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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第七章 新たな脅威
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非人道的な研究

あれから、レウィシアさんと、カトレアと、ルナも目を覚ました。


レウィシアさんとルナは元より魔力切れが起因のため、いつも通りに戻っていた。


カトレアはネモと比較にならないほど深手を負っていたが、

レウィシアさんの治療で日常生活に支障がない程度には回復している。


ネモも治療で魔力が練れるようになっていた。


「ロイ!シアから教えてもらった《ハイ・ヒール》を試させてくれ!」


そう言って俺の足に魔力を流し込む。


形や色が正常に戻っていく。


動かしても痛みもなく、普段通り歩けるようになっている。


「ありがとう、ネモ!」

「へへっ、どういたしまして」


ネモが得意げに胸を張る。


これでひとまず、みんなの治療が終わった。


「お兄ちゃん、消火活動終わったよ」

「マスター、終わったデス」


俺たちの治療の間、ルナとアーティには森の消火に当たってもらっていた。


これ以上の被害は食い止められたと思う。


かなりの量の木が減ってしまったが、枯れた世界樹がいまだに魔力を供給している。


満ち溢れた自然の魔力によって時間が解決してくれるだろう。


とはいえ根本的な問題が解決したわけではない。


みんなで話し合いが必要になる。


「ルナとアーティもご苦労様。

 家に帰ろうか」


ルナとアーティを促し、家へ帰ろうとしたところ。


「みんな無事か!」


青年が全速力で森へ入ってきた。


「誰?」

「誰デス?」


ルナとアーティが疑問を浮かべている。


俺はこの青年を知っている。


一瞬フードの中から見えた顔と同じ。


彼は人間国の王子だ。


「王子がこの森に何の用ですか?」


相手にも事情も鑑みて、あえて商人ではなく王子として接する。


とはいえ、王族としての敬意は一切持てなかった。


「この森に魔物が攻め込んできただろ、どうなったんだ!」


王子は単刀直入に質問してきた。


さて、どこまで話すべきか。


「攻め込んできましたよ」

「ならどうしてみんな無事なんだ!

 まさか倒したのか?」


王子は信じられないといった表情をしている。


おそらく何かあの魔物について知っている。


「お答えする前に王子。

 あなたは何を知っている?

 まずそれから話してもらえませんか?」


下手に情報を渡すのは悪手になりうる。


まずは出方を窺うべきだ。


「ああ、わかった。

 この話はみんなに聞いてもらった方が良いだろう」


王子は頷く。


「すまないルナ。

 みんなを呼んできてくれないか?」

「わかったよ!」


ルナに耳寄せしてみんなを呼んできてもらう。


王子のことを注意深く観察する。


特段怪しい動きはない。


ただ、アーティのことを異様に気にしているようだ。


「お兄ちゃん!みんな呼んできたよ」


しばらくするとルナがみんなを連れてきた。


「あれ?殿下だ」

「本当だ殿下だね」


ネモとレウィシアさんは王子と接点があるようだ。


多少なりとも親しい間柄ではありそうである。


「殿下?これが人間国の王子か」


カトレアはもちろん、初見のようだ。


「みんなお揃いのようだね。

 それでは話させてもらおうかな。

 人間国で過去に行われていた研究について」


王子の話はこうだった。


十数年前、人間国ではとある研究が秘密裏に行われていた。


「人工的に優れた人間を生み出す――それが研究の目的だった」


最初は、魔法の適性が高い者の細胞を他者へと移植する実験。


それにより大幅に戦力の強化を図ろうとしていた。


「だが、結果は芳しくなかった」


そこで特異な性質を持つ双子の姉妹に目を付けた。


連れて来られた姉妹は、どちらも常人の域を超えていた。


姉は魔力の出力が異常だった。


魔力が暴走するたび、災害級の被害をもたらした。


妹は魔力の制御が桁違いだった。


寸分の狂いもない繊細な魔力操作を可能とした。


「そこで考えられたのが姉妹同士の細胞移植」


姉は圧倒的な出力を持つが、それを制御できない。


妹は完璧な制御を持つが、それだけの出力を持たない。


二人を一つにできれば、完全な魔術師が誕生すると考えられた。


「だが、実験は失敗した」


私はその場にいて、惨状を直接見てしまった。


妹の身体は姉の出力に耐えられず崩壊した。


その結果、妹は人の姿を保てず、魔石になってしまった。


犠牲者を出してしまった以上、私は中止を提言した。


「その後も諦めきれない父上……いや、国王は残った姉で実験を繰り返した」


目を覆いたくなるような実験の数々。


成功してしまわないよう裏で手回しをし続け、失敗を積み重ねさせた。


「そして、ついに研究は凍結した……はずだった」


だが、王子の知らないところで実験は続けられ、成功した。


その結果が、あの魔物を合体させたキメラだ。


「あの魔物は、その時の姉のなれの果てだ」


王子は目を伏せて、吐き出すように言う。


「そんな酷い話があるかよ」


俺は机に拳を叩きつけた。


「あまりにも非人道的すぎるだろ……」


話の理解を脳が拒んだ。


「あの研究者の野郎どもならやりかねん。

 本当にふざけてやがる」


ネモは憤慨している。


「あいつらのこと思い出しちゃったよ」


レウィシアさんも苦々しい表情を浮かべている。


レウィシアさんも相当酷い目を見ていたからだ。


「難しくてわからないよ……」

「凄惨な話ではあるが、私もあまりイメージが湧かない」


ルナとカトレアはピンと来ていないようだ。


無理もない。


実際にキメラを見ていない。


それにあの研究者の異常性を知らない。


話が突拍子もなさすぎて創作と疑いたくもなる内容だ。


「私は話した。

 さあ、教えてくれ。

 何故お前たちは無事なのか」


話を聞く限り、王子は敵ではない。


許しがたい点こそあるが、話しても問題無いだろう。


「アーティの核が自分の意志と関係なく、勝手に魔力を吸い上げて放出した。

 その攻撃を受けたら、苦しみだして逃げて行った」


起きた事実をそのまま伝えた。


「最初見た時から、あまりにも高性能だと思ったが。

 そうか、そういうことか……」


王子は何かを察したようだ。


「どういうことだ?」


俺は訝しげに王子を見る。


「その魔法傀儡に使われている核。

 その核の構成する魔石は、実験の結果、魔石になってしまった妹のものだ」

「……なっ」


言葉が出なかった。


衝撃の事実に全員が一斉にアーティを見た。


アーティだけが事情を知らず、きょとんと首を傾げていた。

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