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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第七章 新たな脅威
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五大国同盟

更に数日が経過した。


魔物は悪い夢でも見たかのように音沙汰がない。


だが、いつ現れても良いように各自準備はしている。


そして、《魔法創造》が使える時期となった。


俺は既に決めていた。


創造するのは、みんなに力を与えられる魔法。


「《魔法創造》!」


新たに生み出した魔法は――


合体(エンゲージ)


心と心を通わせ、一つになる。

互いの力が合わさり、新たな力へと進化する。


制約:

『心が通い合った者同士でしか使えない』

『一人につき一度きり』


魔法の説明が抽象的過ぎて、理解できなかった。


「どういうことだ?」


方向性は合っている。


だが、想定外の魔法になってしまった。


他者に魔力を分け与えられるものを想定していた。


「これは失敗か?」


使い方が分からない。


しかも一度きりでは試すことすらできない。


そして最大の問題点は。


「アーティの心……」


アーティは生きている。


自立しており、自ら考えることもできる。


俺は、一人の人間として接している。


それでも心という概念に対する確証は持てなかった。


「もし心があったとしてもだ」


俺と心が通い合っているのか。


俺はアーティを大事に思っている。


アーティも俺を慕ってくれている。


それはマスターとしてなのか、一人の人間としてなのか。


哲学的な問題になってしまう。


「あー、なんでこんな魔法になっちまったんだ」


苛立ちから頭を掻きむしる。


「一旦、この魔法を主軸に作戦を組み立てるのはやめた方がいいな」


不確定なものに縋ることはできない。


ひとまず頭の隅に追いやった。




その時、人間国の宮廷では。


「はぁ……はぁ……身体が怠いな」


人間国国王は見るからにやせ細っていた。


威圧感のあった体躯は見る影もない。


「そうか、アレは動けるようになったか」


深淵の森へ突入させた際に受けた瘴気の影響から回復したようだ。


「次の目的地は獣人国だ。

 戦争の敗北はオレ様の顔に泥を塗りやがったからな」


思い出しながら、腹を立てている。


「獣人国を落とせば、汚名を返上できるな」


いつものように高笑いするが、覇気がない。


少し声を荒げるだけで息が上がっている。


「急がねば、オレ様が先にくたばっちまうか」


魔力も安定しない日々が続く。


ほとんど満身創痍。


信念だけで意識を保っている。


「待っていろ、もうすぐで悲願が叶う」


王妃の遺影に目を向ける。


その思いに呼応するかのように漆黒の魔力が体内から噴き出す。


「《隷属魔術》発動!」


詠唱が完了すると、漆黒の魔力が放たれる。


人間国国王は玉座から立ち上がり、寝室に突っ伏した。




獣人国の斥候が、ソルヌ近辺を偵察していた時だった。


「ん?なんだアレは?」


人間国の方から何かがこちらに向かっているのが見える。


「こ、これはまずい!今すぐ知らせねば」


双眼鏡で覗き込むと、そこには見たことも無い魔物の姿があった。


それも色々な魔物を掛け合わせたような姿をしている。


ゆっくりだが、確実に獣人国を目指して動いている。


「国王陛下!」

「どうした、そんなに息を切らして」


獣人国国王は真剣な表情を浮かべた。


斥候が息を切らすということは重要な情報を握っている。


「はい!人間国のダンジョン跡地の方角より、見たことも無い魔物の姿あり。

 ゆっくりと獣人国へ向かっております」

「なんだと……。

 今すぐ軍を動かせ!」

「御意!」


獣人国国王は頭を抱えた。


魔物の存在はロイたちが既に伝えている。


「あの男、やはりきたか」


人間国国王の仕業と分かった以上、我が国が狙われることは想定していた。


とはいえ、まだ戦後の傷は完全に癒えてはいない。


どこまで持ちこたえられるか。


「ロイ殿たちが手も足も出なかった魔物か」


考えすら及ばない。


「打てる手は打たなければな」


魔人国と竜人国にも声をかけている。


人魚国からは魔道具の提供を依頼した。


倉庫に眠る魔道具も、できる限り引っ張り出す。


「腹をくくるしかないな」


戦場にも向かうつもりだった。


「私どもも陛下とともに」


宰相及び臣下も同じ考えのようだった。


「兵の準備、行くぞ」


王の号令で空気が変わった。




「獣人国から援軍の要請か」


魔人国国王は依頼状を受け取った。


「本当にふざけたことをしてくれたな、人間国国王よ」


人間国の非人道的な行為には憤慨していた。


魔人は魔物と人間の遠縁であり、キメラは我々の人種を愚弄するのと同義であった。


「それに見て見ぬふりができるような問題ではないからな」


獣人国が倒されるのは好都合な面もある。


だが、次は獣人国と国境が面する我が国が危ない。


「難しい、難しすぎる」


正直のところ、我が国もかなりの被害を出すことが想定される。


だが、参戦しなければ我が国が襲われた時、他国からの協力を仰ぐことはできなくなるだろう。


「背に腹は代えられん、援軍を出すしかない」


不本意ではあるが、援軍を出すことを決めた。


「おい、軍師にも作戦の立案を指示しておけ

 それに軍の編成も」


指示出しを行った後、書状の執筆を始めた。




「ふむ、獣人国からか」


竜人国国王も依頼状を受け取っていた。


「どうされますか陛下」


竜人国は原則非介入を貫いていた。


だが、今回は話が違った。


「もちろん援軍を出す」


キメラの姿を確認した時、同胞の身体が使われていた。


それも命を投げ売ってまで、我が国を救った英雄の脚部である。


竜人国国王の実の弟でもある。


墓を暴かれ、あろうことかキメラの材料に使われているとは。


「人間国国王、お主だけは許さぬ」


英雄を信仰する者はこの国に多い。


国民から援軍の支持は受けている。


「我が弟よ、再び安らかに眠らせてやるからな」


竜人国も援軍を出す運びとなった。




魔物はかなりの牛歩だった。


隷属させている人間国国王の消耗が激しいからなのか、動いては休んでを繰り返している。


まだソルヌにすら到着していない。


そのおかげで着々と準備が整ってきている。


獣人国の元に続々と書状が届く。


「よし、魔人国と竜人国の協力も仰げた」


人魚国からも先ほど魔道具の提供を承諾する書状が届いている。


これにより、獣人国、魔人国、竜人国、人魚国、人間国反国王派による五大国同盟が結成された。


もちろんロイ殿たち月光の森陣営もいる。


「負けるわけにはいかない、いや違うな。

 負ける気がしない」


獣人国国王にかかる重圧はかなりのものだった。


だが、様々な人たちの力が心の支えとなっている。


国のため、世界のため、戦う決意を固めた。

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