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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第九章 竜人族の子供
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竜人族

 竜人国で託された卵が孵化した。

 幼竜はルナに抱きかかえられている。

 幼竜とはいえ、その身体は大きめのぬいぐるみほどある。


「ママ!ママ!」


 ルナに甘えて頬ずりしている。

 生まれた時に一番最初に見た相手を母と認識する。

 竜にも刷り込みがあるそうだ。


「竜って何食べるんだ?」

「わかんない……お姉ちゃんは知ってる?」

「わかるわけないだろ!カトレアは?」

「私もわからない」


 俺たちは誰も竜について詳しくなかった。


「アーティは何か知っているか?」

「こちらの竜が竜人であれば人間と同じものを食べマス。

 ただ、生まれたばかりの幼竜は母乳を飲みマス」


 幼竜は人の言葉を話していた。

 竜人なのは間違いないだろう。


「きゃ!もー!ルナは母乳でないよー」


 ルナが小さく悲鳴を上げたので、目を向けると、幼竜がルナの胸に吸い付いていた。

 見てはいけないものを見るようで、反射的に目を背ける。


「あー!!!ちょっとミルク買ってくる!」


 俺は大慌てで家を飛び出した。

 森を出てすぐ近くのところに農場があり、山羊のミルクを売ってもらった。

 それを持って急いで家に帰った。


「ただいま!ミルク持ってきた!」


 農場で事情を話したところ哺乳瓶を譲ってくれた。

 それを使って幼竜にミルクを飲ませる。

 ルナ以外からは飲もうとしないため、ルナがミルクを与える。

 たくさん飲んで満足したのか幼竜はそのまま寝てしまった。


「大変な目にあったよ……」


 ルナは珍しく疲れ切っていた。


「あはは……お疲れ様、ルナちゃん」


 シアは同情した表情で労う。

 俺がいない間にもいろいろあったらしい。


「それでこの竜はどうするんだ?育てるのか?」

「そうだなあ……ある程度大きくなるまでは育てる方が良いとは思うが」


 本来であれば竜人国に保護してもらうのが一般的だろう。

 ただ、託された経緯もあり、それが正解かはわからない。

 それに竜人国との繋がりが薄く、頼れる相手もいない。


「そうだな、ルナちゃんから離すのはちょっとな」


 カトレアは難しい表情をしている。

 カトレアの村では養鶏をしていたことがあり、雛の刷り込みについて多少は知っていた。

 最悪の場合、餌を食べず、餓死することもあるということだった。


「ルナはどうしたい?」

「この子を独りぼっちにはできないよ。

 それにこの子のお母さんにお願いされたもんね」


 ルナは幼竜の頭を撫でながら答えた。


「そうだな」


 俺もルナの頭を撫でる。

 経緯はどうであれ、この子も立派な俺たちの家族だ。

 俺たちの中で方針が決まった。



 翌日。

 一旦みんなで役割分担をした。

 カトレアとシアには買い出しを頼んだ。

 竜を育てるのに必要な物を調達してもらう。

 ルナとネモが幼竜の面倒を見るためお留守番。

 ルナは確定として、もう一人はネモに任せる。

 幼竜とはいえ竜である以上、力は強い。

 それを止められるのがネモしかいないからだ。


 俺とアーティは竜人について調べるため、図書館へ向かった。


「アーティは竜人族のことどう思う?」

「そうデスネ……神秘的な人種だと思いマス」


 神秘的という表現がしっくりきた。

 実際他人種に比べて謎が多い。


「そろそろ図書館だな」

「ハイ、それでは二時間後に戻りマス」


 図書館で一度アーティと別れ、手分けにして調べる。


「なるほど……ある程度成長すると人の姿に変化するのか」


 竜人は基本的には人の姿で生活している。

 そのことは知っていたが、幼い頃のことは知らなかった。


「それに、移動や戦闘など限られた場面で竜の姿に変身することがあるのか」


 竜の姿をした竜人を見たことがなかったため、変身できることも知らなかった。


「だから昨日、竜の姿だったのか」


 あの時が初めての経験だった。

 魔物との戦いでも竜人国は人の姿を取っていたからだ。


「食事についてはアーティが言ってた通りだな」


 竜人族も他の人種と同じ物を食べる。

 雑食で、肉だけではなく野菜も好むらしい。


「それにこれは……育てる選択は正しかったか」


 幼い頃に親を失うと精神に異常をきたしたり、自害するらしい。

 だから死別した場合は親族が受け継いで育てる文化があるという。

 それ以外にも興味深い内容が多く書かれていた。


「さて、そろそろ時間だな」


 本を戻して、アーティと合流する。


「ロイサマ、調べものはどうデス?」

「結構いろいろ学べたよ」


 アーティと情報共有しながら帰路につく。

 アーティは幼竜の育て方の本を借りていた。


「ただいま」

「ただいまデス」


 森に帰るとシアとカトレアが先に戻っていた。

 そしてルナの部屋の前で覗くように立っている。


「どうし……」

「しっー!」


 俺が声をかけようとした瞬間、シアに止められる。


「どうしたんだ?」

「あれ見て」


 小声で話すと、シアが部屋の中を指さす。

 そこにはルナとネモと幼竜が仲良く三人で眠っていた。


「ルナちゃんもアネモネもあの子もぐっすりだな」


 カトレアが微笑みながら眺めている。


「ルナサマもお疲れだと思いマス」


 アーティも小声で呟く。


「そうだな」


 床には遊び道具があちこちに散らばっていた。

 たくさん遊んで疲れたのだろう。

 三人とも穏やかな表情をしている。


 これから何が起こるかはわからない。

 だが、それでもこの光景を見たら、不思議とどうにかなると思えた。

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