠くの大きな川まで魚を獲りに行くと言っていた。海もそう遠くはない。しかし海辺には別の集落がある。だからカラたちが海で漁をすることはない。この集落で採れた米やらココヤシなんかと交換するのさ。塩もその集落からもらい受けているもののひとつだ。


 さて、掃除をするか。この住まいは実に風通しがよい。わざわざ掃いたりなどしなくても、塵の類は勝手にどこかへ飛んでいく。それよりも埃だ。今は乾季で間違いない。乾季は塵を飛ばす代わりに埃を持ち込んでくれよる。これは拭いても拭いてもキリがない。先に布の方がダメなる。そんなわけだから埃は気にしないに限る。掃除は各人の使う寝具を干して乾燥させたり、布を払って畳む程度で終了した。


 時間が空いたな。では話そうか。サリが祈祷者となったいきさつを。

その前に寝所へ移動しよう。この場所が落ち着くんだ。サリ歴数時間でもそれがわかる。今の時間は寝所ではなく、床に樹皮布を1枚敷いただけだがね。ここはサリ専用の場所なんだ。


 サリの母も祈祷者だったことは話した通り事実だ。母がどういった理由で祈祷者になったのかは知らぬ。サリの生まれた頃には既に祈祷者として認められていたらしいということだけは聞いている。


 サリは生まれて10年ほどが過ぎた頃に、大病を患っている。よくある話さ。病から生還したものが見えざるものを視えるようになっただの、不思議な力が宿っただのといった具合のいかにも胡散臭い眉唾な話だ。加えてこの外見さ。縋るには格好の見てくれと言えよう。


 熱が下がり、最初に口にした言葉が悪かった。いや祈祷者になるのならばこれ以上ない言葉だったとも言える。当時サリが語ったのは、本人が会ったことすらない父方の祖母の今わの際の様子だった。名前もピタリと言い当てたものだから、父親はもちろんのこと集落中が大騒ぎになったものだ。ああ、もう気がついているとは思うが、今同じ屋根の下に暮らしている婆は母方の祖母だよ。父と母は同じ集落の人間だったんだ。父方の祖父母は他界して久しい。サリが生まれる前に既にこの世にはいなかったそうだからね。母方の祖母と、その息子である叔父のカラ、その家族、そこにサリが加わっているのも、ここらの集落では珍しいことじゃない。生きてる身内が集まって暮らすんだ。


 話が逸れたね、戻そうか。その後、母の存命中は母に付いて見習いとして励んでいた。繰り返しになるが、私自身は祈祷や霊媒といった類のものを嫌っている。到底信じてもいない。理由は様々あるが、無難な理由のみを明かすならば、非科学的だからだ。私には文明が進んだ時代を生きた経験もあるからね。まじないで病が治れば医者は要らぬ。しかし残念なことに医療にまつわる人物には転生したことがない。だから今世の私に過度な期待はしないでいただきたい。


 今世の事情は未だ正確にはわからぬ。住まいや身なり、食事から察する範囲外は推定不可というわけだ。言葉には聞き覚えがある。しかし何語なのかはわからない。近隣の近い国で生きたことがあったのかもしれない、という程度が今わかる限界だ。が、この国、少なくともこの地域に医療が発達しているとは思い難い。サリの寝所にはあらゆる薬草が並べられているからな。祈祷者に治癒を求めるような時代、とうっすら思っておけばよいだろう。大事なことなどでもう一度言う。私に医療の知識を期待するな。葉を1枚貼りつけた程度で治る傷ならば、放っておいても治る。


 もうひとつ大切な話があった。田畑に出られない理由だ。

この身体は大変弱い。陽の光は天敵のようなものだ。身体をしっかりと布で覆い、近くの住まいまで出かける程度ならば問題ないが、畑を耕すなどは死に急ぐようなものだ。まあ私自身は死なないのだけれどね。そして身体以上に弱いのが目だ。瞳の色は変わっていない。馴染みのある銀色だ。しかし今世の瞳は恐ろしく繊細だ。だからこんなに奥まった場所に専用の場所をあてがってもらえているのさ。すだれも必須だ。サリのすだれだけは昼間でも片付けることなく下げられたままだ。視力もよくない。何から何まで大ハズレだ。肉が食べたい。次に男たちが狩りに行くのはいつだろうか、待ち遠しい。

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