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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第七章 新たな脅威
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譲れないもの

王子の話はにわかに信じられないものであった。


「本気で言っているのか?」


信じられないというより、信じたくないといった方が正しいだろうか。


否定的な態度をぶつけてしまう。


「気持ちはわかるよ、でもそれなら説明がつくかい?

 従来の魔法傀儡に比べて、あまりにも人間に近過ぎると思わないか?」


確かに、従来の魔法傀儡は術者が魔力で操らなければ動くことはない。


言葉を発することもなければ、物事を記憶することもない。


改めて考えれば、説明がつかない。


「確かにそうだが……」


反論のしようがなかった。


それでもまだ食い下がろうとしてしまう。


「その魔法傀儡、僅かながらに感情が芽生えているようだな。

 魔石の記憶が干渉しているとすれば説明がつくだろう」


説明できなかった事象が一つ一つ繋がっていく。


認めざるを得なかった。


「あの魔物を倒せるのは、そこの魔法傀儡だけだろうね」


今回に関しては俺たちは無力である。


「アーティの力が必要不可欠だとして、どうすれば良いかは見当がついているのか?」

「一番手っ取り早いのは、その魔法傀儡の核を取り外して、魔物の体内に取り込ませることだけど、

 お前たちは良しとはしないだろ?」


王子はあっけらかんとした態度で答えたが、その通りだった。


「当たり前だろ、俺らにとって、アーティは大事な仲間だ」

「そうだよ!アーティちゃんは大切なお友達なんだよ」

「あたしだってそうだ」

「私も仲間だと思っている」

「アーティちゃんを犠牲にはできないよ」


全員が同じ意見だった。


「他に方法はないのか?」

「何故あの魔物が魔法傀儡の魔力を受けて苦しんだか私なりに考えた結果。

 推測にはなってしまうが、魔力が安定したからだろう」


王子が言うには現在は本人の意思とは関係なく暴走している状態だという。


本来であれば魔物の肉体との融合に人間の身体が適合することはあり得ない。


拒絶反応が出ていないのも、暴走した強大な魔力がとめどなく出力され、抑えつけている。


「おそらく魔力が安定したことで、姉の意識が一瞬だけ戻った。

 その結果、自分の身体を拒絶したのではないか。

 つまりは魔法傀儡の魔力光線を魔物に撃ち続ければ倒せる」


王子の提案に即座に否定を入れる。


「撃ち続けるのは無理だ。

 一発で魔力が完全に尽きた。

 何連発もできるものじゃない」


実際一発放った後に機能停止してしまっている。


「まああくまで机上の空論だよ。

 何度も同じ結果になる保証もないからね」


あの時はうまくいったとして、次も同じ結果は期待できない。


「まあすぐに結論は出ないだろう。

 お前たちは身体を休めなきゃいけないし。

 こちらでもいろいろと調べる」


王子は帰り支度を始めた。


支度が終わった後、王子は俺の顔を真っ直ぐ見る。


「最悪の場合は、覚悟はしておいてくれ」


それだけ告げると王子は森から去って行った。


「それにしてもアーティちゃんがね……」


レウィシアさんがアーティの方を見る。


「皆サマ、難しいお顔されてマス」


アーティはいつも通りだった。


だが、みんなの表情を見て、不安そうにしている。


「なあ、アーティ。

 アーティには昔の記憶ってあるか?」

「わからないデス。

 ワタシの記録が、データなのか、記憶なのか、判断できないデス」


情報がいつ、どのようにアーティに蓄積されたか判断する術がないようだった。


「対策は追々考えるとして、今は身体を休めよう」


一旦考えても埒があかない。


とにかく体調を万全にすることが先決だ。


「そうだな、あたしもまだ完全に元通りってわけじゃないし」

「私も治療でちょっと魔力多く使っちゃからね」

「私も家族に心配かけてるから、一度家に帰るよ」


ネモとレウィシアさん、カトレアがそれぞれ家に戻る。


「俺らも戻るか。

 行こう、ルナ、アーティ」

「うん!」

「了解デス」


俺たちも続いて家へと戻った。




数日が経った。


体調はほとんど万全の状態に戻っている。


あれから特に魔物の目撃報告も上がっていない。


それが逆に不気味に感じる。


だが、今は好都合だった。


そろそろ再度《魔法創造》が使える時期が近づいてきた。


「何の魔法を創造すべきか……」


有用な魔法を創造できなければ、かなり厳しい状況となる。


制約も考慮し、強力ではあるがピンポイントなものが望ましい。


「候補はいくつかあるんだが」


一つ目は、魔力を完全回復させる薬を魔法で作ること。


アーティは一撃で魔力を使い果たす。


それを補えれば、何度でも魔力光線を撃ち続けられる。


だが、《魔法創造》は便利なほど重い制約が課される。


「ただ制約がかみ合いそうにないんだよな」


一月に一本――そんな制約になれば意味がない。


二つ目は、他者に魔力を分け与える魔法。


俺の魔力をアーティへ流せれば戦える。


だが、それほど都合のいい魔法に軽い制約が付くとは思えなかった。


失敗が怖く、尻込みしてしまう。


「うーん、ダメだ、思いつかない」


それこそ、あの魔物を倒せるレベルの攻撃魔法にするかと考えてしまった。


「思考が雑になってきたな、一旦休憩しよう」


木陰に腰を下ろして周囲を見回す。


なぎ倒され、燃え尽きた木々は既に元通りになっていた。


自然の魔力には驚かされる。


しばらく見回していると、アーティとルナが遊んでいるのが見えた。


小型の魔石車の玩具を魔力で操作して競争している。


ルナも筋は良いが、アーティがそれを大きく上回る。


ルナは一度もアーティに勝てていないようだった。


負け続けても、明るく笑うルナ。


それを見て、僅かだが微笑むアーティ。


その笑顔を見た瞬間、迷いは消えた。


絶対にアーティを犠牲にはできない。


アーティを救うための魔法だ。


もう迷いはなかった。


後は再度使える日が来るのを待つだけ。


どんな制約が来ても耐えて見せる。


俺は拳を握り締め、自分自身に誓うのだった。

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