↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第九章 竜人族の子供
98/143

平穏の中の不穏

 月光の森は大忙しだった。


「きゃはははは!」


 リンちゃんが元気いっぱいに駆け回っていた。


「こら!じっとしてなさい!」

「待つデス」


 ルナとアーティが追いかける。


「はぁぁぁ……朝から大忙しだな」


 ネモが欠伸をしながら歩いてくる。


「眠そうだな」

「ああ、今日は朝から依頼だからな」


 俺たちは再びギルドで依頼をこなす日々に戻っていた。


「おはよ。

 ロイくん、お姉ちゃん」


 シアも続いて起きてきた。

 シアもネモと同じ依頼に行く日らしい。


「あらら、ルナちゃんたちも大変だね」


 逃げ回るリンちゃんを追いかけるルナとアーティを見て呟いた。


「まあでも賑やかなくらいがちょうどいいよ」


 そう言って笑っていた、その時だった。


「なあ、ロイ。

 ちょっと話がある」


 カトレアが森に来て早々、深刻そうな表情で声をかけてきた。


「わかった」


 重要な話であることを表情で察する。


「私は聞いても良い話?」

「レウィシアさんなら大丈夫だ」


 三人で離れた場所に移る。


「それで話って何だ?」

「実は獣人国のギルドに依頼が出てたんだが、その内容が……」


 カトレアが昨日ビオラさんと話したことを教えてくれた。

 竜人国が卵を探しており、おそらくリンちゃんのことであること。

 リンちゃんは姫巫女から生まれた子供であること。

 そして、姫巫女は卵を持って行方をくらましたこと。


「それじゃあ、あの卵を託してきたっていう竜は……」

「ああ、姫巫女の可能性が高い」


 卵に対して深い愛情を感じられた。

 母親として子を守ろうとする行動にしか思えなかった。

 だからこそ、返すべきではないと心が警鐘を鳴らしている。


「そうなると最悪の場合、竜人国を敵にまわしちゃうことになるね」

「ああ、そうなるな」

「私もそう思う」


 他国にまで依頼を出した以上、もう引き返せない。

 もし、返さないとなれば、敵対は避けられない。


「私とお姉ちゃんで依頼ついでに情報収集してくるね」

「私ももう少しビオラさんに尋ねてみる」


 シアとカトレアがそれぞれ動く。


「俺は俺にできることをしなければ」


 本来なら竜人国の動きについて調べる必要があるだろう。

 だが、森をルナやアーティ、リンちゃんだけにするわけにはいかない。

 俺は森に留まることに決めた。


-----------------------------------------------------------


 その頃竜人国では。


「まだ見つからないのか!」


 竜人国国王が臣下を叱責する。


「申し訳ございません」


 臣下が深々と頭を下げる。


「厄災の日が近づいていることは知っておろうな?」

「もちろんですとも!」


 国王も穏やかではいられなかった。

 心に余裕がなかった。


「姫巫女は生け捕りにしろと言ったのだがな」


 逃亡する姫巫女に対しての威嚇射撃を直撃させてしまい、絶命させた。

 これだけでもかなりの失態である。

 逃げ切られる寸前になって焦って手元が狂ったのであろう。

 部下を責めることはできない。

 国を救う力の片翼を失った以上、もう片翼だけは何としても見つけ出さねばならない。


「それにしても何故見つからぬのだ」


 他国に依頼も出し、竜人国軍の大半を捜索に割いている。

 考えられるとすれば、ギルドを介さぬ誰かが保護している可能性だ。

 その者が素直に渡せば良いが、そうでない場合は。


「実力行使もやむをえまいな……」


 無実の者に手を挙げるのは心苦しいが、国の存続がかかっている。


「他国に連絡し、一般国民にも通達するよう要請してくれ」


 予算もかなり逼迫している。

 国王は頭を抱えるしかなかった。


-----------------------------------------------------------


 月光の森では、ルナとアーティとリンちゃんが三人で遊んでいた。


「あれ?」


 前までリンちゃんは大きめのぬいぐるみくらいのサイズだったはず。

 今見るとルナよりちょっと小さいくらいになっていた。


「大きくなってる?」

「もう、お兄ちゃんも気づくの遅いよー」


 実際朝にはここまで大きかっただろうか。


「ロイサマ。

 リンサマは食事の直後に目に見えて成長しておりマス」

「なるほど……」


 もしかして――


「なあルナ?

 食事の時間以外にリンちゃんに何か食べさせたか?」

「ギクッ!?」


 ルナが目を逸らした。


「な、なんのことだろう?」


 あからさまな態度を取った。


「アーティ?」


 アーティに目を向ける。

 アーティはルナに目配せした後、申し訳なさそうな表情になる。


「ルナサマは、リンサマにせがまれて、追加でお肉を食べさせマシタ」

「ア、アーティちゃん!?」


 裏切られると思っていなかったのかルナが戦慄している。


「ルーナー?」

「う、うぅ……ごめんなさい……」

「ごめんなさい?」


 ルナが謝罪する。

 それをリンちゃんも真似して謝る。


「次からは食べさせたかったら相談してくれ。

 それと、食事の時間を守らせるように教えないと悪い子になっちゃうぞ」

「うん……わかったよ」


 ルナがしょんぼりしてしまった。

 ルナを叱ったのは初めてかもしれない。

 ルナもリンちゃんという存在のおかげで、少しずつ素を取り戻したのかもしれない。

 俺はそうすることができなかったのが少し歯がゆかった。

 アーティも同じように感じているようだった。


 微妙な空気が流れてしまった。

 その空気を切り替えるように俺は口を開く。


「このままだとルナの部屋がリンちゃんには手狭になりそうだから、部屋を改築するか」


 優しい声色に切り替えてルナたちに告げる。

 このままのペースで成長すると家に入れなくなってしまうからだ。


「えっ!やった。やるやる」

「ワタシもお手伝いしマス」

「てつだう!」


 ルナはパッと表情を輝かせた。

 アーティとリンちゃんも手を挙げる。


「図面はこんな感じで。

 あ、アーティ!工具取ってきて」


 前々から改築しようと図面を作っておいた。

 それを見て作業に取り掛かる。

 そして、ネモとシア、カトレアが帰ってくる頃には、ルナの部屋が広くなっていた。


「わぁー!広くなったー!」

「ひろい!ひろい!」


 ルナとリンちゃんは嬉しそうに新しい部屋を走り回っていた。


 リンちゃんを家族として迎え入れる準備が着々と整っていく中、

 俺たちの置かれた状況は険しいものになっていっているのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。