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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第七章 新たな脅威
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重なる二人

前を見据える。


空に浮かぶ少女は様子見を窺っているかのように動かない。


俺たちは魔力をイメージ通りに変形させる。


アーティと合体したことで繊細な魔力の制御ができる。


模倣するように魔力で背中に翼を形作り、羽ばたく。


近付く俺たちに向かって、少女は魔力を解き放つ。


「《障壁展開》!」


障壁を展開する。


魔力による攻撃は障壁に吸収され、消滅した。


「……!?」


少女が僅かに動揺したような反応を見せた。


「こちらから行かせてもらう!」


俺たちは手をかざして魔力を圧縮するように一点に集める。


そして形作られた玉を少女に向けて放つ。


少女は身に纏う魔力を全面に集め、盾にした。


「無駄デス!」


放った魔力光線は盾を貫く。


勢いそのままに少女に光が直撃する。


「……!!!」


少女は苦悶の表情を浮かべる。


これは月光の森で、アーティの全力の魔力光線を受けた時の反応に似ていた。


その時、信じられない量の魔力が少女の身体から外へと流れだす。


溢れ出た魔力は不規則な形に変化する。


その魔力の動きに意志は感じられなかった。


次々と形を変え、無数の魔力の矢のようになる。


制御しきれずに暴走させてしまっている。


「まずい、みんなが危ない!」


暴走した魔力は全方位に向いている。


このままでは、地上のみんなは消えてなくなってしまうだろう。


獣人国、それに人間国も地図上から半分は消滅しかねない。


地上のみんなは、今目の前で起きている事象を理解しきれず、ただ立ち尽くしている。


魔力の矢が雨のように拡散して放たれる。


「《多重障壁展開》!」


障壁を少女の四方八方に展開する。


幾重もの結界が降り注ぐ魔力の矢を受け止める。


結界と魔力の衝突で爆発が起こる。


「「「うわあああああああ!!!」」」

「「「きゃあああああああ!!!」」」


地上から悲鳴が上がる。


煙が上がるとみんなは無事だった。


みんなの周囲にも結界を展開しておいたのだ。


「あ!あの子が!」


少女は魔力を使い果たし、翼が消えた。


意識を失い、地面へと真っ逆さまに落ちていく。


「間に合え!」


受け止めるべく、加速する。


その時、少女の落下が止まり、再び浮き始める。


「何が起こっている……!?」


俺たちは急停止して距離を取る。


意識もなく浮いている。


そして身体から尽きたはずの魔力が流れ出る。


「これは!穢の魔力……!?」


森で戦ったエルフの思念が持っていた魔力。


瘴気が無い今、この量が残留していることに驚きを隠せなかった。


「ハハハハ。

 イマコソハフクシュウハタストキダ」


およそ人が発するような音ではない異質な声が聞こえる。


「この声はエルフの思念か……」

「大変なことになりそうデス」


穢の魔力が少女を器として取り込もうとしている。


このままでは少女は消滅し、新たな厄災が生まれてしまう。


「アーティ、彼女を封印しよう」

「それが最良の選択デス」


穢の魔力を蝕まれている以上、少女を殺しても亡骸を器にされてしまう。


それ以前に穢の魔力に遮られて殺すことも難しいだろう。


少女の尊厳を守りつつ、厄災を回避するためには封印しかない。


俺とアーティで考えが一致した。


「「《封印術 改》!」」


無意識に二人で口にし、発動させていた。


封印術が進化していた。


これが新たな力なのか。


核から魔力の鎖が伸びて、少女の身体を拘束する。


そのまま鎖を手繰り寄せる。


「マタ、オマエガジャマスルノカ」


思念は抵抗するが少女の身体から抜けさせない。


封印術の力もあるだろう。


だが、少女の中に眠る意志が抑えつけているようにも感じられる。


「オノレ……ワレワレハアキラメナ……」


言い切るより先に核の中に取り込まれた。


「終わった……のか」

「はい……終わったみたいデス」


魔力の残滓は感じられない。


穢の魔力ごと少女は無事封印された。


みんなの元に戻るために地上に降り立つ。


魔力が少しずつ分裂する感覚が出てきた。


おそらく合体がもうすぐ解けるのだろう。


「マスター、みんなの元へ戻るデス」

「ああ、そうだな」


そうして踵を返そうとしたその時、核から声がした。


『ありがとう』

『ようやく……また、お姉ちゃんと一緒になれました』


二つの声が聞こえた。


「この声は……」

「良かったデス……。

 本当に良かったデス……」


直後、俺たちの身体が光に包まれる。


一つに重なっていた魔力が二つに分かれる。


光が収まると――


俺とアーティはそれぞれ元の姿に戻っていた。


「お兄ちゃん!すごかったよ!」

「ロイ!さっきのはなんなんだ!?」

「いまだに何がなんやら」


ルナとネモとカトレアがこちらに向かって走ってくる。


「ちょっとー、私のことも忘れないでよねー」


レウィシアさんもこちらに向かっているようだ。


「おーい!みんな!」


俺はみんなの声に応えようとしたその時。


「ロイサマ……」


突然アーティに手を掴まれ、呼びかけられる。


「どうしたアーティ……」


アーティの方へ振り返ったその時。


「ん……」


冷たい感触が唇に当たる。


目を閉じたアーティに口づけをされた。


「……!?」


俺は目を大きく見開いた。


声を出そうとするが、うまく言葉にならない。


「その……ワタシはロイサマのことが好きみたいデス」


恥ずかしそうな表情でアーティは俯いた。


「……でも、この気持ちがワタシだけのものなのかは、まだ分からないデス」


無表情に戻ったアーティはそれだけ言うと背を向けてしまった。


「お兄ちゃん!アーティちゃん!どうしたの?」

「もしかしてどこか怪我したか?」

「まあ、気持ちはわかるよ、今でも現実味がない」

「心の治療は私は受け付けてないよ~」


みんなが俺たちの元にたどり着いた。


ルナとネモは心配してくれている。


カトレアは呆けた俺を見て共感してくれたのだろう。


レウィシアさんは核心を掴んでそうだ。


長く続いた戦いはここに終止符が打たれた。


だが、ロイにとっては新しい悩みが生まれたのだった。


――第七章 完――

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