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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第六章 人間国王位継承戦
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終焉の炎

妨害魔術の結界の中。


「《火球連弾》」


父が詠唱すると大量の火球が現れて、襲い掛かってくる。


「《大水球》」


俺は巨大な水球を出現させ、受け止める。


地面は脛あたりの高さの水位になる。


「水属性の魔法は何度も打てないぞ。

 相討ち覚悟では話は別だがな」


連発すれば水没する。


それは理解していた。


少しでも体力を温存するため、試しに大水球を放ったが、予想以上の水量だった。


「休む暇は与えんぞ!《火球連弾》」


父は間髪入れず火球連弾を放つ。


一発ごとの威力は高くない。


だが、避け続けるだけで体力を削られる。


「《身体強化》!」


俺は身体強化を使い、加速する。


大量の火球を回避し続ける。


すべて回避しきったが、かなり体力を消費する。


「はぁ……はぁ……回避は悪手だな」


単純な回避はやめた方がよさそうだ。


「《火球連弾》」


今度は数を減らし、その分速度を上げてきた。


揺さぶりをかけるつもりだ。


「速すぎるな……《大火球》」


速めの火球に対して、巨大な火球で相殺を狙う。


火球同士が衝突し、轟音を響かせて爆発する。


爆風で視界が遮られる。


いくつかの火球はかき消せたが、何発かはこちらへ向かってくる。


「《身体強化》!」


魔力の気配だけで位置を察知し、撃ち漏らし分を身体強化で回避する。


「初級応用魔法と言えど、ここで撃つのはリスクが高いようだな」


一歩間違えれば自分ごと吹き飛ばされていた。


それにすべてを相殺しきることもできなかった。


一つずつ選択肢が消えていく。


「《火球連弾》」


父は火球連弾を撃ち続ける。


最善だと判断した手を、一切変えない。


「くっ!《大水球》」


巨大な水球で火球をかき消す。


水位が膝のあたりまで上がってくる。


「どうした?これ以上打てば、もう動くのも困難だろう」


その通りだった。


次大水球を使えば太腿の高さまで上がってくる。


動くのが相当困難になる。


水中に潜ったところで火球は回避できない。


少しずつ追い詰められていく。


考えろ、考えるんだ。


「《火球連弾》」


父はひたすらに火球連弾を撃ち続ける。


水球は使えない、大火球も使えない。


残る選択肢は――


「《旋風壁》!」


俺は覚えたての魔法を放つ。


旋風を起こして形成する壁。


水や土の壁のように、魔法を防ぐ用途の魔法ではない。


本来は物理攻撃への防御魔法だ。


「なるほど、そうきたか」


父は瞬時に理解した。


水が風により巻き上げられて、水の竜巻となる。


竜巻が火球をすべて防ぎ切った。


「うまくいったみたいだな……」


水位が目に見えて下がる。


これならもう一度大水球を――


それに、再び水位が上がれば、同じ手法が取れる。


「ならばこれならどうだ。《狂嵐破》」


父も水を利用する。


水竜巻が小さな台風のように襲い掛かってくる。


回避は不可能。


「《土円蓋》!」


土の円蓋を展開する。


だが、風で土が吹き飛ばされる。


どんどん削られる。


「《土壁》!」


後ろに土壁を展開する。


「うわああああ!!!」


完全に円蓋は削り取られ、風圧に吹き飛ばされる。


展開した土壁がクッションとなり、衝撃は抑える。


だが、風による切り傷や、衝撃によるダメージは残る。


「耐えきったか……」


父は無表情だったが、僅かに肩が上下している。


初めて疲労の色が見えた。


俺たちより先に戦場に立ち、今まで強力な魔法を撃ち続けた。


魔力が尽きるのも時間の問題だ。


「次は俺から仕掛けさせてもらうぞ!《火炎弾》」


炎を弾丸のように解き放つ。


「確かに火球より威力は高いが、この地形には不向きだな」


父は最小限の動きでかわす。


「まだだ!《火炎弾》」


俺はとにかく撃ち続ける。


父は危なげなく回避する。


だが、表情が少しずつ歪んでいく。


「貴様は何故、そんなに余裕がある?」


もっともな疑問だろう。


戦場入りは遅く、父より程度の低い魔法しか撃っていない。


とはいえ、上級魔術師でもここまで魔力はない。


確かに疑問に思うのは当然だろう。


「信じるかどうかは勝手だけど、俺はスキルとして《魔力無限》を持っている。

 魔力が尽きることはない」

「そんなバカな話があってたまるか。

 無限の魔力など、人の理に反している。

 その身体のどこに無限に魔力が詰まっているというのだ!」


初めて父の表情が揺らいだ。


魔法の鍛錬も研究も、その積み重ねすべてを否定されるに等しい。


父にとって何よりも許しがたい事実だった。


「そのような存在を生かしておけば、人の理が壊れる。

 たとえ、私の命をかけてでも葬る」


父はそういうと詠唱を始める。


この詠唱は初級魔法のものではない。


「何がくる!?」


俺は身構える。


「最上級魔法!《終焉の炎》」


今まで見た中でも一番の炎が生み出された。


おそらく残る魔力すべてを注ぎ込んだ魔法。


回避も相殺も何の手段も無意味。


塵一つ残らず燃え尽きるだろう。


「死ね!異端者!!!」

「……!」


終焉の炎は結界を焼き尽くす。


次の瞬間、戦地に炎の華が咲いた。




衝撃は結界の外まで波及する。


「何だこれは!?」

「逃げろ!早く!」


結界の外では敵味方関係なく一目散に離れる。


「カトレア!急げ」

「ああ、わかってる」


先にシアたちと合流をしていた、あたしとカトレアで、

三人を抱えて走る。


状況を把握する余裕もない。

ひたすらに離れる。


ロイのことが心配だが、気にしていられる状況じゃない。


なんとか爆発からは逃れた。


だが、衝撃波が広範囲に広がる。


「《身体強化》」

「《障壁展開》」


兵士たちが防御を固めるが無力。


何百メートルも先まで吹き飛ぶ。


身体強化で防御を固めなければ確実に死ぬ。


「「《身体強化》!!」」


あたしとカトレアは身体強化を全力でかけ、

あたしはシアとルナを、カトレアはアーティを守るように抱きかかえる。


「うわああああ!」

「くそおおおお!」


あたしとカトレアも遠くへ吹き飛ばされる。


地面に叩きつけられた衝撃で意識を失った。




爆発により生まれた雲は死神の形をしていた。


周りの地形は変わり果て、元の姿を思い出せないほどになっていた。


爆心地の近くで俺は無傷で立っていた。


「一歩間違えれば確実に死んでいたな……」


終焉の炎の発動と同時に《霊体化》を使い、直撃を避けた。


だが、三秒では直撃を避けるのが限界である。


終焉の炎の衝撃波の直撃を受け、重症を負い、瀕死の状態。


《超回復薬生成》で作ったポーションを注射器で打ち込み、辛うじて命を繋いだ。


周囲を見渡し、強烈な虚無感に襲われる。


この戦いで得たものは何もない。


守りたかった人たちは傷つき、失ったものだけが残った。


両親はもういない。


そのまましばらくの間、呆然と立ち尽くすしかなかった。



――第六章 完――

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