天才軍師
竜人国と魔人国。
二つの国が到着してからは、士気が大きく高まった。
魔物は絶えずブレスを吐き出す。
「竜人国の底力見せてやれ!」
「おおおおおおおおおおお!」
障壁を得意とする竜人国は、強固な障壁を展開する。
先ほどより大きい。
障壁は砕け散ったが、なんとか防ぎきる。
「よし!我らの障壁は最強だ」
「うおおおおおおおおおお!」
竜人国が雄叫びを上げる。
「すごいな……ブレスを防ぎきるなんて」
「うむ、そうだな」
俺と獣人国国王は感嘆する。
「魔人国も負けてはおれん!」
「そうだ!そうだ!」
魔人国も詠唱を始める。
「グオオオオオオ?」
魔物の動きが鈍くなった。
身体を動かすのも億劫そうに見える。
「魔人国が得意とするのはデバフ攻撃よ!」
魔人国軍の司令官が得意げに叫ぶ。
実際魔物にも効果があるようで、攻撃の頻度が激減した。
「本来このレベルのデバフを受けたら、動くことすらできないはずなんだがな」
魔物はまだ動き、攻撃はしている。
それでもかなり戦いやすくなっている。
獣人国と反国王派は魔物へ攻撃を仕掛ける。
「《大火球》」
「《土石流》」
「《大水球》」
「《疾風の刃》」
兵士が詠唱を行うと、各属性の魔法が飛び交う。
「ルナ、俺たちも」
「うん!」
「「せーのっ!《豪炎球》!」」
息を合わせて豪炎球を放つ。
「グオオオオオ!」
魔物に直撃した。
致命傷こそならないが、僅かに傷ができている。
ダメージが通ったのだ。
「おっしゃあ!傷が入った!」
「このままいけば、倒せるのでは?」
各国の軍の士気が最高潮になる。
「我々非戦闘員も頑張りますぞ」
「はいです!」
人魚の国から提供された魔道具を起動する。
魔力付与した鉄球を撃ちだす砲台。
魔力で太陽の光を集めて放つ、反射鏡。
魔物にしか聞こえない超音波を放つ機械などもある。
それぞれの国の協力で、少しずつ魔物を追い詰めていく。
気付けば、魔物の傷も少しずつ広がっていた。
「国が一丸となるとこれほどとは……」
獣人国王子が目を細める。
歴史的に類を見ない光景が繰り広げられている。
「まだまだ!いけるか!」
「おう!!!!!!!!」
掛け声が上がる。
止めどなく魔法が飛び交う。
しかし、快進撃はここまでだった。
気付けば一時間近く魔法を撃ち続けていたが、状況に変化が無い。
「それにしてもまだ倒れないのか」
「頑丈過ぎるだろ」
戦力の半数の魔力が尽きている。
その状況でもまだ魔物は倒れない。
掛け声がどんどん小さくなる。
士気が落ちてきている。
「まずいな……」
俺は周囲を見渡す。
兵士の表情には覇気がない。
疲労もあるだろうが何よりも不安が大きい。
いつまで続くのだろうか、倒せるのだろうか。
暖簾を腕で押しているような手応えのなさ。
それを肌で感じる。
「お兄ちゃん、ルナも少し休むね」
ルナも休憩に入った。
ルナも相当成長している。
魔力量も増え、なおかつ魔力の制御も向上している。
並みの兵士の倍以上の時間、魔法を撃ち続けられていた。
ネモとカトレアも一時的に医療班の手伝いをしに行っている。
ルナが休憩に入ったことで、明らかに魔法の質が低下した。
それを見て、やはり空気は伝染していく。
一人、また一人と休憩に入る。
「良くない状況だな」
その時、黒の軍服風のワンピースを着た少女が歩いてきた。
「何だ君は?」
明らかに戦場に不釣り合いな見た目をしている。
何をしに来たのだろうか。
小柄な少女は腕を組み、自信満々に胸を張る。
「私は魔人国の天才軍師。
ペルシカ・チラリア様だ」
尊大な態度で名乗りを上げた。
彼女が作戦を立案した魔人国の軍師だった。
「君があの作戦の立案者か、さすがだな」
素直に感心した。
「そういうお前は……ってまさか、ロイか?」
俺の顔を一瞥するとハッとした表情を浮かべ、すぐに睨むような表情に変わった。
「そうだけど、どうして俺の名前を?」
魔人国にまで名前が轟いてしまっているのだろうか。
「私は元々人間国の軍師をしていた。
あの獣人国との戦争の指揮も私だった。
お前に全部めちゃくちゃにされたがな」
険しい表情を浮かべられる。
「あの囮作戦も君か。
通りで手ごわかったわけだ」
「ふん、それほどでもないがな」
満更でもなさそうな表情を見せる。
「お兄ちゃん、その子だあれ?」
ルナがこちらに気付いて駆け寄ってきた。
「ああ、この人は魔人国の軍師だよ」
「そうなんだ!ルナの名前はルナって言うの。
よろしくね」
「あのなぁ……私は一応お前たちより一回り以上年上だぞ」
おそらく同い年くらいを想定しているルナに釘を刺した。
「ええええ!見えないよ、ルナと同い年くらいかと」
「ああ、俺も年下かと」
「お前たち失礼だな。
まあこの見た目じゃしょうがないか」
諦めたように自嘲する。
「いや、そんなことを話にきたわけではない。
このままでは全員消耗して終わる。
新しい作戦を考えたから承認をもらいにきた」
そう言って、獣人国国王の元へ歩いていく。
「陛下、このままですと全滅は免れません。
新しい作戦を立案しましたので、承認をお願いします」
「うむ、申してみよ」
獣人国国王とペルシカさんで話し込んでいる。
獣人国国王は相槌だけでそのまま首を縦に振った。
「お前たちにも協力してもらう。
作戦は魔法兵の兵長から聞いてくれ」
それだけ伝えると、ペルシカさんは竜人国軍側へ走って行った。
作戦は承認されたようだ。
近いうちに作戦が開始される。
この作戦がうまくいかなければ、敗北が濃厚となってしまう。
戦闘も佳境、果たして五大国同盟は魔物を討伐できるのだろうか。




