五大国同盟
更に数日が経過した。
魔物は悪い夢でも見たかのように音沙汰がない。
だが、いつ現れても良いように各自準備はしている。
そして、《魔法創造》が使える時期となった。
俺は既に決めていた。
創造するのは、みんなに力を与えられる魔法。
「《魔法創造》!」
新たに生み出した魔法は――
《合体》
心と心を通わせ、一つになる。
互いの力が合わさり、新たな力へと進化する。
制約:
『心が通い合った者同士でしか使えない』
『一人につき一度きり』
魔法の説明が抽象的過ぎて、理解できなかった。
「どういうことだ?」
方向性は合っている。
だが、想定外の魔法になってしまった。
他者に魔力を分け与えられるものを想定していた。
「これは失敗か?」
使い方が分からない。
しかも一度きりでは試すことすらできない。
そして最大の問題点は。
「アーティの心……」
アーティは生きている。
自立しており、自ら考えることもできる。
俺は、一人の人間として接している。
それでも心という概念に対する確証は持てなかった。
「もし心があったとしてもだ」
俺と心が通い合っているのか。
俺はアーティを大事に思っている。
アーティも俺を慕ってくれている。
それはマスターとしてなのか、一人の人間としてなのか。
哲学的な問題になってしまう。
「あー、なんでこんな魔法になっちまったんだ」
苛立ちから頭を掻きむしる。
「一旦、この魔法を主軸に作戦を組み立てるのはやめた方がいいな」
不確定なものに縋ることはできない。
ひとまず頭の隅に追いやった。
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その時、人間国の宮廷では。
「はぁ……はぁ……身体が怠いな」
人間国国王は見るからにやせ細っていた。
威圧感のあった体躯は見る影もない。
「そうか、アレは動けるようになったか」
深淵の森へ突入させた際に受けた瘴気の影響から回復したようだ。
「次の目的地は獣人国だ。
戦争の敗北はオレ様の顔に泥を塗りやがったからな」
思い出しながら、腹を立てている。
「獣人国を落とせば、汚名を返上できるな」
いつものように高笑いするが、覇気がない。
少し声を荒げるだけで息が上がっている。
「急がねば、オレ様が先にくたばっちまうか」
魔力も安定しない日々が続く。
ほとんど満身創痍。
信念だけで意識を保っている。
「待っていろ、もうすぐで悲願が叶う」
王妃の遺影に目を向ける。
その思いに呼応するかのように漆黒の魔力が体内から噴き出す。
「《隷属魔術》発動!」
詠唱が完了すると、漆黒の魔力が放たれる。
人間国国王は玉座から立ち上がり、寝室に突っ伏した。
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獣人国の斥候が、ソルヌ近辺を偵察していた時だった。
「ん?なんだアレは?」
人間国の方から何かがこちらに向かっているのが見える。
「こ、これはまずい!今すぐ知らせねば」
双眼鏡で覗き込むと、そこには見たことも無い魔物の姿があった。
それも色々な魔物を掛け合わせたような姿をしている。
ゆっくりだが、確実に獣人国を目指して動いている。
「国王陛下!」
「どうした、そんなに息を切らして」
獣人国国王は真剣な表情を浮かべた。
斥候が息を切らすということは重要な情報を握っている。
「はい!人間国のダンジョン跡地の方角より、見たことも無い魔物の姿あり。
ゆっくりと獣人国へ向かっております」
「なんだと……。
今すぐ軍を動かせ!」
「御意!」
獣人国国王は頭を抱えた。
魔物の存在はロイたちが既に伝えている。
「あの男、やはりきたか」
人間国国王の仕業と分かった以上、我が国が狙われることは想定していた。
とはいえ、まだ戦後の傷は完全に癒えてはいない。
どこまで持ちこたえられるか。
「ロイ殿たちが手も足も出なかった魔物か」
考えすら及ばない。
「打てる手は打たなければな」
魔人国と竜人国にも声をかけている。
人魚国からは魔道具の提供を依頼した。
倉庫に眠る魔道具も、できる限り引っ張り出す。
「腹をくくるしかないな」
戦場にも向かうつもりだった。
「私どもも陛下とともに」
宰相及び臣下も同じ考えのようだった。
「兵の準備、行くぞ」
王の号令で空気が変わった。
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「獣人国から援軍の要請か」
魔人国国王は依頼状を受け取った。
「本当にふざけたことをしてくれたな、人間国国王よ」
人間国の非人道的な行為には憤慨していた。
魔人は魔物と人間の遠縁であり、キメラは我々の人種を愚弄するのと同義であった。
「それに見て見ぬふりができるような問題ではないからな」
獣人国が倒されるのは好都合な面もある。
だが、次は獣人国と国境が面する我が国が危ない。
「難しい、難しすぎる」
正直のところ、我が国もかなりの被害を出すことが想定される。
だが、参戦しなければ我が国が襲われた時、他国からの協力を仰ぐことはできなくなるだろう。
「背に腹は代えられん、援軍を出すしかない」
不本意ではあるが、援軍を出すことを決めた。
「おい、軍師にも作戦の立案を指示しておけ
それに軍の編成も」
指示出しを行った後、書状の執筆を始めた。
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「ふむ、獣人国からか」
竜人国国王も依頼状を受け取っていた。
「どうされますか陛下」
竜人国は原則非介入を貫いていた。
だが、今回は話が違った。
「もちろん援軍を出す」
キメラの姿を確認した時、同胞の身体が使われていた。
それも命を投げ売ってまで、我が国を救った英雄の脚部である。
竜人国国王の実の弟でもある。
墓を暴かれ、あろうことかキメラの材料に使われているとは。
「人間国国王、お主だけは許さぬ」
英雄を信仰する者はこの国に多い。
国民から援軍の支持は受けている。
「我が弟よ、再び安らかに眠らせてやるからな」
竜人国も援軍を出す運びとなった。
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魔物はかなりの牛歩だった。
隷属させている人間国国王の消耗が激しいからなのか、動いては休んでを繰り返している。
まだソルヌにすら到着していない。
そのおかげで着々と準備が整ってきている。
獣人国の元に続々と書状が届く。
「よし、魔人国と竜人国の協力も仰げた」
人魚国からも先ほど魔道具の提供を承諾する書状が届いている。
これにより、獣人国、魔人国、竜人国、人魚国、人間国反国王派による五大国同盟が結成された。
もちろんロイ殿たち月光の森陣営もいる。
「負けるわけにはいかない、いや違うな。
負ける気がしない」
獣人国国王にかかる重圧はかなりのものだった。
だが、様々な人たちの力が心の支えとなっている。
国のため、世界のため、戦う決意を固めた。




