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魔法を願った少年  作者: 彩音りあ
第六章 人間国王位継承戦
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僅かな勝機

俺はルナ、アーティ、レウィシアさんを呼んで耳打ちする。


作戦を伝えるためだ。


「えっ、お兄ちゃんそれは危なすぎるよ」

「危険ですマスター」

「うん、私もそう思う」


ルナ、アーティ、レウィシアさんは否定的な反応を見せる。


失敗すれば確実に死ぬ。


成功しても必ず勝てる保証はない。


可能性は僅かながらあるという程度の話である。


そんな作戦では賛同できないだろう。


「ロイさんは、大切な人を守りたいっていつも言ってますよね。

 私たちにとってもロイさんは、守りたい大切な人なんですよ。

 それはわかってますか?」


レウィシアさんが真剣な目でこちらを見る。


正論でしかない。


そもそもこの内戦で命を賭けるつもりはないと言っている。


「レウィシアさんの言う通りだよ。

 でも俺の両親はみんなを逃がすつもりはないと思う」


おそらくこれでも力を抑えて魔法を使っている。


周囲の味方を巻き込まない範囲に留めている。


寸分の狂いもなく味方を避けている。


全力で逃げようとすれば、味方も巻き込んででも俺たちを殺しに来る。


朧げな記憶の中から幼いころに誰かと父の会話の内容を思い出した。


『立ち向かうようなら道を示せ。逃げるようなら容赦なく殺せ』


たった一言だったが、あれだけが父から感情を感じ取れた瞬間だった。


「立ち向かうようなら道を示せ。逃げるようなら容赦なく殺せ」


俺は父の言葉を口にする。


「もし全員無事に帰りたいなら、命を賭けるしかない」


俺も真剣な表情でレウィシアさんの目を見る。


少し目を閉じて思案した後、レウィシアさんは口を開く。


「わかった、私はロイさんを信じるよ。

 その代わり、私たちも手伝わせて」


レウィシアさんなりの譲歩だった。


「心配だけど、お兄ちゃんが頑張らないといけないことはわかったよ。

 ルナも全力でサポートするね」

「ワタシもマスターに命を救われた身デス。

 この命をマスターに捧げマス」


ルナとアーティも、俺の言葉で察するところがあったようだ。


「もちろん、みんなの協力が無ければ成功しない」


俺たちは再び構える。


「話は終わりか?

 無駄な足掻きだろうが、思考することには意味はある」


俺たちの話の間、待ってくれていたのだろう。


あちらも再び戦闘の構えに入る。


「こちらから仕掛ける!

 《豪炎球》」


俺は詠唱を始める。


「それしきの魔法、大したことない、頼んだ」

「了解、《タイダルウェーブ》!」


母が詠唱すると大きな波が発生する。


豪炎球は飲み込まれ消滅するだろう。


だが、それも作戦のうちだ。


俺は魔法を放つと同時に《身体強化》を足に使い、加速する。


波が広がる前に距離を詰める。


魔法を誘導に使い、物理攻撃に切り替える。


魔術師の戦闘での常套手段である。


それを警戒してか、母に撃墜を任せ、父は俺の接近に備えていた。


「それも計算の上だ、同じ魔法でお返ししてやろう。

 《豪炎球》」


豪炎の球が生み出される。


距離が近い。

身体強化の加速でも回避は無理だろう。


「お兄ちゃん!」

「ロイさん!」

「マスター!」


三人が叫ぶ。


「《火球(フレア)》!」


俺は火球を自分の足元に放つ。


「うわっ」


その爆風で吹き飛ばされる。


自分がいた位置に豪炎が着弾し、爆発する。


俺の身体は地面に叩きつけられる。


受け身を取ったが、体勢を大きく崩した。


「うまく逃れたようだな。だが、隙を作ってしまったな」


俺が体勢を立て直す前に、父の魔法が発動する。


今度こそ完全に回避はできない。


「力の差がある中、立ち向かったことは認めてやる。

 一思いに楽にしてやろう」


父が詠唱を始める。


「みんな、頼む!」


俺が叫ぶ。


「《豪炎球》!」


ルナが見よう見まねで豪炎球を放つ。


俺やネモの魔法を見て覚えたのだろう。


一発で成功させた。


「《魔力光線》デス!」


アーティも魔力を使った光線を放つ。


自身の動力に使う魔力を使ってまで発動させた。


「私だって!《水球(アクア)》」


ひそかに練習していた魔法。


レウィシアさんがおそらく唯一使える攻撃魔法。


三人の魔法が父の元へ向かう。


「ほう、ではこちらもそれ相応の対応をせねばな。

 《豪炎球》《魔力光線》《水球(アクア)》」


父はルナ、アーティ、レウィシアさんが使った魔法と同じ魔法を使う。


威力は遥かに父の魔法の方が上だ。


三人の攻撃は打ち消され、そのまま父の魔法がみんなのもとへ迫る。


「うわぁ!くるよ!」

「そんな!」


ルナとレウィシアさんは詠唱の反動で反応が遅れる。


「《魔法障壁》デス!」


アーティが二人の前に立ち、魔力の障壁を展開する。


なんとか受けきれたが、障壁は砕け散り、その衝撃でアーティは後方へ吹き飛ばされた。


「「アーティちゃん!」」

「だ、大丈夫デス……」


アーティは何とか立ち上がる。


だが。


「……でも魔力切れみたいデス」


そのまま地面に崩れ落ちる。


動力源である魔力を使い過ぎたのだった。


レウィシアさんとルナがアーティの元へ駆け出す。


「アーティちゃんありがとう」

「おかげで助かったよ、今はゆっくり休んでて」


二人はアーティを木陰へ寝かせる。


「さて、終わらせるか」


そう言って、父が再度魔法を詠唱しようとした時。


「《妨害魔術(ジャミング)》展開!」


靄のような魔力が俺と父を包み込む。


三人が父の意識を逸らしてくれたおかげで、妨害魔術の展開が間に合った。


「《疾風の刃(エアスラッシュ)》!」


母が慌てて詠唱するが時すでに遅く、風の刃は靄にかき消された。


「ロイさん、うまくできたみたいですね」

「お兄ちゃん、頑張れ」


三人の協力で妨害魔術を展開することができた。


ここから俺たちの反撃が始まろうとしている。

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