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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第九章 竜人族の子供
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昔話

 改築した部屋で遊ぶルナたちをよそに、俺たちは会議をしていた。


「どうして竜人国がリンちゃんを探しているかわかったよ」


 シアがギルドにいた人から話を聞けたらしい。


「数百年前に厄災っていう化け物が現れて、国が滅びかけたんだって」


 厄災。

 聞き馴染みのない言葉だった。


「姫巫女様が封印したらしいんだけど。

 それが五十年に一度封印が弱まるんだって。

 それを再封印するのが姫巫女の仕事みたい」

「なんだそりゃ?おとぎ話か何かか?」


 ネモが首を傾げる。

 確かに荒唐無稽な話に聞こえてしまう。


「だけど姫巫女の存在。

 それに竜人国の慌てようを見るに事実だろう」


 五十年ごとであれば、その時代を知る者もまだ生きている。


「でも幼いリンちゃんにその役目が務まるのか?」


 カトレアが部屋の方に目を向けて言った。


「確かにな」


 厄災の日がいつかはわからないが、おそらく近日中だろう。

 どうにも引っ掛かってしまう。


「昔を知る人に聞くべきだな」


 おそらく考えても答えは見つからない。


「すまん、ネモ、シア、カトレア。

 ルナとリンちゃんとアーティを頼む」

「ああ!」

「わかったよ!」

「了解した!」


 俺には心当たりがある。

 真っ直ぐに目的地へ向かった。



 人魚国の国境付近。


「《変身魔術》!」


 人魚国は男子禁制の国であるため、俺は少女に姿を変える。

 国境に向かい、そこを警備する兵士に声をかける。

 そのまま過去に入手した特別入館証を国境の兵士に提示する。


「確認しました。どうぞお入りください」


 門の先には巨大な湖が広がっており、人魚の国は、その湖の底に存在している。

 入国証へ魔力を流した瞬間、足が魚の尾へ変化した。


「この感じも久しぶりだな」


 湖へ飛び込む。

 入館証にかけられた魔法により、身体は沈まず、水中で息もできる。

 そのまま水底まで泳いだ。


 しばらく泳ぐと目的の場所に着く。

 海巫女の館。

 今回用がある海巫女がいる場所。

 建物の中へ入ると、水が左右へ分かれた。

 足が元へ戻る。


「やっぱり歩きの方が良いな」


 魚の尾はいまだに慣れない。


「いらっしゃい。おや、久しぶりだね」


 声をかけてきたのは、銀髪の人魚の少女だった。


「何か用かい?また手紙でも送りたいのかな?」


 前回獣人国へ手紙を出した時に利用している。


「いえ、今回はそうではなくてですね。

 海巫女様にお聞きしたいことがあります」


 海巫女は姫巫女や盲巫女と並ぶ三大祭女の一人。

 姫巫女について何か知っていると思ったからだ。


「そうか、ただ情報を教えるのもタダとはいかないよ?」


 俺は懐から金袋を取り出した。


「これでどうでしょうか」


 海巫女はニヤリと笑った。


「よかろう。では何について聞きたいのかな?」

「竜人国に伝わる厄災について教えて欲しい」


 海巫女は一瞬考えたような表情を見せた後。


「うちよりももっと適任者がいるじゃないか」


 そう言って俺の手の甲に触れる。


「うわ!」


 その時、紋章が光り輝く。

 白髪の巫女の少女。

 ヒドラの人間態が姿を現した。


「久しぶりだね」

「誰かと思えばアイリスか。

 海巫女が何の用だ?」


 俺は驚きのあまり言葉を失う。

 白髪の少女と海巫女は知り合いだったのだ。


「ヒドラと海巫女様は顔見知りだったのか」

「腐れ縁というやつだよ」

「誰が腐れ縁じゃ!

 ……それでどうしてわらわを呼び出したのじゃ?」


 白髪の少女は海巫女に突っ込みを入れつつ、本題に触れる。


「この少年が厄災について知りたがっているようでな。

 教えてやってくれないかな?」

「厄災じゃと……。

 まったく因果からは逃れられないものよのう……」


 白髪の少女はため息をつくと。


「良かろう。

 厄災について教えようではないか。

 ()()()()()()として――」


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 突如朗報が舞い込んできた。


「情報が見つかっただと!」


 捜索対象だった姫巫女の子供についての情報が見つかったと言うのだ。


「どこにいるんだ!」

「それが、どこにいるかまではわからなくてですね……」


 場所までは突き止められていないらしい。


「じゃあどこまで判明している?」

「人間国の農場で、幼竜を保護したという者にミルクを売ったという情報が」


 結論が知りたい状況で焦らされて気が立ってきた。

 その苛立ちをなんとか抑えながら聞き返す。


「その保護した者は誰なんだ?」

「それが名前までは……。

 ただ、見た目が黒髪の人間の少年で魔術師のローブを羽織っていたとのことです」


 肝心な情報は無かったが、見た目と種族、服装までは把握できた。

 どんな小さな情報であっても大きな進展だった。


「この情報をもとに、聞き込みをしろ。

 だが、深堀りはするな」


 少年について捜索されていることを気取られてしまった場合、遠くに逃亡される可能性がある。

 相手に勘付かれる前に見つけ出さねばならない。


「やっと見つけた手がかりだ。

 これを逃すわけにはいかない……」


 竜人国が慌ただしく動き出した。


 そして、その場から誰もいなくなった瞬間。

 草陰に潜んでいた人物が姿を現した。


「黒髪の少年か……」


 姫巫女の弟が聞き耳を立てていたのだ。


「あの者たちより先に見つけなければ」


 姉の形見を守るため。

 そして、彼が託せる人間か見極めるため。

 竜に姿を変えてその場を飛び立った。

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